PayPayの発表は「改悪」か。クレカ利用・チャージ手数料・ポイント付与率を変更し収益改善急ぐ (石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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 ゴールデンウィークの谷間とも言える5月1日にPayPayが発表した各種施策が、既存のユーザーにとっては“改悪”になりかねないだけに、物議をかもしています。

一方で、ここ最近のポイント付与にまつわる動きを見ていると、投入されるべくして投入された施策といった印象も受けます。4月にユーザー数5700万を突破し、同サービスが収穫期を迎えつつあることが伺えます。

他社クレジットカードに非対応になるなど、さまざまな仕様変更が発表された

 5月1日に発表された変更点の1つ目は、他社クレジットカードの利用についてです。PayPayでは、銀行などからチャージした残高やPayPayカードを紐づけた後払いで決済することができますが、実はサービスイン当初から、他社のクレジットカードも登録できました。これによって、クレジットカード決済に対応していないPayPayオンリーの店舗でも、実質的なクレジットカード払いができました。いわば、クレジットカードのプロキシー的な使い方です。

 この他社クレジットカードが、8月1日から非対応になります。仕様の変更に先立ち、7月初旬にはクレジットカードの新規登録を停止します。これによって、PayPayで利用できるクレジットカードは、同じグループのPayPayカード社が発行しているPayPayカードのみになります。プリペイド的に銀行から残高をチャージして利用していた人にとっては特に影響がないかもしれませんが、クレジットカードのインターフェイスの1つとしてPayPayを利用していた人には要注意な変更と言えそうです。

新規クレカの登録が7月初旬から、利用が8月1日から停止になる

 もっとも、この変更が改悪とまで呼べるほどの変更なのかは、人によって見方が変わってくるかもしれません。上記のように、クレジットカードを使えない店舗でクレジットカード決済をする際には便利なサービスでしたが、この支払い方法の場合、PayPayの魅力であるポイントがつきません。PayPayカードに支払いが乗る「PayPayあと払い」が最大1.5%還元であることを踏まえると、ユーザーメリットは限定的です。

元々、他社クレジットカードでの支払いにはポイントがつかなかった。還元はクレジットカード側のみになるため、メリットが少ない印象

 にも関わらず、支払いの流れは「店舗→PayPay→クレジットカード会社」になってしまいます。この場合、PayPay側は店舗から最低1.6%の手数料は受け取れる仕組みにはなっているものの、クレジットカード会社がPayPayに課す手数料も発生します。一般的に、PayPayの手数料はクレジットカードより割安と言われているため、使われれば使われるほど赤字が拡大してしまうというわけです。このサービスをやめたい理由は、ここに凝縮されています。

 同様に、他社クレジットカードでの支払いを受け入れていない「何とかPay」は、ほかにもあります。LINE Payはやはりチャージ不要な後払いが自社発行カードのみ。KDDIのau PAYも、クレジットカードによる直接の決済はできません(チャージはできますが)。メルペイも、後払いは自社の枠組みのみでの対応になります。d払いや楽天ペイは他社クレジットカードの利用に対応していますが、ポイント付与に露骨な差がついていて、キャンペーンの対象外になるケースも多々あります。

LINE Payなど、他社クレジットカードで直接決済できないコード決済はほかにも多い

 利便性のために提供してきたクレジットカードでの直接決済ですが、ここまで対応銀行が拡大し、PayPayカードまで発行している中、あえて提供する動機もなくなったと言えるかもしれません。実際、筆者もPayPay利用時はほとんどが銀行からチャージした残高を利用しています。金額が大きく、後払いにしたいときも、PayPayあと払いで支払っています。サービスイン当初に登録したクレジットカードは、無用の長物になっていました。同じようなユーザーは、ほかにも少なくないと思われます。

 ただ、PayPayは今年度に入り、ほかにもポイント還元の仕様を変更しています。同時に発表された「ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払い」によるチャージに手数料が導入されることの方が、直接的な影響が大きい人はいそうです。こちらは、8月1日から毎月2回目以降のチャージに対して、2.5%の手数料がかかるようになる予定です。

5月1日には、2回目以降のキャリア決済によるチャージにも手数料がかかる旨が発表された

 また、7月からは、ポイント還元の枠組みである「PayPayステップ」も、付与額算出の方法が変わります。現在は、支払額に対して付与率をそのまま掛けた金額がPayPayポイントとして還元されていましたが、7月1日からは200円単位に変わります。PayPay自身が事例で挙げているように、1150円の支払いをした場合、今は11ポイントがついている一方で、7月1日からは10ポイントに付与額が下がります。

7月1日以降、PayPayステップの還元額算出方法も変更になり、わずかながら付与ポイントが低下する

 ほかにも、例えばYahoo!ショッピングの一部キャンペーンでの還元がPayPayポイントから同モールでしか利用できない「ヤフーショッピング商品券」に切り替わるなど、PayPayにかかるコストをこれでもかと切り詰めている様子がうかがえます。実際、4月28日に開催されたZホールディングス(10月1日をもってLINEヤフーに改称)の決算では、「PayPayの収益性改善などで早期黒字化を目指す」ことがうたわれています。

PayPayの収益性改善はZホールディングスにとってはもちろん、ソフトバンクグループにとっても急務だ。広く普及させるフェーズは終わり、収穫期に入ってきつつあると言えるだろう

 ユーザーの拡大に伴い、還元を抑制したり、手数料を導入したりすることで、売上高が上がっているPayPayですが、22年度末時点でも赤字であることに変わりはありません。広く普及させたあと、収穫期を迎えて大きく刈り取っていくのは、ソフトバンクグループが取るいつもの戦略です。黒字化を目指す中、さらなる仕様の変更があっても不思議ではないと言えそうです。


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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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