米国人の61%が「AIが人類の将来を脅かす」と信じている(ロイター世論調査)

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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Reutersが調査会社Ipsosと共同で行った世論調査により、アメリカ人の61%が「AIが人類の将来を脅かす」と考えていることがわかりました。

ChatGPTなどの爆発的な進歩が大きな話題となり、ジェネレーティブAIは教育、政府機関、医療さらにビジネスにおける利用も急速に拡大しています。こうした成功は、マイクロソフトやGoogleといったIT巨人たちの間でもマーケティング面を含め激しい競争を引き起こしています。



5月9日から15日にかけてオンラインで行われたこの世論調査は、「AIが人類の将来を脅かすかどうか」についてを米国の成人4415人に問い、得られた回答をその人々の様々な属性によって分類し報告しています。

まず冒頭に述べたように「AIが人類の将来を脅かす」かどうかについては、イエスと答えた人の割合は回答者全体の61%と過半数を占め、人々の多くがAI技術が悪用される可能性についてネガティブなイメージを抱いていることがうかがえます。なお、ノーと答えた人は全体の22%で、残りの17%は「わからない」との回答でした。

では、政治的な傾向によってはAIの認識にどのような違いが生まれるのか。2020年大統領選挙における支持候補でこの回答者の割合を分類したところ、現大統領のジョー・バイデン氏に投票した人のなかでイエスと回答したのは約60%だったのに対し、ドナルド・トランプ氏に投票した人たちの間では70%がイエスと答えたと報告されています。

さらに 宗教観による分類では、キリスト教福音派の人々の32%が「AIが人類の将来を脅かす」との考えに「強く同意する」と答え、福音派以外のキリスト教徒の24%を上回っています。

こうした集計結果に対して、テスラ/SpaceX/TwitterなどのCEOであるイーロン・マスク氏や、アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアック氏らの署名を集め、急速なAIの進歩を懸念して半年間の開発中止を訴える公開書簡を発表した非営利組織Future of Life Instituteの政策担当ディレクターであるランドン・クライン氏は、これほどに幅広い層の米国民たちが、AIが悪影響をおよぼすかもしれないことについて懸念を示していることがわかった」とし、「われわれは今の状況が核の時代の始まりに似ていると考えており、何か行動を起こす必要があるという共通の認識を人々が持っていることは、(AIの急激な進歩に警鐘を鳴らすという)われわれの活動に追い風になる」と述べています。


また今回の調査に関係はないものの、AIを鍛え上げる機械学習手法のひとつディープラーニング(深層学習)の研究で知られるジェフリー・ヒントン氏は、AI、特にGPT-4のような大規模言語モデルの急速な性能向上が深刻なリスクを孕んでいる可能性があるとの懸念を抱き、その危険性に関する世の中の認識を高めるために、10年以上にわたって在籍したGoogleを離れています。

一方で、AIに対して肯定的な意見もあります。かつてGoogle Xの設立に携わったスタンフォード大学のコンピュータサイエンス教授、セバスチアン・スラン氏はロイターの調査に対し「懸念は正当なものだが、一般的な議論が欠けているのはそもそもなぜこんな調査が必要なのかということだと思う」とし「AIは人々のQoLを向上し、人々がさらに能力を発揮し、効率的になることを後押しするものだ」と自身の考えを示しました。

たしかに、新薬の開発などでは、AIの活用が飛躍的な時間とコストの削減を実現しています。またSiriやAlexaといった音声アシスタントをはじめ、家電製品でも様々な分野でAIは日常生活に浸透し、それぞれの役割を果たしています。

今回の世論調査は、流行かつ最先端の大規模言語モデルから、スマートフォンやスマートスピーカーの音声アシスタント、白物家電に搭載されるような機能限定的なものまである様々な「AI」を、どこで線引きしているのかがはっきりしていません。そのため意見している人々によっても、”AI”の認識の違いから話が食い違っている部分がありそうです。カリフォルニア大学バークレー校のイオン・ストイカ教授はこの調査に対し、ジェネレーティブAIの悪い面が強調されて伝えられることで、AIによるポジティブな応用例に光が当たっていないと指摘しています。

もしかすると、ChatGPTのような大規模言語モデルの応答が非常に人間くさいものになってきたことや、ときおり微妙にズレた回答を出してくることなどが、CGや人型ロボットにみられる「不気味の谷」のような感覚を人々に感じさせ、ネガティブなイメージを助長している可能性もあるかもしれません。


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《Munenori Taniguchi》
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