イーロン・マスク氏の個人弁護士であるアレックス・スパイロ氏が、Twitterを代表してマイクロソフトのサティア・ナデラCEOに書簡を送り、同社がTwitterの開発者契約に違反していると主張していることをNew York Timesが報じています。
この書簡では、マイクロソフトがTwitterデータ利用に関する合意に違反し、その使用料の支払いを拒否したと主張。そしてマイクロソフトが想定以上に大量のTwitterデータを使っていたケースもあり、許可なく政府機関とTwitterのデータを共有するなど「長期間にわたって契約の複数の条項に違反していた可能性がある」としています。
マイクロソフトは最近まで、TwitterのAPIを自社製品に組み込んで運用していました。書簡によると、Xbox、BingやAzure、広告プラットフォーム等に関連した個別のTwitter API使用アプリを8つ運用していたそうです。
しかし、マイクロソフトは4月に広告ツールのTwitter対応を打ち切ったほか、XboxからTwitterへのクリップやスクリーンショット共有を停止しています。スパイロ氏は「TwitterのAPIとコンテンツへの継続的なアクセスに対する割引料金の支払いすら拒否するまでに至った」と述べており、TwitterがAPIの新価格（全般的には値上げ）を導入したことと関連しているようです。
マイクロソフトがTwitterの開発者契約に違反している例としては、1つにはTwitter APIの「合理的なリクエスト量を超える使い方」または「過剰または不正使用となる運用」を挙げて、マイクロソフトのアプリ群は2022年だけでTwitter APIに7億8000万回以上アクセスし、260億件以上のツイートを取得したと主張。なお、具体的なアクセスや取得の上限は、書簡では言及がありません。
また、マイクロソフトがTwitter APIを「無許可の用途や目的で使用した」ことや、先月まで運用された8つのマイクロソフトアプリ（Xboxや広告プラットフォーム等）のうち6つのユースケースをTwitter側に通知しなかったとも主張。その1つが、上記で触れた政府団体とのTwitterデータの無断共有です。
以上の主張をもとに、Twitterを代表するスパイロ氏は、8つのマイクロソフトアプリのそれぞれに関して2023年4月までの「コンプライアンス監査」を要求。また各アプリとTwitterのデータの使用方法に関して広汎な情報を、6月7日までに提供するよう要求しています。
スパイロ氏の書簡では、特に訴訟や法的措置への言及はありません。しかし、マスク氏はマイクロソフトが自社広告プラットフォームとTwitterの連携を打ち切ると発表した際、「彼らは違法にTwitterのデータで訓練した。訴訟の時間だ」とツイートしていました。
この発言はおそらく、マイクロソフトのBingや同社が支援するOpenAIのAIチャットサービスを支える大規模言語モデル（LLM）の訓練に使われるデータを指していると思われます。もっとも、スパイロ氏の挙げた8つのマイクロソフトアプリには、これらのAI技術は含まれていません。それも契約違反の一環だと立証するために、マイクロソフトにTwitterデータの使用状況につき情報を出すよう求めているのかもしれません。
この報道につき、マイクロソフトはNYTに現在、Twitterにデータの対価を支払っていないと述べています。さらにTwitterから書簡を受け取ったことを事実と認め、質問事項を確認し、回答するとコメント。「我々は同社との長期的なパートナーシップを続けることを楽しみにしている」とも付け加えており、今のところ挑発もせず臨戦態勢を取るでもなく、Twitterの次の出方を見ている模様です。
なお、AIチャットボットを支えるLLMがネット上のデジタルデータによって立つことは事実です。その言説の場となっているプラットフォームの間では不満が高まっている兆しもあり、たとえば大手掲示板Redditも先月、自社のAPIへのアクセスに課金を開始しており、無料でデータ利用できなくすると発表しています。今後、いかにマイクロソフトとTwitterが落とし所を探るか見守りたいところです。
