6月9日、トヨタは将来のル・マン24時間耐久レースへの参戦を見据えて開発したという、水素エンジン搭載のコンセプトカー「GR H2 Racing Concept」を公開しました。
世界三大レースのひとつとして知られるル・マン24時間レースは今年100周年の記念大会として、日本時間6月10日23時にスタートします。トヨタはこのレースを昨年まで5年連続で制しており、今年も優勝候補の本命として参戦しています。
この記念すべき大会の会場で発表された「GR H2 Racing Concept」は、最新のル・マン用レースカーのトレンドを取り入れたデザインを採用しています。外観的には、フロントを左右に伸びるデイライトが印象を引き締めており、現行マシンのGR010 HYBRIDの丸みを帯びたヘッドライトおよびフロントフェンダーまわりが、より鋭角的な形状になっています。印象的には、 新型プリウスや新型クラウンと言った、トヨタ最新の市販車デザインに寄せたデザインになったと言えるでしょう。
特徴的なのは、正面からマシンを捉えた画像。このマシンの、ドライバーが収まるコクピット部分は、1人分のスペースしかないように見えます。現在のGR010 HYBRIDが属するハイパーカーカテゴリーは、(一応)市販を想定したクルマをベースとする建前だったため、コクピットも助手席を含む幅があります。しかし「GR H2 Racing Concept」は、見た感じからはシングルシーターのようです。
そのほか、ボディ左右の形状も大きく変わっており、このあたりは空気の流れをもっと効率良く後方へ導こうとする意図がうかがえます。トヨタはこのマシンに水素エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせて搭載し、新たなル・マンへのチャレンジを開始する計画としています。
ル・マン24時間耐久レースを主催するフランス西部自動車クラブ(ACO)のピエール・フィヨン会長は、5月に富士スピードウェイで開催された日本のスーパー耐久シリーズ第2戦、富士24時間レースを訪れています。そのとき、ル・マン24時間耐久レースは2026年から水素カテゴリーが設けられ、水素燃料電池車(FCEV)に加えて、水素エンジン車両の参戦を認めることを発表しました。
そしてこの水素カテゴリーは、現在の最高峰カテゴリーであるハイパーカーと競合するトップカテゴリーとなり、フィヨン会長いわく総合優勝を争うことようになるとのことです。フィヨン会長は、2030年にはトップカテゴリーのマシンがすべて水素エネルギー車での参戦になることを目指すと述べていました。
トヨタも、今回の発表において「モータースポーツという過酷な環境下でその技術を鍛え、カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向けて、業界内外の仲間と共に水素を『つくる』『はこぶ』『つかう』取り組みを加速」させてきたと述べ、「クルマづくりとCN社会の実現に向けた取り組みをさらに進め、新世代のル・マン24時間レースに挑戦」していくとしており、将来このマシンで培った技術を用いた市販車が開発されることも考えられそうです。
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