米FTC(連邦取引委員会)がマイクロソフトのアクティビジョン・ブリザード買収計画を差し止めるための訴訟は6月下旬に始まり、今なお続いています。
両者が攻防を繰り広げるなか、様々な内部資料が提出されたり証言が行われ、知られざる事実あるいは企業の思惑が明らかになってきました。
そして新たに、マイクロソフトが提出資料のなかで、ソニーが今年(2023年)後半には「PlayStation 5 Slim」と「携帯ゲーム機版PS5」(300ドル以下)の両方を発売する見込みだと主張しています。
これらの主張は、ゲーム専用機の価格帯を論じる下りで出てきたものです。XboxとPS5ともにハイエンドモデルとエントリーモデルの2種類あり、Xbox Series Sに該当するのが安価なPS5デジタルエディション。そうした文脈のなかマイクロソフトは「PlayStation 5 Slimも(デジタルエディションと)同じ安い価格帯で今年後半に発売されると予想されます」と述べています。
また、この節の脚注には「ソニーは今年後半、300ドル以下でPlayStation 5の携帯バージョンを発売すると予想されます」とも付け加えています。これらの「予想」には、特にソースや第三者の証言は添付されていません。
まず「PS5 Slim」については、これまでもPS5の改訂版が準備中との噂が何度か浮上していました。ただしSlim=薄型モデルではなく、着脱式ディスクドライブ対応モデルというものです。
有名リーカーTom Henderson氏が「ソニーの計画に詳しい情報筋」の話として、発売済みのPS5とほぼ同じハードウェアながら、本体背面のUSB-Cポートを使ってドライブと接続すると主張していました。なお、この新型ドライブは現在のデジタルエディションとは互換性がない(USB-C接続しても認識あるいは機能しない)とのことです。
また「携帯ゲーム機版PS5」といえば、PS5が遊べる「プロジェクトQ」が思い出されます。
ただし、プロジェクトQはあくまでもPS5リモートプレイに特化した「周辺機器」です。ネイティブアプリが遊べる独立したゲーム機ではなく、PS5とのWi-Fi接続を前提としたアクセサリー製品にすぎません。
なぜ、マイクロソフトがまだ世に出ていないゲーム専用機に言及しているのか。それはFTCがNintendo SwitchがXboxやPlayStationとは価格帯が違い、別の市場だと主張していることに反論するためです。Xbox Series Sとスイッチは同じ299ドルであり、スイッチ(有機ELモデル)よりも50ドル安い……という流れのなかで、今後のPS5ラインアップ予想も語られている形です。
大成功を収めているスイッチが同じ市場ならば、Xboxが負けていると位置づけやすく、結果として反トラスト法(独占禁止法)をめぐる訴訟では有利となります。別の裁判文書でも、マイクロソフトは「Xboxゲーム機の売上はPlayStation、任天堂に次いで(3陣営中)常に3位に位置してきました」として負けっぷりを強調していました。
今回のPS5 Slimや携帯ゲーム機版PS5予想も「Xboxにはライバルが多く、独占とはほど遠い」とFTCに反論するため、とりあえず言ってみただけ、かもしれません。とはいえ、マイクロソフトが巷の噂を引用しただけとも考えにくく、今後の裁判で追加の何かが飛び出すことを期待したいところです。