「買い替えの価値があるのか? そこのところを忌憚なく」と、TechnoEdge編集部の松尾さんから依頼を受けた。
「買うや買わざるや!」と聞かれると、それは常に「買う!」に決ってる。アクセルは踏むためにあるし、財布のヒモは緩めるためにある。それがガジェット好きの宿命というものだ。
とはいったものの、財布の中身には限界がある。同じ買い物をするにしても、効率よくお金を遣う必要がある。とすれば、今回の新製品はお買い得かどうか? そして、私自身はどれを買うのか? というような話だと松尾さんのオーダーを受け止めた。
現地で取材しているので、実物も触っているし、多少取材もしている。その上で、何を買うのか? どのモデルがお買い得だと感じているか? をお話したい。
まずは、なんといってもiPhone 15 Pro/Pro Maxだ。
ウェブの情報を追ってると「ボディがステンレスからチタンになって、A17 Pro積んで、5倍望遠が付いたのね。なるほど、なるほど」と、思うかもしれないが、実はこれ、触り心地がかなり魅力的なのだ。
チタンのボディの角Rが丸く、かなり本体サイズが小さくなったように感じる。
数字の上ではPro、Pro Maxとも高さと幅がわずかに小さくなって、厚みは増してるのだが、実際に手にとった感覚ではコンパクトになった感じがする。
重量がPro、Pro Maxとも昨年モデルより19g軽くなっているというのも大きい。19gといえば、かなりの差だ。10円玉4枚(18g)以上の差といえば、その軽量化の度合いがお分かりいただけるのではないだろうか?
まぁ、たしかに以前のステンレスボディが重かったといえばそれまでなのだが、チタン採用のメリットは大きい。握った瞬間に惚れてしまう。そもそも、チタンというだけで欲しくなってしまうというのもあるが。
さらに、15 Pro Maxの方には、テトラプリズムで4回屈折させたるという謎の光学系を持つ120mm相当の5倍望遠レンズが使われている。この謎めいた仕組みだけで使ってみたくなるというものだ。
筆者はいつも、Proモデルの方を買うのだが、今回ばかりはこの5倍望遠レンズを試してみたいので15 Pro Maxを買おうかと思っている。前述のように、思いのほか軽くてコンパクトな印象だというのもその気持ちを後押ししている。
しかし、ちょっとだけ冷静になって考えてみると、120mm望遠レンズが必要かというとちょっと疑問だ。
iPhone 15 Pro Maxのカメラシステムは全部で7つのサイズのレンズを持っているに等しい仕組みだが、この120mmの次に長いのがメインの4800万画素センサーの中央部だけを使った48mm相当ということになる。ちょっと間が空き過ぎている。
つまり、この間の画角はデジタルズームを使うということになる。
ならば、ポートレートなどを考えると、iPhone 15 Proに搭載されている従来からの77mm相当という設定のレンズを使った方が良いのでないだろうか?
レンズの鏡筒ではなく、四角いスマホという物体の薄い方の軸を120mmレンズとして対象物に向けるのも難しいように思える。このあたりは試用してから考えてみようと思う。私の場合、120mmより77mmの方が利用目的に合っている気がする。
そして、なんといってもA17 Proを搭載している。
A17 Proは現在のところ台湾のTSMCしか成功していない3nmプロセスルールという微細化技術の極みといえるチップセットだ。3nmの製品は、世界にiPhone 15 Proと15 Pro Maxしかないのだ。これを買わずして、なんのガジェット好きか。
……まぁ、今のところ、これによる性能向上は10~20%程度(それでも大変なことだ)らしいので、筆者の使い方で、それを体感できるかどうかはわからないが。
スタンダードモデル、つまりiPhone 15と15 Plusは、私のターゲットではない。
が、知人に「どう?」と聞かれたら、「お勧めだ」と答えるに違いない。
Proモデルほどではないが、こちらも角が丸くなることによって、持ちやすくコンパクトに感じるようになっている。
そして、昨年Proモデルを支えていたチップであるA16 Bionicと、ソニーセミコンダクタが作った48MPセンサーが搭載されているのが素晴らしい。いわば、iPhone 15は、iPhone 14 Proをアルミボディにして、3倍望遠レンズを外し、ディスプレイをSuper Retina XDRにした(だいぶ違うな……)ような製品なのだ。
わずか1年で、A16 Bionicはともかく、48MPセンサーまでスタンダードモデルに搭載されるとは思っていなかった。
この48MPセンサーは非常に優れていて、単に4800万画素という高画素で写真が撮れるというだけでなく、4つのセンサーをひとつの画素として使って暗所性能を向上させたり、中央部分だけ使って1200万画素の2倍望遠カメラとしても使うことができるのだ。
つまり、レンズは2個しかないが、13mm相当、26mm相当、52mm相当……というように3種類の画角のレンズがあるカメラのように振る舞うのだ。52mm相当のカメラがあれば、ちょっとしたポートレートや、物撮りなどの時にも便利に使えるに違いない。
カラーバリエーションも明るくて魅力的だし、家族や友人などに安心して勧められるスペックだ。
Apple Watch Series 9と、Apple Watch Ultra 2については、S9 SiPを搭載しているというのが魅力の大きい部分を占めている。
S9は、S6~8までの3モデルがA13 Bionicベースだったのに対して、A16 Bionicベースの4nmプロセスルールで作られるチップセットだ。つまりかなり大幅に性能が向上している。
パソコンやスマホのように、何か作業をするわけではないから、処理速度の違いを感じることは少ないかもしれないが、今回発表されたダブルタップのようなNeural Engineを使った処理を行う時には大きな差が出そうだ。
また、バックグラウンドでそういう処理を行い続けることで、処理速度が遅くなったり、動作が引っ掛かったりするので、大きく進化したS9を搭載した今回は買い時だといえるだろう。
自分で使っている感覚でも、さすがにApple Watchは毎年買い替えなくても激しく性能の劣化を感じることはないので、2~3年に一度買い替えるのだとしたら、S9を搭載した今回は買い時だといえるだろう。
画面の明るさもかなりのものだし、ダブルタップなどの新機能も魅力的。もし、3~4年年以上前のモデルのApple Watchを使ってるのなら、そろそろ買い替えてもいいと思う。
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