9月13日に行われたAppleイベント「Wonderlust.」で発表され、9月22日に販売開始予定のiPhone 15 Proシリーズを一足先に使う機会がありました。YouTubeなどの動画クリエイターとして、特にカメラ性能について注目している点を紹介します。
iPhone 15 Proチタニウムボディを触ってみて
iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは、航空宇宙産業レベルのチタニウムを使い、iPhone Proモデル史上最も軽量になりました。実際にiPhone 15 Pro Maxを触ってみると、今まで使っていたiPhone 14 Pro Maxと比べて軽くなっていることが感じ取れました。たった20gの差ですが、体感できるくらいの差異です。iPhone 14 Proシリーズよりもエッジの部分が丸みを帯びたため、柔らかい印象と、グリップ感が少し高まりました。
カラーはブラックチタニウム、ホワイトチタニウム、ブルーチタニウム、ナチュラルチタニウムの4つで、今回試したのはブルーチタニウムと、ナチュラルチタニウムの2色。Appleイベントのロゴにも使われていた2色で、特にナチュラルチタニウムは今までのiPhoneラインアップの中では見かけなかった珍しい色で、関心が高いように感じました。
グレーを基調としていますが、光によって少し色味が変わり、オレンジ味の強い光の下ではベージュっぽく見えるし、蛍光灯のような光の下だと青みも見える気がします。
iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxの画面はそれぞれ6.1インチと、6.7インチで、iPhone 14 Proシリーズと同じですが、ベゼル部分が少し小さくなったため、Super Retina XDRディスプレイのサイズはそのままに、筐体が少しだけ小さくなっています。
消音スイッチがあったところに、新しいアクションボタンが追加され、消音だけでなく好きな機能をすぐに呼び出せるようにカスタマイズできるようになりました。
向上したカメラ機能
iPhone 15 Proは、3つのカメラを使ったプロ向けのカメラシステムで、4800万画素(48MP)のメインカメラは、24mm, 28mm, 35mmの中からタップして設定を変えられ、設定で好きな画角をデフォルトにすることも可能です。
メインカメラは48MPのProRAWと、HEIF画像に対応しています。同じメインカメラを使った画角は、クロップされたような状態ですが、2400万画素(24MP)の解像度をデフォルトとしています。
iPhone 15 Proには77mm相当の3倍カメラが搭載され、iPhone 15 Pro Maxには120mm相当の5倍カメラが搭載されています。
iOS 17を搭載したiPhone 13以降で使えるようになる新機能では、次世代のポートレートでは、撮影時にポートレートモードを選択しなくても、人、犬、猫がフレームにメインで映っている場合、もしくは画面をタップして被写体を選択した場合に、あとから編集して、シネマティックモードのように焦点を変更したり、f値を変更したりすることができます。
USB-Cで開かれる可能性
iPhone 15 ProとiPhone 15世代から、ついにLightningではなくUSB-Cコネクタがつきました。iPhone 15 Proは、USB 3に対応しており、これによってデータ転送はもちろんのこと、さまざまな側面からクリエイターがより使いやすくなります。
iPhone 15 ProとMacをUSB-Cで繋いで、Capture Oneアプリを使い48MPのProRAW写真をすぐにモニターすることができたり、ProResビデオをUSB-Cで繋いでいる外部ストレージに直接録画することができます。
外部マイクを繋いだ場合、Lightningとは違い、USB-Cでは音声アウトプットがそのままiPhoneから聴くことができます。
iPhone 15 Proは本当のポケットシネマカメラになれるか
iPhone 15 ProでのProRes撮影は、4K60fpsまで可能になりましたが、これは外部ストレージが繋がれている場合のみです。純正カメラアプリでは、ProRes形式の動画のみ外部ストレージへ直接書き込むことができ、外部ストレージは、「exFAT」または「APFS」でフォーマットされている必要があります。
さらに、新しいApple Logの形式でProRes撮影ができるようになりました。Logでは、コントラストとシャープネスを抑えて記録し、黒つぶれや白トビが少ないダイナミックレンジの高い映像を撮影でき、ポストプロダクションで本来の色に戻すことができます。すでにDaVinci Resolveの最新のアップデートには、Apple LogをACESで処理できるプリセットが用意されています。
私自身は映画制作をしているのではなく、YouTubeなどに投稿する動画がメインなので、動画撮影をする際は、最高品質だけどファイルが重いProResよりも、普通のMOVで撮影することがほとんどです。Keynoteを聞いたときに「外部ストレージに直接書き込み」はProResのみだとは気づかず、写真を含め全てのファイルタイプが書き込めるのかと勘違いしてしまったのですが、実際にはそうではありませんでした。
ProResを使わなくても、私のYouTubeチャンネルでアップしている4K動画の素材は、長めのものだと数十GBのファイルサイズになってしまいます。実は、Blackmagicが先日リリースしたBlackmagic Cameraというアプリを使用すると、ProRes以外の動画ファイルも外部ストレージに入れることができます。
また、Blackmagic CloudとDaVinci Resolveを連携させ、撮影した動画をクラウドのプロジェクトにシンクしていき、エディターやカラリストがすぐにアクセスできるようにする、という機能もあります。私の編集チームでこのアプリを使えば、iPhone 15 ProとDaVinci Resolveでの連携で、他のカメラを使うよりも格段に効率化されそうです。
Apple Parkでの取材の一環で見たデモでは、iPhone 15 ProでProRes撮影した動画と、一式揃えるのに1000万円はくだらないであろうARRI ALEXA 35という本物のシネマカメラで撮影した動画を交互で見る機会がありました。
特に望遠のほうではほとんど違いが分からず、iPhone 15 Proの映像のクオリティの高さに感動しました。値段も、手軽さも、全く違うカメラですし、プロが撮影・編集しなるべく近づけているであろう映像ではあったものの、映画を撮影できるカメラと並べても遜色のないように持っていけること自体が数年前では考えられなかったことです。iPhone 15 Proは、本当にポケットに入れることができるシネマカメラです。
Vision Proで再現できる空間ビデオ
年内のアップデートでApple Vision Proで視聴できる空間ビデオを、iPhone 15 Proの2つのカメラの視差を使って撮影できるようになります。Vision Proはアメリカのみで来年の初旬発売予定ですが、発売すぐにVision Proが手に入らなくても、大切な瞬間を空間ビデオで撮影しておいて、いつか追体験することもできます。撮影しておいて損はなさそうです。
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