恒例のベストバイ企画、ベストと言うほど絞り込むのが難しく、ウェアラブルからゲーミングまで思いつくままに感想と評を並べます。ジャンル問わず、特にオチのない意識の流れ配信のようなものと思ってごらんください。
Ray-Ban | Meta smart glasses 2023 (動画配信メガネ)
Metaとレイバンが共同開発するスマートグラスの第二世代モデル。要はカメラとスピーカー、BluetoothとWiFiを載せたサングラスで、音声認識で写真や動画の撮影、Meta AIとの会話等々が可能。
Ray-Ban Metaで撮った一枚。
・軽率にインスタLiveで主観配信できて楽しい
観光客のようにスマホを掲げて「配信中です!!」と歩けば同じことができますが、両手を自由に普段どおりの行動を主観で、思いついてすぐリアルタイムに見せて、大げさに言えば視覚を共有して話せるのはとても楽しい。
チャット書き込みを読み上げる機能もあり、スマホの画面を見つめることなく自然に行動できます。
(撮影中はサングラスの前面LEDが強烈に光り、周囲に撮影していることを知らせる仕組みですが、そもそも存在を知らなければメガネで撮っていると思わないため、公共の場で使うにはスマホ撮影程度の配慮が必要です)
・意外にも音が良かった
特に期待せず、まあHuawei Eyewear二代目には及ぶまいと思っていたスピーカーが意外にも好音質。原理的に低音は密閉型のしっかりしたイヤホンに負けるものの、オープン型とは思えない迫力と明瞭さ。特にボーカル中心の曲なら聴き心地もよく、カメラ抜きのオーディオグラス版を出したら良いのでは?と思うほど。
・写真と動画は「自分が三脚、頭が雲台」。撮影の閾値がさらに低く
カメラの画質は明るいところなら驚くほど。暗所は弱く、最近のスマホのような暗所撮影処理がないため、夜に明るい看板等を撮ったつもりが露出オーバーで何も読み取れないことも。
個人的には、スマホをすぐ出せるよう身につけ、なんなら高確率で手に持っているので、わざわざ撮りたいほどの対象ならスマホを使いますが、カメラ付きスマートグラスでスマホを構える手間も、指でタップするハードルもなくなると、これまで以上に軽率に、閾値が低く映像を記録するようになりました。大げさに言えば、カメラ付き携帯電話以前と以後の差。
両手が塞がっていたりスマホをホルダーに取り付けて取り出すのが面倒なときや、スマホを落としたら取り返しがつかないような状況でも、メガネなら何も考えず撮影できます。
普段からまったくどうでも良いものを撮影しては、あとから何を撮りたかったのか自分で悩む癖がありますが、ますます謎の写真が貯まるように。早く主観視点の広角高解像度で24時間すべて記録できるようになってほしいものです。
職業柄もありモノを手で操作する主観動画や写真がなんの準備もなく即撮れるのは切実に便利。
以前は三脚を立てたり、首掛けスマホホルダを使ったり、キャップのツバにアクションカメラを固定する等々の手間をかけ、ちゃんとフレームに収まっているか外付けモニタに飛ばしたプレビューをチラチラ眺める等が必要でしたが、Ray-Ban Metaではツルのボタンを押すかHey Meta で指示するだけ。
・Meta AIは進化する
今のところ日本語には非対応ながら、Meta AIはSiriのような定型文決め打ち処理ではなく、ChatGPTのようなLLMベースのエージェントと会話できます。
まだ接続サービスも少なく実用性では微妙ですが、時間やカレンダーや天気や計算、単位換算等々ならいまでも便利。LLM程度の無為な哲学問答なりレシピ質問なりも。
2024年にかけて進化が予告されており、いずれは声でMeta AIに「これは何?」と尋ねればカメラ画像をマルチモーダル対応で分析、声で答えてくれる機能も対応する見込み。
先代モデルに続き日本向けには販売しておらず、試すには海外で使うか、検証などの目的と期間を限定して特例制度で申請する必要があり、国内で常用できないのは残念。
撮影するには面と向かう必要があり、必ず眩しく光って周囲に知らせる外向きのライトは塞ぐと機能しないなど、よからぬ目的に使うには非実用的になっているものの、また誰もが公共の場でカメラ付きスマホを手に持つようになったとはいえ、やはり「カメラ付きメガネ」にはまだ社会的に一定の抵抗が見込まれるのも課題。
発売されたとしても普通のメガネと両方を持ち歩き、あらぬ疑いを招かない状況でのみ着けることになるかもしれません。
ASUS ROG Ally (ゲーミングUMPC)
Windows PCなのでとりあえず何でも動く。Steam Deckではそのまま動かないXbox Game PassやEpic Games Store等々も。
性能もSteam Deckが低性能ゲーミングUMPC向けプロファイルの流れを作ってくれたこともあり、設定を調整すれば多くのゲームが快適に動く程度。メガネ型ディスプレイと接続してPC作業の母艦にも。
これまでも十分にゲームが動くモバイルノートを持ち歩いていましたが、やはりコントローラ一体化で自分の腕がスタンド、デスクフリーで接続の手間なしは大きな差。
気に入るほど不満や惜しい点が出てくるので、当然あるはずの後継モデルがどう改良してくるか今から激しく楽しみ。
マイクロソフトがXboxアプリにハンドヘルドモードを追加したニュースについに山が動いたかと期待したら「狭い画面では邪魔なサイドバーを小さく畳める」だけだったのは拍子抜けでしたが、このまま携帯ゲーミングUMPCの存在感が無視できなくなれば、Steam Deckやゲーム専用機ライクな操作性に近づけるかもしれません。
PlayStation Portal (リモートプレイゲーム機)
コントローラ一体型ディスプレイ的な、PS5のWii U GamePad的な製品。PS5を持っていて、かつリモートプレイ専用というニッチ向けではあるものの、(主に自宅内で)テレビの前から離れられるロケーションフリー、だらだらと遊べる姿勢フリーが正義。
ROG Allyやスマホ等々でもリモートプレイ自体はできますが、ポータルはコントローラがPS5独自機能も完全再現でグリップも快適、画面が一回り大きく歴然と見やすい8インチ、バッテリー駆動時間が長く、ゲーミングUMPCのように常に残り時間や充電を気にすることがない、ファンも鳴らない、単機能なので遊ぶまでがシンプルetcが良いところ。
どの程度体感するかとは別に、原理的に遅延が避けられないリモートプレイでは、反応速度を競うアクションの高難度ボス戦や対戦をやる気にはならず(内容にかかわらず「遅延しなきゃ勝ってたのに~」と絶対思ってしまうから)、シングルキャンペーンでも映像を堪能したいときは8インチのフルHD液晶よりもやはり大画面4K有機ELテレビやゲーミングモニタを選びますが、逆にいえばそれ以外はリモートプレイでも問題なく遊べるゲーム、場面が大半。
以前ならテレビの前に座ってPS5を起動して、を考えなかったスキマ時間にもつい手を伸ばしてしまい、PS5の稼働率が上がるQoL改善アイテムです。
Analogue Duo (PCエンジン互換ゲーム機)
ゲームボーイ / GBA / ゲームギア等が動く携帯ゲーム互換機Analogue Pocketや、メガドライブ互換機Mega Sg、スーパーファミコン互換機Super Ntなどで定評あるAnalogue製。PCエンジン系列のフォーマットが全部動く。
レトロゲームとしては比較的よく知らない界隈なので、数十年ぶりに発掘してレトロスペクティブするのが楽しい。
CD-ROM2ではないHuCARDならば、Analogue Pocketに2024年出荷予定のTG16アダプタで遊べる見込みですが、テレビで遊ぶにはドックが必要になるため、人生の一部をPCエンジン文明圏で形成した人なら一も二もなくDuoがおすすめ。
為替の影響と送料もあり格安とはいえませんが、いま完動するレストア済み実機を全フォーマット対応で揃えるよりは遥かに安く、無線対応やスクショ撮影、アップデートでステートセーブ等にも対応するのはAnalogue Duoの魅力。
GOOVIS G3 Max (ヘッドマウントディスプレイ)
公称FOV 65度、2560 x 1440のヘッドマウントディスプレイ。
サングラス型ディスプレイはFOV(視界に占める角度)が43度や50度で、一覧性は良くても迫力が足りなかったりしますが、こちらは映画館の前寄り席くらいの迫力で画素的な破綻もなし。発色も黒の沈みも良好。
「スマホやメガネのディスプレイじゃ勿体無いからちゃんと大画面で見よう」と持ち越ししてた映画なども心置きなく見られる。視度調整ダイヤルでインサートレンズを作らなくてもくっきり(一定の近視・遠視なら)。
前頭部(額)と後頭部で止めるバンドは、サングラス型に比べれば物々しく見えますが、一部のVRヘッドセットのように顔面に押し付けるタイプよりは楽。
かつ、バンドは取り外してゴーグル部分を目の上に軽く乗せる程度でも使えるため、横になって大画面で映像を見るのも快適。天井にプロジェクターで投影するより首も楽です。
シースルーでもなくパススルーもなく、遮光性に優れた接顔部でほぼ完全に視界を塞ぐため使える状況を選び、見ながら手元で何か操作するのも不向き。
ですが、逆に言えば目の前の映像を見る以外何もできない、ついスマホをチラ見することもない、半ば強制的に鑑賞に集中させてくれる、映画館の効能を正しく再現していると言えないこともありません。
iPhone 15 Pro Max ()
大変いまさらな気もしますが、やはりUSB-C化は便利。使うまでは、いまさらケーブルが1本減るくらいで良くそこまで感動できるな?程度に思わないでもありませんでしたが、PC用やiPad用に買った周辺機器の多くがそのまま使えるのは実に楽。
特に、紛失したり持ち出し忘れて何度も買う羽目になったあのデジタルAVアダプタ(HDMIアダプタ)なしで、サングラス型ディスプレイや外部ディスプレイに直結できるだけでもしみじみ買った価値を実感できます。
転送速度が早くなったため、外部ストレージに直接保存も。(むしろUSB-CのProになる前のiPhoneのシネマ撮影推しは、Lightning転送やAirDropをじっと待つワークフローだったのかと思うとジワります)
ほかスマホとしては、Pixel Foldがついに出てくれたことと開いて横長の縦横比で嬉しい一方、フォルダブルの画面活用とマルチタスク関連はGalaxyに文字どおり数世代遅れの貧弱さで悲しい気持ちに引き裂かれる日々。Feature Dropで着実に追いかけて便利になるのを楽しめるとも言えます。
ゲーミングスマホではREDMAGIC 8 Proが、内蔵ファンやサイドボタンの実用性、ゲーマーが求める機能は何でもトライする野心的なOS改変でスマホゲーミング文化を実感でき出色。紅魔姫かわいい。
ASUSの定番ゲーミングスマホROG Phone 7は、巨大な外付けインタークーラーがキラキラ光る飾りギミック8:実用2程度かと思えば、冷却とピーク性能維持だけでなく物理背面ボタンの追加になりスタンドになる等、大真面目に使える装備だったのは良い意味で驚きでした。もちろん「見た目性能」も、装着すると背面の通気孔が開くギミックの満足度も上々です
キヤノン Privacy Talk(マスク型減音デバイス)
大ぶりのマスクのようなカバーの下に、消音機構とBluetoothマイク、換気ファン搭載のマウスピースを隠して有線イヤホンをつけた製品。
周囲には話し声がモゴモゴ程度にしか聞こえず、盗み聞きされないため、公共の場所で通話やオンライン会議ができますという企画です。発想としてはシフトールのMutalkなど先例があり、さほど新奇ではありません。
コンセプトは素晴らしい一方で、使ってみると不満や制約、欠点はキリがなく、マウスピースが小さくて口がろくにあかない、喋りづらい、口だけを覆うので自分は慣れても相手は不明瞭な鼻声を聞かされる(本来は緊急避難的に使うべきであって、聞き取りやすく話すことが最低限の礼儀と考えれば使用が失礼。説得力のあるプレゼンや、重要な会議では頼れない。口元を見る必要がある聴覚障害者と話すときは言うに及ばず)、もちろん歌や声質が大事な収録には使えない、直付けのイヤホンがなんとも微妙(常にブラブラしてる)、マウスピース部は小さいけれどまだ全体が大きく、可搬性まで考慮できていない等々。
(右はRazerのウェアラブル空気清浄機Zephyr)
といった不満点や制約があったうえで、「周囲の騒音がひどい環境でも通話や音声入力ができる」「話を聞かれない個室を探して慌てることなく、どこでもオンライン会議に出られる」そして「外からはやけに大きなマスク程度で誰も注目しない」点で、個人的には欠かせないアイテムになりました。Mutalkの新オプションパーツのように、鼻まで覆うマスク部分を自作してみようかと思います。鼻息はNVIDIAに任せる。
HHKB Studio (ポインティングデバイス一体型キーボード)
元から定評あるHHKBで、かつ欲しかったポインタもあり、側面を使って4本(!)もジェスチャパッドありなど好みの多機能系に分岐進化、かつキーは好みで変えられるホットスワップ対応メカニカルなど、歓迎しかない新型でした。
とはいえ、据え置きで使うにはマウスやトラックボールがすでにあり、キーボードもRealForceなりその時々のゲーミングキーボードなどすでに複数を使っている状況、かつ毎日の持ち歩きにはもっと薄型や折りたたみ等々を使う個人的な事情がある以上、実に好みではあるけれども、まあ実際に使うことはないだろうな、となんとも言えない感情を抱いていましたが、気づけば全然使ってました。いまもHHKB Studioで打ってます。
個々人のスタイルのどこにフィットするか、スタジオよりも通常ラインのHHKBかは千差万別と思いますが、オールインワンの強みを活かして、仕事部屋以外に置いて気分を変えてそちらで作業したいとき、自宅や会社のデスク以外の拠点に配置すると、どこでも実に快適に作業効率が上がります。
毎日持ち歩くには重いものの、出張など出先で長時間の作業やパフォーマンスの発揮が求められるとき、ノートのキーボードよりも深く確実な打鍵感の力を借りたいときは、オールインワンのマルチプラットフォーム対応でむしろコンパクトに最大効率を持ち歩けるとも。
VITURE One XRグラス+ネックバンド
XREAL Air や Rokid Max と同様のいわゆるARグラス、あるいはサングラス型ディスプレイ。
近視でもくっきりの視度調整ダイヤル、レンズを暗くして明るい場所でも(多少)見やすくする電子調光フィルム、スマホ直結でも使える3DoF (首の動き認識で画面を空中に固定)等々、良いところ見るべきところはありますが、出色なのは周辺機器。
特に専用に作られたネックバンド型Android端末は、バッテリーやプロセッサを内蔵せずどうしてもヒモに囚われるサングラス型ディスプレイを力技でハンズフリーにする面白デバイス。
動画配信アプリやリモートプレイが単体で動くなどちゃんと実用性もありつつ、ハンズフリーにしたら首元に手を伸ばして操作する羽目になった(またはスマホやBluetoothリモコン併用)、首元でファンが回ると気になるなど、無二の「首掛けウェアラブルAndroid」体験が楽しめます。
8BitDo Micro (汎用Bluetoothコントローラ)
3000円弱で売っている多機種対応コントローラ。Nintendo SwitchやWindows / Android等で使えます。
25gと軽量なので、出先でSwitchのマルチプレイをしたいけれどコントローラが足りない!というとき、発作的にノートPCやスマホでレトロゲームを遊びたいけどキーボードやタッチじゃ違うんだよ!というときに備え、カバンの中の七つ道具のひとつ、いつでも十字キーとABXYLRボタンでコマンドは出せるというお守りのような存在として購入。
しましたが、「キーボードモードでマッピングを変更して、iPadの電子書籍アプリでページめくりリモコンにする」が便利なので家に置きっぱなし。予備と持ち歩き用に三台買い足します。
蛇足ながら、8BitDoは名前のとおりレトロゲーム界隈で評判が高く、Analogueとの関係も深いため、Analogueの互換ゲーム機でも汎用的に使えます。
¥3,355
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
Xbox Wireless Controller Starfield Special Edition
純粋にドヤりたかったので。実際にはもったいなくて、というよりEliteコントローラを使うので無使用。
2024年に欲しいものはまあVision Proですが、全員言いそうなので敢えて Immersed Visor で。
2023年に人気だったゲーミングUMPCもサングラス型ディスプレイもまだまだ改善の余地の塊ではあるので、2024年も楽しめる製品が続いてくれそうです。オンデバイスAI処理の進歩で、Ai Pin的な新しいフォームファクタにも期待。