鋳物メーカーの石川鋳造と家電メーカーのドウシシャは、鋳物フライパンと専用電気卓上コンロ、フタ、収納スタンドなどの付属品をセットにした「おもいのフライパン スクエア 電気卓上コンロセット」(直販価格5万5000円/税込み)を2023年12月20日に発売しました。
「おもいのフライパン スクエア 深型(22cm)ドウシシャVer」と浅型の「おもいのフライパン スクエア 頂-ITADAKI-(22cm)ドウシシャVer」の両方が付属するフルセットのほか、深型のみのセット(同3万6300円)、浅型のみのセット(同3万7400円)も用意します。
石川鋳造は鋳物フライパン「おもいのフライパン」を2017年12月から製造販売しており、一時は入荷3年待ちになるほどの人気になったと言います。
今回の製品は石川鋳造が開発したスクエアフォルムの「おもいのフライパン スクエア」と、ドウシシャが開発した専用の電気卓上コンロがセットになったものです。
IHクッキングヒーターによる当初の開発を断念し、改めてドウシシャと共同開発に
おもいのフライパンは、石川鋳造が「世界で一番お肉がおいしく焼ける」をコンセプトに開発したもので、ガス火やIHクッキングヒーター、オーブンなどで使用できるのが特徴です。
熱伝導性や蓄熱性が高いのが特徴ですが、ユーザーからは「通常使っているテフロンのフライパンなどと比べると焼き加減が難しいという声もたくさんいただきました」と、石川鋳造代表取締役社長の石川鋼逸氏は語ります。
石川氏によると、お肉は230~250℃で一気に焼き上げるのがもっともおいしくなるとのこと。そこでおもいのフライパンを使って調理できるIHクッキングヒーターを他の家電メーカーと共同開発しようとしたところ、160~170℃あたりで過熱防止のために自動停止してしまうことが判明。この問題を解決するには1台10万円くらいになってしまうため、開発を断念したそうです。
今回は改めてドウシシャとコラボし、IHではなく昔ながらのシーズヒーター(金属製パイプの中に電熱線を配置したヒーター)を採用しましたが、鋳鉄製フライパンを温めるために2つ課題がありました。
1つは鋳鉄製フライパンは厚くて重くて温まりにくいこと。ドウシシャの従来製品のホットプレートで採用しているヒーターでは250℃まで温めるのに10分ほどかかってしまうため、ヒーターを長く配置することで約4分30秒程度まで短縮しています。
もう1つの課題は重さです。従来のホットプレートの設計では、鋳鉄製の重いフライパンだと置くときの衝撃が大きいため、何回も置いているうちに変形したり壊れたりしてしまったのです。そこでヒーター本体の脚部にダンパーを搭載しました。
開発を担当したドウシシャ ハウスウェア商品ディビジョン マネージャーの本藤昭次氏は「脚部の4点が浮き沈みする機構を入れることで、置いたり外したりを繰り返す試験を数千回クリアできるようになりました」と語ります。
おもいのフライパンのセットはコンパクトに収納できるのも大きな特徴です。ヒーター部に深型フライパンと浅型フライパンを重ねて、その上に鍋敷き、ふたを重ねて縦に収納できるようになっています。
ふたは取っ手を支えに立てかけられるようになっており、調理中に一旦置くのに便利です。
一体成型の鋳鉄フライパンなのに取っ手が熱くならない
温度設定スイッチは無段階のスライド式になっており、目盛りには「弱」、「中」、「強」と記されています。
設定温度は目盛りに書いていませんが、「弱」が約110~150℃、「中」が約160~190℃、「強」が約200~250℃とのことです。
おもいのフライパン スクエアの興味深いところは、取っ手まで鋳鉄を使った一体成型のフライパンなのにもかかわらず、取っ手が熱くならない点です。
一般的なフライパンは、フライパンの本体に取っ手が直に付いているのに対し、おもいのフライパン スクエアはフライパンと取っ手との間にL字型の空間が設けられています。
フライパンからの熱がL字型の部分を迂回することで伝わりにくくなっているというわけです。
さすがに長時間熱し続けると取っ手も熱くなってくるそうですが、10分~20分程度では全く熱くならないことを確認できました。
豚ハラミ肉やラム肉などを焼いてみました
発表会の後、実際に「おもいのフライパン スクエア 電気卓上コンロセット」をお借りして試してみることにしました。
浅型フライパンを使い、まずは温度が約4分30秒でどれだけ温度が上昇するかを確認してみたところ、236℃まで上がったことを確認できました。
おもいのフライパンはガスコンロでも使えるので、ガスコンロでも使ってみました。
深型フライパンではエビのアヒージョを作ってみました。筆者のような一人暮らしでは大きすぎる感があるもののファミリーで使うのには良さそうです。
実際に使ってみたところ、率直に感じたのは「重い」というのと、「手入れが大変」ということでした。
深型フライパンは重さが約1.95kgあり、浅型フライパンはそれを超える約2.1kgもあるため、気軽に振れる重さではありません。
また、無塗装の鋳物フライパンのため、手入れが必要になります。最初は洗剤でしっかりと洗ってからフライパンをしっかりと熱して水を飛ばし、油を流し込んでなじませる必要があります。
調理後も洗剤を使わずに亀の子だわしや金だわしなどで洗い、収納前に乾かしてから軽く油をなじませる必要があります。焦げが付いた場合は洗剤の使用も可能ですが、極力使わないようにすることがおすすめされています。
一方、焦げ付きにくいテフロン加工のフライパンは手入れが簡単ではあるものの、250℃くらいでコーティングがはがれてしまうため、長持ちしないのが難点です。
重くて手入れが少し面倒ではあるものの、無塗装のため一生ものとして使えるのが鋳物フライパンの魅力です。
「家電」として考えると手軽さとは少し離れた印象はありますが、しっかり温度コントロールしながら鉄製フライパンを使いこなしたいという人には向いている製品なのかもしれません。