USB PD対応の充電器は多数発売されており、価格や性能、サイズ、デザインなどの違いで、驚くほど種類があります。
どんな製品を選べばいいのかは、用途によってそれぞれ。例えば出力電力を考えてみましょう。多くの場合、出力が低い充電器を使っても充電できますが、やたらと時間がかかってしまうのが問題となりがち。また、ノートPCのように多くの電力を使うものは、そもそも電力不足で充電できない、といったことまであります。
そのため、ノートPCの充電に使うなら65W、タブレットなら30W、スマホなら20Wといったように、機器に合わせて余裕のある出力を選ぶのがベターです。
もうひとつ重要なポイントが、サイズと重量。机に据え置いて使うというなら気にしなくていいですが、カバンに入れて毎日持ち歩きたいとなれば、なるべく小さくて軽いものが欲しくなります。
この点を考慮しながら製品を選べば、早々大きな失敗はしないはずです。もちろん、アマゾンの奥地だと「65W GaN 699円」みたいな明らかな詐欺商品もありますから、注意は必要ですが。
とはいえ、世の中にある製品の数は非常に多く、こういった必要条件(と注意事項)だけではどれを買うか絞り込めません。そこで最終的に重要となるのが、「所有欲が満たせるか」です。つまり、見た目の良さです。
そんなビジュアル重視の製品として気になる存在なのが、「re:colors(リ・カラーズ)」ブランドから登場した20WのUSB PD対応充電器と、100W対応のUSBケーブル。見た瞬間、何のオマージュかを連想できた人は、当時のイロイロな出来事が走馬灯のように頭のなかでぐるぐる回っていることでしょう。
そう、ゲームボーイカラー……じゃなかった、初代iMac(1998年)です。
当時は半透明のトランスルーセントデザインに合わせた周辺機器が数多く登場したほか、ケーブル、ゲーム機用の機器、その他小物でも、トランスルーセントが流行しました。
40代以上にとっては懐かしいものですが、面白いことにここ最近、中が透けて見えるスケルトンデザインの製品がチラホラ登場しています。そういう意味では、若い人にとっては新しく感じるデザインだったりしそうです。
発売元は、株式会社カンパーニュ。クラウドファンディングサイト、CAMPFIREのプロジェクトで登場していたので、到着を心待ちにしている人もいるんじゃないでしょうか。
この充電器とケーブルをTechnoEdge公式ストア、「テクノエッジ購買部」で取り扱うにあたり、どんな製品なのかチェックして欲しいということだったので、実際に試してみました。宣伝文句と違って20W出力ができなかったり、100W対応だというのにeMarkerが入ってなかったりしたら嫌ですもんね。
re:colors USB-PD対応ACアダプタ販売ページはこちら(テクノエッジ購買部)
re:colors USBケーブル販売ページはこちら(テクノエッジ購買部)
製品の特徴と仕様をチェック
まずは充電器から。
本体はスケルトンデザインですが、基板が見えるのは2面だけ。逆の2面は電源トランスあたりが絶縁シートで包まれているようで、何かわからん黒い物体とコンデンサーが見えるだけになっていました。
ちょっと残念ですが、安全設計上必要となる絶縁だと思います。むしろ、こういった部分がしっかりしているという証拠ともいえます。
基板を見てると、SC3055というICが使われているのを発見。検索してみると、これがGaN採用の電源コントローラーでした。一部とはいえ、分解せずに使用されてる部品がわかるのって、なんだか新鮮です。
プラグは固定で、折り畳みではありません。プラグを除くと29×29×31mmのコンパクトサイズですから、無理に可動部を詰め込まない方がいいという判断でしょう。
Type-Cのポートがあるのは上面。PDの文字が内側から刻まれていて、表面はツルツル。L字に組まれた基板2枚と、絶縁シートにくるまれた何かが透けて見えます。
仕様が書かれている底面は、ホワイト。このツートンカラーが初代iMacっぽさを引き立てています。
出力仕様は、5V3A、9V2.22A、12V1.67A。20W充電器としては一般的なもので、電圧を細かく変更できるPPSの記載はなし。しっかりとPSEマークがあり、国内で安全に使える製品であることも間違いありません。
デザインを見てもらえると感じると思いますが、カラーは初代iMac風で、形はiPhone付属の充電器に近いキューブ型。iPhone登場時にトランスルーセントやスケルトンが流行ってたら、きっとこんな感じになったんだろうな、などと妄想してしまいます。
なお、ポートがType-Cのみだというのを残念がる人がいるかもしれませんが、そこは割り切りましょう。このサイズのためです。
USBケーブルは100WのUSB PD対応で、eMarker入り。長さは1mで、USB 2.0 C-Cというものです。
最大の特徴は、当然ですが透けてること。コネクタ部の基板がバッチリ見えるほどで、片面にトランジスタ、その裏にeMarkerらしきチップが載っていることが確認できました。
なお、使用されているのは両端ともに同じ基板。当然ですが、eMarkerのチップは片側にしか載っていません。
よーく見ると、部品の足から細く線が入ってます。どうやらこれ、樹脂の充填か成形時につく跡のようです。普通にコネクターを見るぶんには、そこまで気になりません。
ケーブル部はメッシュのカバーがあり、手触りはさらっとしています。丈夫でしなやか、そして絡みにくいので、使い勝手は結構よさそうです。
ちなみにこのメッシュ、コネクター部の結構奥までしっかり入っています。樹脂でガッツリ固められているので、使っているうちにスルッと引っこ抜ける……なんて心配はないでしょう。
仕様通りの性能があるのか、簡単チェック
性能チェックは、いつものUSBテスター「FNIRSI FNB58」と、USBケーブルの性能を確認できる「USB CABLE CHECKER 2」を使います。
¥8,800
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
もうひとつ、負荷テスト用に電子負荷の「ATORCH DL24」も使用しました。これは、電流や抵抗値を自由に設定し、一定の負荷をかけられるもの。電源テストにあると便利なツールです。これとトリガー基板を使うことで、任意の電圧における負荷テストを試すことにしました。
ということで、充電器から見ていきましょう。
まずはUSB PDへの対応状況として、PDO(Power Data Object)をチェック。PDOは充電器が出力可能な電力設定リストで、接続されたデバイスがこの中の1つを選ぶことで、自動で最適な電力となるしくみです。
つまり、PDOが適切な設定になっていなければ、いくら最大電力が高くても意味がなくなってしまいます。
FNIRSI FNB58を使ってこのPDOを読み取ってみると、ある意味面白いことになっていました。
仕様によれば、出力は5V3A、9V2.22A、12V1.67Aの3つのハズですが、追加で、5.9Vまでは3A、11Vまでは2Aという2つのPPSにも対応していました。仕様外なので個体差があるかもしれませんが、対応しているならうれしいポイントですね。
もうひとつ、USB PD以外の高速充電規格への対応状況もチェックしてみました。
USB PDで12Vまで出力できるのは仕様にありましたが、Appleの高速充電となる5V2.4A、古いAndroidなどで使われるUSB BC、Qualcomの高速充電となるQC2.0/3.0などにも対応。USB PDに対応していないスマホ、タブレットでも、高速充電できるというのが確認できました。
続いて、出力電力の確認です。PDOから確認できるのは、あくまで充電器による「自称」でしかありません。いくら12V1.67A出力が可能だといっても、実際そこまで出力できない……なんてこともあるからです。
この不安を取り除くため、簡単な負荷テストを実施しました。まずは何も接続せずに電圧だけ変更した無負荷の結果です。なお、PPSは仕様に書かれていないため、5V、9V、12Vの時だけをチェックしています。
<無負荷>
電圧 | 電流 | 出力電圧 |
---|---|---|
5V | 0A | 5.09V |
9V | 0A | 9.14V |
12V | 0A | 12.22V |
出力電圧は若干高めに見えますが、どの電圧でも2%以内と高精度。全く問題ありません。続いて、定格の最大電流を引いた場合にどこまで電圧が下がるかを見てみました。
<定格最大>
電圧 | 電流 | 出力電圧 |
---|---|---|
5V | 3A | 4.83V |
9V | 2.22A | 8.95V |
12V | 1.67A | 12.10V |
5Vでは3A流すと0.17V電圧が落ちてしまいましたが、割合で見ると3%ちょっとなので問題なし。9V、12Vではほぼ理想通りの電圧。仕様通りの出力ができているのは間違いありません。
最後は安全機能の確認も兼ねて、過負荷テストを行ってみました。各電圧で出力電流を0.1Aずつ増やしながら負荷をかけ、どこまで出力ができるのか、そのときの電圧はどこまで下がるのかというテストです。
<過負荷>
電圧 | 電流 | 出力電圧 |
---|---|---|
5V | 3.3A | 4.80V |
9V | 2.6A | 8.94V |
12V | 2.4A | 11.80V |
5Vでは10%、9Vでは17%ほど多くの電流が出力できるため、多少の電流が多めに要求されてもセーフ。これを超えて過剰に要求されればしっかりと出力が停止されるという、理想的な動作が確認できました。
ただし、気になるのは12V時。定格1.67Aに対し最大2.4Aも出力可能で、40%以上もの過剰出力が可能になっていたこと。できれば、もう少し低い電流で出力が止まって欲しかった、というのが正直なところです。
とはいえ、今回のように無理に過負荷をかけるのでなければ──よほど手癖の悪いデバイスを繋がなければ──このような状況にならないので、そこまで心配する必要はないでしょう。最悪でも、充電器が壊れる前に出力が停止されるというのは確認できましたしね。
続いてケーブルです。最も気になるのはeMarkerの情報。搭載されていない、もしくは、100W出力が許可されていない物であれば、詐欺だと言われてしまう危険があるからです。まあ、そんな製品は滅多にありませんが。
見ての通り、しっかりとeMarkerを搭載。電圧20V、電流5Aに対応した1~2mのUSB 2.0ケーブルだという情報が読めました。ちなみにVender IDがないのは、廉価ケーブルあるある。本来は記録されているべきですが、なくても機能に影響ありません。
ケーブルの性能となる抵抗値と結線状況は、USB CABLE CHECKER 2を使ってまとめて確認です。
抵抗値は多少ふらつきますが、157mΩ前後。手持ちの100Wケーブルとくらべても遜色なく、標準的な値となっていました。ちゃんとシェルとGNDもショートされており、C-Cケーブルとしてはまともです。
多くの人があまり気にしないケーブルの長さについても確認してみましたが、1mという仕様に対し、端子先端同士の実測で1.04m。4cm長いだけで、結構正確でした。
機能・性能問題なし。見た目にグッとくるなら買いか
駆け足気味に特徴・仕様・機能・性能をチェックしてみましたが、しっかり仕様以上の作りとなっていることが確認できました。
このデザインを「レトロ」と言われてしまうと、胸の奥がウッとなったりしますが、事実として、前世紀の遺物、インターネット老人会の青春であることは間違いないので仕方ないですね。
とはいえ、かわいいものはかわいいんです。
この見た目にグッときて、カバンに入れっぱなしにできる超小型充電セットが欲しいというのであれば、買って損しない製品と言えるでしょう。
40代以上の古参には懐かしいデザインのアイテムとして、若い人にはかわいらしいデザインの製品として、充電器&ケーブルをセットでプレゼントしても喜ばれそうです。
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