マイクロソフトは2月16日早朝、Xbox関連幹部のフィル・スペンサー氏やサラ・ボンド氏、マット・ブーティ氏らがXboxビジネスの将来ビジョンを語る公式番組「Official Xbox Podcast」の特別版を公開しました。
その内容は公式ブログ「Xbox Wire」でも再確認しています。今回の発表は、ざっくりとまとめれば次の通りです。
Xbox独占ゲームのうち4本を「他の家庭用ゲーム機」に移植。ただし4つのタイトルは明かさず(公式ブログでは「1年以上前からXboxのプレイヤーに提供されているタイトル」と説明)
スペンサー氏は『Starfield』と『インディ・ジョーンズ』は含まれていないと確認
サラ・ボンド氏はXboxハードウェアについて「次世代のロードマップに投資」「一世代分の進歩としては前例がない技術的飛躍の実現に集中している」と発言
つまり、Xbox独占ゲームのうち4本を他社ゲーム機に提供しながらも旧作のみ、『Starfield』など発売から1年未満あるいは未発売の大作は除外。
さらに独占ゲームを他社に提供するといっても、Xboxハードウェア事業は今後も継続拡大する、大幅に強化した次世代機にも投資していると明らかにした格好です。
これらの詳細について、Xbox事業トップのスペンサー氏はThe Vergeのインタビューに応じて、一歩踏み込んだ内容を述べています。
非常に興味深いのは、アップルがDMA(EUのデジタル市場法)に対応し、App Storeでのストリーミングゲームサービスの制限を緩和したことについて、iOSでXbox Cloud Gamingを展開する意思はあるかと問われている部分です。
(Xbox Cloud Gamingは、有料プランXbox Game Pass Ultimate加入者に提供しているストリーミングゲームサービス。現在はベータ版))
一応、現在もアップル製デバイスでXbox Cloud Gamingを利用できますが、あくまでWebブラウザ経由です。この質問は、iOS版ネイティブアプリを提供するつもりはあるか、ということでしょう。
これに対してスペンサー氏は「iOSでXbox Cloud Gamingをマネタイズする余地はありません」「実際、ある意味では正反対の方向に進んでいるかもしれない。世界最大のゲームプラットフォームでの競争を開放するには、十分ではないことは確かです」と述べています。
App Storeの開放が十分ではないとの批判は、これに先立ちサラ・ボンド氏も「間違った方向への第一歩」と表現していたとおりです。
なぜ間違った方向と表現しているのか。そのひとつは、EU域内で代替アプリマーケットプレイス(App Store以外のサードパーティ製アプリストア)を運営する場合、100万ダウンロード以上のアプリについては、初回インストールにつき1件ごとに年間0.5ユーロ(約80円)の「コア技術料」をアップルに収める必要があるためと考えられます。
マイクロソフトは英市場競争庁(CMA)に対して、独自のXboxモバイルストア(iOS向けアプリを含む)を準備中であることを届け出ていました。これは代替アプリストアに該当し、もしも実現した場合は、同社もアップルからコア技術料を課される可能性が高いと思われます。
著名開発者のSteve Troughton-Smith氏は、年間200万人のユーザーに「初回インストール」された無料アプリには、月額4万5290ドル(約680万円)もアップルに支払うことになると試算していました。
つまりiOS向けのXbox Cloud Gamingアプリを無料で配布すれば(Android向けにはPlayストアで無料配布中のXbox Game Passアプリにより実現)、マイクロソフトにとっては直接的には新たな利益を生まないどころか、多数の加入者がインストールするだけで、独自ストアで配信しているにもかかわらずアップルに支払う固定費が大きく増えることになります。
もちろん、iOSにも公式アプリとマイクロソフト版App Storeがあることで、サービス自体の魅力が増えること、新たな加入者が増えるきっかけになる効果もあるはずです。
この批判に、アップルがどう対応するのか。あるいは対応しないのか、今後の展開を見守りたいところです。