さよなら吟遊詩人。Bardから双子のGeminiにバトンタッチしたGoogleのAIはどう変わったのか(Google Tales)

テクノロジー AI
佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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前回の「Google Tales」では、GoogleアシスタントがPixieという名前になればかわいいのに、という話をしたのですが、残念ながらそこまでかわいくはない「Gemini」(ジェミニ)になりました。今回はこのGeminiのお話です。



吟遊詩人の歌声は双子たちに受け継がれる

Googleのサービス名の変更は往々にしてわかりにくい(「ハングアウト」→「チャット」と「スペース」→「メッセージ」とか「G Suite」→「Google Workspace」とか)ですが、エンジンである「Gemini」搭載サービスはみんな「Gemini」になるという方針は、比較的わかりやすいかもしれません。

個人的に残念なのは、「Bard」(吟遊詩人、という意味)も「Duet AI」も「Gemini」になってしまうことです。私のBardもすぐにGeminiに変身してしまいました。

▲BardはGeminiになりました

Duet AIはともかく、吟遊詩人なんて、副操縦士(Copilot)などよりよほど夢があると思っていたので、残念。多少の間違えも「まぁ、詩人だし」と許せていたけど、Geminiだと「2人がかりで何やってるんですか」と思っちゃいそうです。

Geminiはギリシャ神話に出てくる双子、カストルとポルックスです。2人をキャラとして活かすのは難しそうですが、ばじぃさんに、旅立つ吟遊詩人を送り出す双子のイラストを描いてもらいました。

▲さようなら吟遊詩人(イラスト:ばじぃ

Googleアシスタントも改名するのかな?

Googleアシスタントという名称が完全になくなるのかどうか、今の時点ではよくわかりませんが、少なくともサポートページには「特定の地域においては、モバイルアシスタントとしてGoogleアシスタントからGeminiに切り替えることができます」と書かれています。あ、でも起動するときは「ねぇジェミニ」じゃなくて「ねぇGoogle」のままのようです。

Gemini AdvancedでGemini Ultraを使う

Googleが2月8日に発表したのは、名称変更だけではありません。一番大きいのは、一般ユーザーがGemini Ultraを使えるようになったことです。

Geminiには「Nano」「Pro」「Ultra」の3つのサイズがあって、Ultraは最も頭がいいやつです。GoogleはOpenAIのGPT-4より賢いかも、と言ってます。

無料で使えるGeminiのエンジンはProですが、新しい有料版「Gemini Advanced」はエンジンがUltraなのです。

ChatGPTでGPT-4を使うには月額20ドル(円安な今、約3000円)のサブスク「ChatGPT Plus」への加入が必須であるのと同様、Gemini Advanvedを使うには、月額2900円の「Google One AIプレミアム」にサブスクせねばなりません。

Google Oneというのは、クラウドサービス「Googleドライブ」の有料版で、その「2TBプレミアム」プランが月額1300円のところ、このプランに加えてGemini Advancedを使えるようになるのがAIプレミアムで、月額2900円です。つまり、Gemini Advanced分は月額1600円ってことですね(Gemini Advanced単体のサブスクプランはありません)。ChatGPT Plusより安いと言えますが、ストレージは2TBもいらないなぁという人にとっては割高感があります。

▲Google Oneのプラン

私はお安いベーシックプラン(月額250円)だったのですが、仕方なくAIプレミアムにアップグレードしました。サブスクは長い目で見ると結構な負担になりますよね……。ちなみに2カ月間はお試し期間で無料です(ダウングレードするのを忘れてそのままになるような気がすごくする)。

余談ですが、ピチャイCEOは9日のXへのポストで、AIプレミアムプランで勢いづいて、Google Oneの加入者数が1億人を超えたと報告しました。

Geminiと会話してみた

アップグレードした途端、Geminiの画面がちょっとプレミアムな感じになりました。

▲プレミアムなGemini Advancedの画面

画面にもあるとおり、GeminiもBardと同様に、会話は人間のレビュアーが見ています。これは画面左下の「アクティビティ」の設定でオフにすることもできます。

せっかくAdvancedにしたので、いろいろ尋ねてみました。とはいえ、私はコーディングに詳しくないので、日常的な話題を中心に質問しました。

まずは「Googleの新サービス、Gemini Advancedを使いたくなるような紹介文を書いてください。AIについてあまり知識のない人が使ってみたくなるように!」と。すると、箇条書きを含む、かなり長い答えが返ってきました。

▲Gemini Advancedの紹介文(一部)

まあ、無難な感じです。ところが最後の「今すぐ詳細をチェック!」のURLがGoogleのGeminiではなく、Gemini Space Stationという全然違う会社のWebサイトなのでした。幻覚ってやつですね。

▲ここをチェックしてどうする

Advancedじゃない無料のGeminiに同じ質問をしたところ、参照先として正しいURLを提示してくれました。謎だ。

幻覚と自主規制

その後も、Geminiはいろんな幻覚を見せてくれました。なぜかGoogle One AIプレミアムプランはまだ日本で提供されていないと言ったり(そんなことないでしょ?と問いただしたら間違えを認めました)、その月額料金が980円だと言ったり(実際にはさっき書いたとおり2900円)。うっかり受け売りはできません。

ところで、Geminiはマルチモーダルなので、画像による質問ができます。英語でなら画像を描いてもらうこともできます。タッチの指定をしないと、基本的にフォトリアルな画像になるみたいです。

人物画も、具体的な名前(テイラー・スウィフトとか)を出さなければ、それなりに描いてくれます。ところが、ダイバーシティへの配慮が過剰なのか、例えば「A picture of a girl wearing kimono praying at a shrine」(着物を着た少女が神社にお参りしているところ)というお願いの答えがこれです。

▲確かに日本人の、とは言わなかったけども

ちなみに同じお願いをChatGPTにした結果はこれです。

▲ChatGPTでは人種を指定しなくても日本人ぽくなった

全体的に、とても慎重な性格みたいです。他にも、銅像の写真を見せて「これは誰の銅像?」と尋ねたら、「人物の画像についてはまだ対応していません」と言って、私が見せた画像も削除しちゃいました。

▲銅像の写真なのに

「モナ・リザを描いているレオナルド・ダ・ビンチ」とか「演説しているリンカーン大統領」とか、歴史上の人物でも描いてくれませんでした。ChatGPT Plusは描いてくれますが。

映画の1シーンを見せてタイトルを当てさせる、というのをやろうにも、人が映っているシーンはことごとく削除。「すずめの戸締まり」のアニメ絵でもだめ。人が映っていないシーンであれば、ちゃんと当ててくれましたが。

Geminiの旅は始まったばかり

ついついあら捜しをしてしまいましたが、Geminiはまだ始まったばかりです。どんどんよくなっていくことを期待しています。

このコラムをまるごとペーストして改善点をおうかがいしたところ、小見出しをつけてくれたり、ユーモアや個性を適度に盛り込めとアドバイスしたりしてくれました。そのうち、コラムのあらすじを投げたらいい感じに仕上げてくれるようになるかもしれません。

で、アドバイスの最後に「コラムの成功を祈っています!」って言ってくれました。応援してもらえると嬉しい。

ChatGPTに同じ質問をした結果の方が、より参考になるアドバイスだと思いましたが、成功は祈ってくれませんでした。

まだ対話を始めたばかりですが、Geminiくんは、ちょっとおくびょうなほど慎重で、相手のことを気遣える性格だと感じました。

近いうちにモバイルでも対話できるようになり、Gemini AdvancedユーザーであればGemini for Workspaceも使えるようになります。Gmailの送受信メールからタスクを作成してToDoリストにしてくれたり、ばらばらになっている1つのテーマに関するメールの情報をまとめてくれたりするそうなので、使うのが楽しみ。

そうしたデータがすべてGoogleに集められ、Geminiとのやり取りはGoogleの中の人が見る可能性があるとしても、使ってみたいです。

※なお、Googleは2月15日(米国時間)Geminiのバージョン1.5を発表しましたが、本記事はそれ以前に執筆したものです。Gemini 1.5についての解説は生成AIウィークリーの最新記事をどうぞ。


《佐藤由紀子》

佐藤由紀子

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