M3搭載のMacBook Airが発表になった。手元に15インチ版MacBook Airの実機が届いているので、ファーストインプレッションをお届けする。
といっても、デザインなどの変更はなく、プロセッサーがM2からM3に変わったのが主な進化点だ。すなわち「速くなった」の一言である。
ただ、それだけ終わってもつまらない。
そこで、M3のプロセッサーとしての特徴を考え、普段とは違う視点で考えてみよう。
それは「Macでゲーム」だ。
■性能はGPUを中心に向上
Appleシリコンは優秀だ。2020年登場のM1も、いまだ十分な性能を持っている。「コアなプロフェッショナルワークでなければ性能は十分」という意見もあるだろう。筆者もそう思う。
特に今回のモデルは、デザインをほとんど変えておらず、プロセッサーだけの変更に見える。
キーボードなどのデザインも変更なし
左側にMagSafeが1つと、USB-C端子が2つある
ただ、時期に応じてプロセッサーは変わっていくものなので、これから買うならM3が基本になる。高性能であるほどOSのサポートも含め「長く使える」わけで、それ自体悪いことではないと思う。
そこで課題になるのが「じゃあ、M1以降の世代からの進化はどこか?」という点だ。
以下は「GeekBench 6」でのCPUベンチマークについて、以下の3機種で比較したものだ。
・MacBook Pro(13インチモデル・M1搭載/メインメモリー16GB)
・MacBook Pro(14インチモデル・M3 Pro搭載/メインメモリー18GB)
・MacBook Air(15インチモデル・M3搭載/メインメモリー16GB)
プロセッサーの種類が異なるが、メインメモリーの量はほぼ同じである。
確かにM3世代は速くなっており、M3 ProとM3の間に明確な差があるのもわかる。
一方で、M3世代とM1とではCPUの速度アップ以上にGPUコアの性能向上が大きく、ベンチマークの数字が上がっているのもわかる。
■GPU性能をゲームでチェック
「いやいやそんなことを言っても、そこまでクリエイティブな仕事をするわけではないし」
そんな風に思う人もいるだろう。
GPUは別に、CG制作や動画編集などのクリエイティブワークのためだけにあるのではない。むしろわかりやすく効いてくるのは「ゲーム」だ。
そこでここでは、2本のMac用ゲームを使って比較してみたい。
1つはコジマプロダクション作品としてお馴染みの「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」。1月にMac/iPhone/iPadで動作するバージョンが発売されたので、それを使う。
次に、エレクトロニック・アーツのレースゲーム「GRID Legends」。Mac版は2023年12月に提供が開始された。
どちらもPCやゲーム専用機にも出ているタイトルだ。
グラフィック設定は全て「最高」のものにしつつ、表示解像度は1920×1080ドットもしくは1200ドットに設定して、Metalのパフォーマンスをチェックする特殊なコマンドを使ってフレームレートを確認しつつ、ゲームの冒頭をプレイしてみた。
結果はシンプルだ。
M3 Proが一番優れているのはもちろんだが、M3とM1の差はかなり大きかった。
「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」の場合、M3 Proでは60から70fpsを維持するが、これがM1になると30fps前後に落ちてしまう。
だがM3だと、同じシーンで53から55fpsで、ゲームとしての感触はかなり維持される。
「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」での結果。順に、M1・M3 Pro・M3。M3とM1の差がかなり大きい。
「GRID Legends」の場合では、M3 Proで60fps前後の場面で、M1は15から20fpsになり、ゲームとしては苦しくなる。M3でも厳しいのだが、25から30fps前後で多少マシになってくる。
「GRID Legends」での結果。順に、M1・M3 Pro・M3。M3 Proが突出して良いが、M3でもゲーム感覚は維持されている。
高価なM3 Proで高性能なのは重要な話だ。一方、M3でもM1に比べ顕著な性能アップとなっているのは重要である。
なにしろ、テストに使ったMacBook Airは「ファンレス」なのだ。薄型・ファンレスの「日常的に使うMac」で、ちゃんとゲームが動くようになっている点は注目に値する。
今回は時間の制約が厳しく、何時間かプレイして「熱による影響」がどうなるかまでは確認できていない。しかし、ここまでのテストは「最高設定」画質で行っている。設定を少し緩めれば、より処理にも余裕が出てくるだろうし、熱の影響も小さくなるだろう。
■Macのゲームはこれから増えるのか
熱心なゲーマーなら、ここでツッコミを入れたくなるだろう。
「でも、ゲームはWindowsやゲーム機で先に出る。Macはまだ追いついていない」と。
それはまったくその通り。テストに使った2つの作品も、Mac版としては比較的新しいものだが、PCでは1、2年前の作品でもある。
「ゲームのためにMacを買いなさい」とは言わないし、そうしない方が良い。とはいえ、App StoreでもSteamでも、Mac版の扱いは増えてきた。
昨年多数のアワードを受賞し、大ヒットになった「Baldur's Gate 3」もMac版がある(ただし、昨年末までは日本語で遊ぶために多少作業が必要になった。現状のアップデートでどうなったかは確認できていない)し、他のゲームも、「PC版を買っていたらMac版が追加されていた」というパターンが少なくない。
なにより、ファンを盛大に回さず静かな環境でゲームができるのが大きい。特にファンレスのMacBook Airはそうだろう。
M3搭載MacBook Airの価値は、その辺も頭に入れて考えてみてほしい。