車の買い替えを余儀なくさせた「カーナビのサ終問題」と今どきの「売り方」「買い方」(西川善司のバビンチョなテクノコラム)

テクノロジー Mobility
西川善司

テクニカルジャーナリスト。東京工芸大学特別講師。monoAI Technology顧問。IT技術、半導体技術、映像技術、ゲーム開発技術などを専門に取材を続ける。スポーツカー愛好家。

特集

「西川善司の日産GT-Rとのシン・生活」という車関連の連載をITmediaで持っていたが、担当編集者がテクノエッジに移籍してしまい、同誌での連載継続が"うやむや"になってしまったので、テクノエッジのこのバビンチョコラムの方で、時々、その続きをやらせてもらうことになった。

そして、最近、自分のカーライフにちょっとした動きがあったので、今回のバビンチョ・コラムのネタにさせていただくことに。

本連載「バビンチョなテクノコラム」は、第1回の挨拶パートでも触れていたように、テクノロジー(技術)とかテクニックに関連していれば「ネタはフリージャンル」でやっていく……としているので、テーマは筆者の関心事に「ランダムに飛び火」(≒バビンチョ)するつもりであった。


ただ、第1回と第2回が、比較的、コンピュータ寄りのテーマが続いてしまい、「バビンチョ要素」不足が甚だしくなってきたので、今回は、筆者の大きな関心事の1つである、自動車関連の話題を今回取り扱うことにした。


筆者の愛車遍歴

まずは、今回がITmedia時代の「西川善司の日産GT-Rとのシン・生活」の「精神的続編」ということもあるので「そのあらすじ」を軽く紹介したい。

筆者は、スポーツカー好きで、ボディの左右にドアが1枚ずつついた、いわゆる2ドア・クーペの車しか、所有したことがない。

1台を所有すると車検を3回パスするくらい乗るので(例外はあったが)、まあまあ長く乗る方だとは思う。

人生初のマイカーは、大学生の時に購入したホンダの「プレリュード Si VTEC」(BB1型)。父親がホンダ勤務だったので(現在は定年退職)、父親名義で社割で新車を安く購入。ただし、筆者は高校生のときから、市販ゲームの移植業務を行ったり、パソコン誌でも記者デビューをしていて、学生にしては稼いではいたので、完全自腹で購入している。この車は7年乗った。

▲筆者の最初の愛車、ホンダ「プレリュード Si VTEC」(BB1型/5MT/前期型)。ホンダのVTECエンジンにより2200ccエンジンで200馬力を発生していた。当時の前輪駆動車としてはかなりのハイパワーモデルだった。デジカメ以前の時代のため、愛車の写真は見つからなかったので広報素材から

続いて、自分をサーキット走行に取り憑かせてくれたマツダのRX-7(GF-FD3S/5MT/6型)に乗り換えた。パワー的には無理なく乗れる340馬力くらいのブーストアップ仕様だったが、エンジンを3基載せ替えるくらいには走り込んだ。10年乗った。

▲派手さはないが一通りいじった筆者のRX-7。エアロはマツダスピードのRスペック仕様。今見ても、愛車歴一位のかっこよさだと思う

その後、仕事で日産GT-Rの元開発責任者の水野和敏さんを取材したことがきっかけで、2012年に日産GT-R(Pure Edition)を購入。当時はまだギリギリ900万円台で購入出来た。水野和敏さんが2013年に退社するということで、水野モデルの最終型、2013年モデル(Black Edition)に入れ替えた。

結局、GT-Rは9年乗った。購入後、Car Watchで始めたGT-R関連連載は、よく読まれた。

▲日産GT-Rの購入は、水野和敏さんへの取材がきっかけとなった。これは購入後に愛車を見ていただいているところ

▲GT-Rは2012年に購入したものを、1年で売却した。エンジンルームには水野氏にサインも頂いた。フロントバンパーはあえてボディ同色塗装。なんと筆者のGT-Rは、2024年モデルと同等の配色を12年前に先取りしていたのだ(笑)

 GT-R1台体勢だと、普段使いが大変だと感じて、その後、ホンダS660(グレードα/5MT/前期型)を増車した。

▲筆者のS660。無限とS660.COMのミックスエアロ構成。ブーストアップによる80馬力仕様。普段使いのメイン車として活躍していたが、1年に一回ほどは筑波1000でエンジョイ走行。馬力もないので、RX-7の時のような無理はしないスタイル

そして、2021年には9年乗ったGT-Rとお別れし、2022年モデルのGT-R nismo Special Edition(SE)へと乗り換えた。その経緯についてはITmediaの方の連載「西川善司の日産GT-Rとのシン・生活」を参照して欲しい。

ところで、近年は、日産GT-Rにおいては新年次モデルが出るたびに抽選販売となってしまって久しいが、抽選が始まったのは2022年モデルの「T-SPEC」からで、それより先行して2021年5月にオーダーが始まった2022年モデルのnismoと、同SEにおいては抽選制度がなく、普通にディーラーで先着順でオーダーが購入ができたので、実に平和だった。

さて、筆者にとって、2022年にGT-R nismo SEが納車された後は、カーライフ的には平穏な毎日を送れていたのだが、2023年後期のある日、筆者の耳に「筆者にとっては衝撃的なニュース」が飛び込んできたのである。

S660を売却することになった経緯:カーナビのサービス終了と3G停波

それは、筆者が、日々の足や、そして都内での仕事の際に使っているS660に搭載しているカロッツェリア(パイオニア)のカーナビ「AVIC-MRP660」(2015年発売モデル)についてのニュースであった。

AVIC-MRP660の製品サポートが、ついに2025年春に完全終了してしまうというのだ。

S660には、センターコンソールに2DINスロットがなく、一般的な市販ナビを入れることができない。そこでダッシュボードの上に置く、オンダッシュ型しか選択肢がなくなるのだが、筆者が使っていたAVIC-MRP660は、オンダッシュタイプの小型カーナビにもかかわらず、機能面は上位機の「楽ナビ」ゆずりで、車速パルスが入力可能な高機能ナビだったのだ。

筆者は山奥に釣りに行ったり、高層ビル地帯やトンネル内走行の多い都内によく出掛けるので、GPS情報が取りにくくなった途端に機能を放棄するスマホ・ナビではダメなのだ。

AVIC-MRP660は、GPS情報が取れなくなっても、車速パルスを用いた、かなり高精度な自車位置を割り出し続けてくれるし、また、交通情報サーバとリアルタイム通信を行って広域な交通情報を取得してリアルタイムな最速リルートを行ってくれる「スマートループ」機能にまで対応している。筆者が使用しているAVIC-MRP660は、この「スマートループ」機能にドコモの3G回線を使っており、この回線が2025年春には停波するので、この「スマートループ」機能も使えなくなってしまう。

しかし、カロッツェリアは、この小型ナビ製品ジャンルからの撤退を2016年に表明しており、事実上、AVIC-MRP660がラストモデルとなっていたのであった。AVIC-MRP660に匹敵するほどの高機能なオンダッシュ・ナビは2024年には他社にも存在しない。

助手席のグローブボックスを潰して、市販の高機能な2DINナビを入れる、ユニークなアフターパーツも出てはいるが、ナビの設置位置として助手席方面は少々遠すぎるし、取材時には大きなカバンを助手席に置く筆者のS660の使い方には合わない。

そう、S660はミッドシップ車両なので、後ろにはエンジンが搭載されており、トランクスペースはなし。荷物置き場は助手席しかないのだ(笑)。

そんなとき、別のニュースも舞い込んできた。

S660は2022年春に生産が終了しており、直後の「S660ロス」に起因した、高騰バブルは弾けたものの、2023年後期には、中古市場はそこそこの高値で安定していたのだ。

「であれば、ちょっと興味本位で査定してもらおうかな」……そう思った筆者は、とある業者にコンタクトをとるのであった。

それは、YouTubeでも大人気の「トラスト企画」である。

▲トラスト企画のホームページ。スポーツカーの買い取りを得意としている中古車事業者。パーツ販売も人気

トラスト企画のYouTubeチャンネルでは、同社が買い取ってきた中古車の徹底レビューがあったり、どういう中古車が高額買い取りとなるのか……の「売り方講座」があったり、悪徳中古業者の闇を暴く世直し系の社会派のネタもあったりと、普通に面白いYouTube番組を日々提供しており、筆者は、まさにかじりついて見ていたファンなのであった。

番組ホストのセクハラ大魔王の異名をとる同社の名物社長「みぃくん」(愛称)が、画面内を暴れ回る姿は、まさに「全方位に昭和テイスト」全開。筆者のような「クルマ好きおじさん」を元気づけてくれるのだ。

普段はシンプルに同社のYouTube番組を普通に楽しんでいる一視聴者の筆者だったが、まあ、どうせ見積もりをとってもらうならば、こちらからの一方的な親しみがある、トラスト企画に打診してみようかな、という気になったのであった。

やりとりは、電話ではなく、トラスト企画のホームページに掲載されている「査定受付LINE」を利用した。

トラスト企画をLINEで友達登録して、あとは、相手への挨拶と、こちらの車の写真を十数枚添付し、そらに車の仕様を書き込んで転送。その日のうちに概算の見積もりが届いた。

こちらが想像していた見積額だったので、その後、本査定を打診。その約1週間後、自宅での出張見積もりをしていただいた。こちらが所有していたS660用パーツ類もまとめて一括査定していただき、結果的に、当初の概算見積もりにプラス5万円をしてもらえて、売買契約を締結。

▲中古車業者系YouTubeの中でも屈指の人気を誇るトラスト企画のYouTubeチャンネル。名物社長みぃくんによる、コンプライアンスぎりぎりきアウト!?なセクハラトークも大人気(最近は自重気味?)。視聴者は筆者世代のおじさんばかり

トラスト企画は、他の業者だと無料でも引き取ってすらもらえない、元々ついていた純正パーツ類、予備で購入していた純正/社外パーツ類などにも値段を付けてくれるのが特徴。まぁ、パーツに対する査定は、結構ざっくりした感じだったので、単品売りした方が値が付くことが確信できる品目は、各自で個別売却した方がいいかもしれない。ただ、一般的なショップでは、ほとんど値がつかない、その車に元々ついていた純正パーツなどは、積極的に一緒に査定してもらった方がいいと思う。

▼売却時の様子

最終査定額はいちおう伏せておくが、2015年式の走行3万3000kmのS660に対して、新車価格の約75%以上の値段がついたので(一緒に抱き合わせ売却したパーツ類の価格も合算しての査定額)、まあ、相場よりはお高めな値段で買い取って貰えたのではないかと思う。

▲さよなら。S660。名残惜しいがさらばだ

次の車はどれにするか

無事、S660を売却できたところまではよかったが、今度の悩みごとは次なる車をどうするか……という方に移る。

S660と共に過ごした8年間を振り返れば、S660は、ちっこくて小回りも効いて取り回しがしやすく、都内もすいすい走れる車だっだので、走りの面では100点満点だったように思う。しかし、荷物かとにかく載らない車で不便なところもなくはなかった。

というわけで、これを踏まえ、S660にかわる車は、トランクがある車にしよう……と決心した(笑)

そして、さらに思い返すと、一度もS660をオープン状態にして乗らなかったことにも気が付いた。

筆者はS660を納車後、すぐにハードトップの屋根にしてしまったので、S660をオープンカーにしたことがなかったのだ。今後も「オープンに出来たとしてもオープンにすることがない」自信はあったので、オープンカーを候補から除外した。具体的には、マツダ・ロードスターやダイハツ・コペンは候補から早々に外した。

もうこうなると、国産車括りでは、筆者の好きな2ドアの車は残り少ない。

ちなみに、筆者は、今回の普段乗りの車に関しては、外国車は最初から候補に入れなかった。

というのも、外国車の純正カーナビの使い勝手が「相応に悪い」と、筆者の友人達から散々吹き込まれていたことまず理由の1つ。

そして、日本メーカーのOEM供給のカーナビを搭載している外国車も多いが、完全に独立した日本製カーナビ・ユニットを、車体側の純正ディスプレイオーディオにHDMIとUSBで接続するタイプが多く、そうしたモデルの場合、ユーザーインタフェースが拷問クラスにひどい(タッチ入力画面にディスプレイオーディオのメニューが重なる……など)と聞いていたのが2つ目の理由だ。

まぁ、実際には、単純に外国車は高いから遠慮しただけなんだけれども(笑)

で、国産車だと他には、トヨタ・GRスープラ、日産・フェアレディZがあるが、高級車過ぎて、手を出しにくいと感じたので除外。レクサスのLCやRCも同様。そもそもフェアレディZは発売以来、2年ずっとオーダーストップだから買えないし(笑)

というわけで、GR86かGRヤリスで悩むことに。

GRヤリスは2024年3月に行われたモデルチェンジに伴ってさらに高性能化し、価格も50万円近く値上げとなった。6速マニュアルモデルはついに約500万円になってしまった。300馬力オーバーの高性能車とはいえ、排気量1.6Lの車にしてはちょっと高すぎる。もちろん、GRヤリスに搭載された「GR-FOUR」という名のハイテク四輪駆動に興味はあったが、そっち方面はGT-Rで楽しめばいい……と自分を納得させて候補から除外した。こちらも、本音としては「お高いから」が一番の理由ではある(笑)。

▲GRヤリス

話の流れで書くと、消去法でGR86になった感じがするが、実は、結構前から、心はほとんどGR86に決めていた。

シンプルで端正なお顔。流麗なボディライン。ポルシェと同じ水平対向エンジンという共通点にも興味があるし、独特なエンジンサウンドも楽しみだ。寸法的には、かつて所有していたRX-7とほぼ同じくらいなので、取り回しも悪くなさそう。

ノンターボ(NA)の排気量2.4Lのエンジンは235馬力で必要十分。ハイパワーを楽しみたければ、GT-R nismo SEで楽しめばいい。

トランクスペースは後部座席を倒せばかなり広く使えそうなので、買い物に使ったときは、荷物もバッチリ載せられそう。

価格も、このクラスのスポーツカーにして新車で約300万円から……というのはお買い得感がある。筆者はボディカラーは必ず赤にしているのだが、カタログを見る限り、赤色が合いそうなことも確信出来た。

最大の勘所、カーナビについても、GR86は標準仕様でオーディオレスという点もいい。今どき珍しいともいえる。実は、GRヤリスはディスプレイオーディオが強制搭載なところにも意気消沈したのであった。調べて見たら、GR86には、筆者が気に入っているカロッツェリアの楽ナビの最大画面サイズ、9インチモデルが搭載でき、さらに純正ハンドル上のボタン類で、ナビ側の各種機能を制御することにも対応しているとあった。

キマリである。

▲GR86

 GR86と兄弟車のBRZについては、見積もりにも行ったが、GTウィング以外のエアロパーツが、GR86の方が好みだったので、最終的には候補から外してしまった。

販社系列ありすぎのトヨタ・ディーラー

そして、最大の課題が「どこで買うのか」だ。

筆者が住んでいる埼玉県には、トヨタ系の自動車販売事業社の系列がたくさんあり、列挙すると、

・埼玉トヨタ
・トヨタカローラ埼玉
・トヨタカローラ新埼玉
・埼玉トヨペット
・ネッツトヨタ東埼玉
・ネッツトヨタ埼玉

これはそれぞれ別会社なので、埼玉県の街には、この6系統の販社がトヨタ車のディーラー業務をやっているのだ。

それこそ、誇張なく、埼玉県の幅広な国道を走っていると、コンビニや飲食チェーン店に近い頻度でトヨタディーラーに遭遇する。でもよく見ると、掲げている看板が違うので、経営的にも全く別のディーラーなのだ。

ここまで乱立しているのであれば逆に面白そう……ということで、あえて上記6社、全ての販社の系列ディーラーでGR86の見積もりを同じ仕様でとってみた。

同じ仕様にもかかわらず価格が店舗ごとに違いが。詳細は省くが、車本体に関わる値段はディーラーごとに差異はなし。差異があったのは、値引き額、ディーラーオプションの取付費用、ローン購入の際の金利など。

値引きはなしのところもあれば、最大で10万円のところもあってまちまち。あるディーラーの営業マンは「既に見積もりを他でもらっているならば見せてください。それよりも着実に安くします」といってくれた。スポーツカーは平常、ほとんど値引きがないものだが、訪れたのが3月の決算期ということで、営業マンにも気合が入っていたのかもしれない。

ローンの金利については5%が最安。7.5%が最も高かった。ローンはトヨタ系列ファイナンス会社一択で、一般的なローン会社や銀行系ローンは選択出来ず。

ディーラーオプションの製品単価に違いはないが、その1時間あたりの取り付け工賃単価に違いがけっこうあった。今回筆者はオプション多めで見積もりをもらっていたので、最高額と最安値とのディーラーでその価格差総額は約10万くらいにもなった。

結論としては、見積もりは、欲しい車がトヨタ車であるときは、全ての系列店で見積もりはとって損なし……ということだと思う。

参考にして欲しい。

ではどこで契約したのか

今回、筆者はGR86に対して、取り付けたいこだわりのオプションがあった。

パワーについては235馬力もあれば十分すぎ。ただ、ブレーキは強化したかった。

GR86に近いボディサイズと車重のかつての愛車、RX-7は純正状態でフロントブレーキは対向4POTブレーキだった。

対して、GR86の標準ブレーキシステムは純正状態ではフロントが1POTの片押し式で、GR86の運動性能を考えると、対向4POTブレーキは欲しい……。筆者はそう考えていたのだ。

実際、2023年にマイナーチェンジした現行型GR86は、ブレンボ製の対向4POTブレーキがオプション設定されるようになった。

これだ! と思うも、このオプションは、2023年末の時点で既にオーダーストップとなっていたのだ。出遅れた!。でもメーカーオプションでオーダーストップ…ってなぜ?(笑)

このことについては、とあるトヨタ関係の事情通に聞いてみたところ、GR86のブレンボ製対向4POTブレーキは、2023年秋に行われたマイナーチェンジ時に新設定されたオプションだったのだが、仕様発表後、一悶着あったらしいのだ。

具体的には、優良誤認させるような誤記がカタログにあることが発覚し、コミュニティで軽く炎上したというのだ。それは「ブレンボ製モノブロックブレーキ」という記述。紙のカタログの方は、いまだにその記載のままだが、Webカタログからはその記載が削除されている。筆者がもらったカタログを確認したところ、「別紙の正誤表」が付属していたものと、していないものがあった。

要するに、結論としてはメーカーオプションのブレンボ製ブレーキはモノブロック構造ではなかったということだ。その事情通の方が言うには「まぁ、そんなこともあって、当初よりも数量を絞って意図的にオーダーストップにしたのではないか」ということだった。

信じるか信じないかはあなた次第といったところだが、筆者は、そうであれば、と、以前から、ブレンボではなく、トヨタ(GR)純正品としてラインアップされている「GRモノブロックブレーキ」のオプションを選択することに。

▲紙のカタログにはいまだに「モノブロック構造」と書かれたまま。Webカタログにはこのあたりの記述がこっそり削除された。また、よく読むと、中盤には「モノ"グ"ロック構造」という誤記もあったりしてちょっと奇妙。このブレーキのメーカーオプションについては、2023年末の時点で早々にオーダーストップが掛かった(ディーラーの方によれば事実上の終了になりそう……ともいわれている)

しかし、このGRモノブロックブレーキ。専用の19インチ・ホイール/タイヤと抱き合わせ販売となっていて、そのホイールが66万円もするのだ。筆者が訪れた全てのディーラーの見積もり用端末からは、単体でオーダーすることができなかった。

ただ、このブレーキオプション。純正の18インチホイールでもクリアランスが10mm以上あって余裕で履けることがGR86ユーザーや一部のGRガレージで履けることが確認されているそうで、なんとも悔しいことである。

ディーラーの説明は「車体の個体差によってクリアランスが微妙に変わるので、トヨタ基準では10mm前後のクリアランスはよしとしなかったのでしょう」というものであった。

▲GRモノブロックブレーキキット。これは本当にモノブロック構造のキャリパーである。製造元はADVICS

 別にブレーキキャリパーはモノブロックじゃない2ピース型でも性能はあまり変わらないので、どっちでも良かったのだが、オプションとしてはこれしか設定されていないので仕方がない。社外ブレーキキャリパーは、前後の"効き"バランス取りが難しいので純正オプションが一番だ。

筆者はRX-7時代に、AP RACING製のお高いモノブロックキャリパーを付けていたが、"前効き"が強すぎて乗りにくかったので、それ以降、社外品に手を出すのをやめている。ちなみに、この時は前輪ブレーキパッドのμ値を下げてブレーキの効きの前後バランスをとっていた。

それと、GR86に純正設定されているGTウィングは、その取り付け方とデザインがあまり好みではなく、むしろ、GTウィングについては、兄弟車のBRZの方に設定されているものの方が好みであった。

これ、リア周りのボディ形状については、完全にGR86とBRZは同一なので、BRZ用のGTウィングは取り付け可能なことが分かっている。実際、BRZ用のGTウィングを付けているGR86オーナーも少なくない。しかし、これをトヨタのディーラーでオプションとして発注することは当然、できないのであった。

▲GR86にトヨタが純正設定しているGTウィング

▲BRZにスバル/STIが純正設定しているGTウィング。個人的には、シンプルなスタイルのこっちのほうが好み

新車のGR86。スーパーオートバックスで買うことにしました

そんな最中、RX-7時代からお世話になっている、近所のスーパーオートバックス大宮バイパス店に、別用で立ち寄ったときに、ふと見た店内ポスターで思いだしたのだ。

「あー、オートバックスで新車って買えるんだっけ。利用したことないけど、見積もりだけとってみるか」

オートバックスで新車が購入できる

スーパーオートバックスでも同様に新車の購入が可能

新車販売担当者に聞いてみたところ、「国産車であれば、マツダの一部の車種以外は購入出来ますよ。GR86も普通にいけます。」という説明。おそらく、抽選販売のような希少車(GT-RとかフェアレディZ)、限定車(GRヤリスのスペシャル版とか)も無理のようだ。しかし、GR86は普通のカタログ車種なので問題なしというわけである。

ファームウェアのアップデートとか、リコールとかの情報が、ちゃんとオートバックスにも届くのか不安はある。これについて聞いてみたが、特に問題ないという回答。一部の作業自体はディーラーに行ってやってもらうことになる可能性もあるが、そうした重要な案内は自動車メーカーや国交省からオートバックス側かオーナーに通達/案内があるそうだ。

ディーラーでよくやっている、1万円から2万円程度の保険金で入れる新車延長保証のようなものがあるのかも聞いてみた。こちらは(スーパー)オートバックス側で入れる保証が設けられており、メーカー保証(3年や5年)に1年から3年までをプラスすることが出来る追加保証プログラムがあるという。

ということで、見積もりの本題に入ろうとしたところ、担当者の方から「ディーラー巡りでもらった見積もり書で、一番、条件の良かった見積もりを見せてください」と言われ、見せると、うちもこの条件で行けますよ、との返しが。

さらに「メーカーに設定されていないオプションとか、社外パーツもローンに組み込むことができますよ」との悪魔のささやきまで!

▲筆者がお世話になったスーパーオートバックス大宮バイパス店。新車の購入出来るかどうか、また金利などの条件も店舗によって異なるので、興味がある人は、最寄りのオートバックス店舗で聞いてみよう

ここで長々と前述した「GRモノブロックブレーキを単品でパーツが取れるか」「BRZ用GTウィングをオプションに組み込めるか」といったあたりを聞いてみたところ「全部いけます」と神々しい一言をもらえた(笑)

「やったー。イェイ」と心の中で叫んだあと、筆者は、ニヤニヤ顔でカロッツェリアのカーナビを初めとして、ディーラーでは一緒に注文出来ない、欲しいオプション品を追加していくのであった。

購入リストに入れたオプション群の詳細は納車時に改めて紹介したいと思うが、ブレーキとウィング以外で「おもしろ目なところ」を挙げると、

(1)スバルBRZ用のバックカメラ
(2)プロテクションフィルム(フロントバンパーとボンネット)

などがある。

バックカメラは、GR86用のものもトヨタから純正オプションとして設定されているが、GR86のボディ後面に開けられているカメラ取り付け用の開口部が丸い穴になっており、四角い形状のトヨタ車向け汎用品としてラインアップされているトヨタ純正カメラのだと隙間が空いて収まりが悪いのだ。

GR86ユーザーの間では、この話は結構有名らしく、GR86オーナーの間では率先して、スバルBRZ用の丸いボディのバックカメラを選択するのがトレンドらしい。ということで、筆者もその情報にあやかることにした。

ボディコーティング施工はディーラーでもローンに組み込めることが多いが、プロテクションフィルムの施工は無理なディーラーが多い。自分が利用しているスーパーオートバックス大宮バイパス店では、自社板金部門が敷地内にあるほか、Keeper Pro Shopにもなっているので、そんなことができるのだ。

自分は、首都高をよく走るためか、S660は、結構飛び石を喰らっていたので、フロントバンパーとボンネットだけはプロテクションフィルムを貼ることにした。ボディコーティングでは、飛び石は絶対に防げないので、コストは掛かるが、かわいい愛車のために施工を決断した。ちなみに、それ以外の部位は普通のボディコーティングを行うこととした。

▲GT-R nismo SEには、奮発して広範囲にプロテクションフィルムを施工したが、GR86に対してコスト削減でフロントバンパーとボンネットの2箇所に留めることに

それとお得情報をもう一つ。

オートバックスでは、用品を購入した際にTポイントがつけられるのだが、なんと、新車購入時にもポイントがつくのだ。といっても、車両本体購入分にはつかない。付けてもらえるのは、オプション品の購入分に対して。これもディーラー購入時にはないメリットだろう。

ということで、ここまで来れば、スーパーオートバックスでのGR86の購入意思も完全に固まってきていたので、筆者は、今回のGR86の購入に際して、S660を売却した代金と、貯金を合わせて、250万円の頭金が用意出来ることと、残りはローンで支払いたいという旨を伝え、金利を聞いてみた。

すると「その返済計画だと3.9%になります」という返答が。トヨタのディーラーが全て5%~7.5%だったことを考えるとかなり魅力的。

銀行のマイカーローンの中には2%前後からそれ以下のものもあるが(常陽銀行などが有名)、ローンの適用先が車両本体に対してのみ…となっているところが多いので、オプションパーツまでローンに組み込めるこの条件において、この金利は悪くないだろうと、判断した。さらに、車両に対してはディーラー見積もりでの最高額の値引きと、オプション品に対してもそこそこの値引きをしてもらえた。

ということで、すぐに簡易的なローン審査に進むことに。

これも10分掛からないで審査が完了。OKがもらえた。

かくして筆者は、スーパーオートバックスでGR86の新車購入を契約したのであった。

▲後日、再来店して正式な契約書にハンコを押す瞬間

まるで、今回は、トラスト企画とスーパーオートバックスの案件記事のようだが、実際には、筆者の2024年3月の奮闘記のようなものである。ああ、疲れた。

新車を購入する際の参考になれば幸いだ。

なお、筆者のGR86は、早ければ7月の納車になるそうだ。2024年2月にGR86/BRZなどを製造するスバル群馬工場で起きた重大人身事故の影響や、部品等の納期遅延の影響などによって、9月くらいにまで伸びる可能性もあるという。

納車時には、また、続報をお伝えしたいと思う。

《西川善司》

西川善司

テクニカルジャーナリスト。東京工芸大学特別講師。monoAI Technology顧問。IT技術、半導体技術、映像技術、ゲーム開発技術などを専門に取材を続ける。スポーツカー愛好家。

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