10周年を迎えたGoogle Homeスマートホーム、現在の立ち位置を考える(Google Tales)

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佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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Gmailが先日、20周年を迎えました。今見たら、私の最初のメールは2006年3月27日。Gmailアカウントの招待状をくださった松尾公也さん(現在の担当編集)宛てのお礼メールでした。今では約10GBのメールが溜まっています。

Googleフォトは立ち上げ当初から使っているので、10年分の思い出(約55GB)が詰まった大事なアルバムになっています。

Googleには「Google Cemetery」とか「Killed by Google」とか、ネット上に複数の「墓場」があるくらい、サービスを打ち切ることで知られています(他の企業だって結構打ち切ったり企業自体がなくなったりしてますが)。

企業にとって、新しいサービスに経営資源を集中することは重要です。特に、Googleとしてはちょっとスタートで遅れてしまった感のある一般向けAIのように、開発にも維持にもお金がかかるサービスに集中するためには、収益性の低いものは撤退せざるを得ないというのが実情でしょう。

GmailとGoogleフォトがサービス終了したら恐ろしいですが、GmailはGoogleの主な収益源である広告に役立っているし、Googleフォトは(ユーザーに黙ってAIの学習に使うことはないとしていますが)何らかの形でAI開発の役に立っていそうなので、これらが墓場行きになることは当面はなさそうです。

自分が使っているGoogleサービスの中で、今一番心配なのは、「Google Home」のスマートホーム製品群です。

▲Google HomeのWebサイト

Googleのスマートホームの始まりは、2014年のNest Labs買収からと言っていいと思います。Nest Labsというのは“iPodの父”と呼ばれたトニー・ファデルさんが立ち上げた“AI”サーモスタット企業です。

▲日本には来なかったNestのサーモスタットと煙探知機

NestはGoogle傘下企業として2014年中に監視カメラのDropcamを買収し、これでスマートホームの2つのアイテムが揃いました。(ちなみに、GoogleがAI企業のDeepMindを買収したのも2014年です。)

Amazonが2014年に発売したAlexa搭載スマートスピーカー「Echo」でスマートホーム事業を開始したのとは、ちょっと違う道のりですね。

Googleが「Googleアシスタント」搭載の初代スマートスピーカー「Google Home」を発表したのは2016年のことでした。「Googleアシスタント」は、今ではスマートフォンや一部の家電製品でも使われています。

▲初代Google Home

Googleのスマートホーム事業は、言ってしまえばツギハギ。スマートディスプレイやドアベルなども追加されていきましたが、ブランドのNestとGoogle Homeが並立していて、スッキリしない感じです。あ、「Android TV」と、最近とんと新製品が出なくなった「Chromecast」もスマートホームに含まれると思いますが、これはこれで名称が何度か変わったりで、私は未だに全体像がよくわかっていません(うちのメインテレビはAndroid TVサポートBRAVIAなのに)。

その後、紆余曲折あって、現在デバイス&サービス担当上級副社長を務めるエリック・オステルローさんがMade by Googleイベントを仕切るようになったころから、少しずつ整い始めました。

▲2017年にGoogle Home関連デバイスを紹介するリック・オステルローさん

スマートホームの業界標準を目指す「Matter」の取り組みに参加するなど、明るい未来が待っていそうだったのですが……。

私は家で2個のスマートスピーカー、3台のスマートディスプレイ、「Pixel Tablet」という、計6個のGoogle製スマートホーム製品を使っています。(Amazon EchoとAppleのHomePodもある。)これらは「Google Home」というアプリで管理するんですが、これがなんとなーく使いにくいんです。

▲「Google Home」アプリの操作画面

例えば、新しいデバイスを追加すると名前が追加した「部屋」の名前になるのがいつまでたっても改善されないとか、作っておいた「グループ」がいつのまにか機能しなくなっていたりとか。

そして、今年の1月にGoogleはデバイス&サービス部門で大規模リストラを実施したとの報道。OpenAIなどに先を越されたAIに注力するには選択と集中が必要だったのでしょう。

その報道と同じ時期に、Googleアシスタントの「あまり活用されていない機能の一部を削除する」という発表が。

このあたりで、次の墓場行きはGoogle Homeなのかも、という不安がもやもやしてきました。


▲Google Home、まだ墓場には行かないで~(イラスト:ばじぃ

その不安を察してか、先日NestデバイスとGoogle Homeの担当チームがRedditでAMA(Ask Me Anything)を開催しました。そうしたら900以上の質問や意見が投げかけられ、そのほとんどが苦情。読んでいてチームが気の毒になるほどです。

▲RedditのAMA

サーモスタットやセキュリティカメラを使っている人にとってはトラブルは深刻です。私の場合はせいぜい照明をオンオフしたり、食事の支度をしながらニュースを流したり(シンクに水をじゃーって流すとボリュームが自動的に大きくなるのが便利)、料理のタイマーをセットしたり、テレビを見ながら「○○って誰?」と聞いたり、グループにした複数のスピーカーで音楽を流したり、睡眠モニターしたりしているくらいではありますが、サービス終了になってしまったら、かなり困ります。

Googleアシスタント自体、Geminiに押されている感じです。かといって、リソースの問題とかでGeminiにはGoogleアシスタントの代わりはできないでしょう。

5月14日開催の年次開発者会議「Google I/O」で、少しでもGoogle Home関連の発表があるといいのですが。ほそぼそとでも続けて、せめてユーザーの不便を緩和する改善だけでもしてほしいと願っております。

……と、一旦コラムを書き終わって担当編集者に納品した翌日、GoogleさんがNestを使う新機能を発表したので、墓場行きの心配は少し緩和されたかもしれません。

まだ日本ではしばらく使えないようですが、家の中で1つのスマートスピーカーやスマートディスプレイに「ねぇGoogle、家の鍵はどこ?」と尋ねると、「みんなで探してみますね!」と答え、家中のGoogle Home端末が全員で「自分の近くにあるかなー」と調べてくれて、見つけた端末が「はーい、私の近くにありまーす」と答えてくれる、というもの(かなり大まかな説明)。これは、4月8日発表のAndroidの「デバイスを探す」アプリの新機能の1つ。部屋がいっぱいある家だったら便利ですね。

どんな形であれ、Google Homeを使う機能が追加されて何よりです。

▲「デバイスを探す」でNestたちが活躍するようです

《佐藤由紀子》

佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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