Adobeの画像生成AI「Firefly Image 3」提供開始。Photoshopに「画像を生成」追加、「生成塗りつぶし」強化など新機能を解説(西田宗千佳)

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西田宗千佳

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フリーライター/ジャーナリスト

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1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。

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アドビは、4月23日(現地時間)にスタートした「Adobe Max London」にて、生成AI「Adobe Firefly」と「Adobe Photoshop」に関する複数の発表を行った。

同社は3月に「Adobe Summit」で生成AIがらみの機能アップを発表したばかりだが、今回は静止画向けのモデルを「Image 3」にアップデートしている。Photoshopのアップデートも、基本的にはImage 3をベースとしたものだ。


どのような変化が起きたのか? アドビ・Photoshop製品マーケティング担当シニアディレクターのエリン・ボイス氏に話を聞いた。

▲アドビ・Photoshop製品マーケティング担当シニアディレクターのエリン・ボイス氏

Firefly「Image 3」で画質が向上

まずは以下のデモビデオをご覧いただきたい。

▲Photoshopのアップデートに関するデモ。生成AIで面倒な作業がシンプルに。

このビデオは新しいPhotoshopでできることをまとめたものだ。Fireflyで画像を生成し、実写と組み合わせていくという手法がわかりやすく示されている。

特に注目して欲しいのは「Reference image」「Generate similar(似たものを生成)」と、最後に出てくる「Generate background(背景の生成)」機能だ。

Fireflyを使って画像を作ることはできる。一方で、そこから「自分が求める結果」を得るのは簡単ではない。プロンプトを工夫するのが一般的だが、思った通りのものを作るのは意外と大変だ。

Firefly自体も、3月の「Adobe Summit」、そして今回の「Image 3」で、より「思ったものを作る」方向での改良が進められている。

Fireflyはその中で、扱う内容によって「Video」「Text」などのようにモデルを変えている。

もっともベーシックな、テキストなどから画像を生成するモデルが「Firefly Image」。昨年3月に「Image 1」が、11月に「Image 2」がリリースされ、5か月ほどで「Image 3」へと刷新されることになる。もちろん日本語にも対応している。

Image 3に進化したことによる大きな変化点は「生成される画像のリアリティが上がること」だ。より写実的なものが描ける、と言ってしまえば話は単純なのだが、複数の要素でアップデートがなされている。光の当たり方の表現はもちろん、ギターの構造やカーボンの質感など、細部の表現が特に大きく改善されている。

▲Image 3での出力例。人の表現はもちろん、背景まで緻密でもう写真にしか見えない

▲同じくImage 3の出力例。ブラインドから漏れる光が顔に落ちる様が正確に再現されている

▲Image 2とImage 3の比較。グダグダになりがちなギターやカーボンなどの「細かい構造」の描写も、ちゃんと正確に行える

さらに、「創作」の手間と試行錯誤を楽にするアップデートが、特定のイメージを「リファレンス」として映像を作るやり方である。

以下の画像はImage 3モデルで「構成参照」を使って描いたものだ。リアルであり、同じ構図・モチーフを使っているが、表現自体は違う。

▲「構成参照」で描いた例。突進してくるゾウ、というモチーフも構図も同じだが、表現は大きく変えられる

「スタイル参照」を使うと、スタイル自体をさらに変えて画像を作れる。

▲画像のスタイル自体をさらに大きく変えることも可能

道具としての「フォトショ」を生成AIでさらに進化

こうしたことは、当然ながらPhotoshopでも役にたつ。ボイス氏は「Photoshopの生成AI関連の新機能は、基本的にImage 3を使っている」と話す。

冒頭の動画にもあった「Reference image」「Generate similar(似たものを生成)」「Generate background(背景の生成)」などは、Image 3への進化を生かした事例と言えるだろう。

「Reference image」を使うと、画像の一部を生成する場合、リファレンス画像の持つ質感や形状を生かしてイメージを作れる。従来同じことをするなら、トレースしながら手書きするか、カスタムブラシ機能を使ってパターンを描くか……というテクニックを使う必要があったが、Fireflyを使うことで簡単に再現できる。

▲「Reference image」の利用例。宝石のついたネックレスのイメージを参照し、生成AIで「宝石でできた蜂」の絵を作れる

「Generate similar」は、生成したものからさらに「もっと良いもの」を作るのに使える。

アドビは生成AIで画像などを作る際、3つのバリエーションを同時に提示する。そこから求めるものを選ぶわけだが、「Generate similar」を使うと、選んだものからさらにバリエーションを生み出していける。プロンプトの試行錯誤によらずこういうことができるのは、確かに便利だろう。

▲「Generate similar」の例。生成した画像の中で気に入った部分を活かし、バリエーションを作っていってさらに求める画像へと近づけていく。

現実問題として一番便利なのは「Generate background」だろう。

PhotoshopにはAIを使った「オブジェクト選択」という機能がある。昔なら手作業で選択範囲を作っていたが、今はAIである「Adobe Sensei」を活かし、選択したい物体をワンクリックで選べるようになった。

そうした機能の延長線にあるものとして、今回の新バージョンで登場したのが「Generate background」。要は選択したオブジェクト「ではない」部分を背景とし、背景を生成AIで作って入れ替えるものだ。

▲「背景の生成」の例。商品画像などの背景を自然な形で入れ替えるのは大変だが、この機能ならシンプルかつ一発

ボイス氏は、「Photoshopで広告イメージなどを作る場合、もっとも頻繁に行われているのが背景の入れ替え」なのだと言う。場合に応じて作り替えたい、というニーズは多いが、そのために「オブジェクト選択」を使った上で、画像合成が行われる。

今回のアップデートでは、そうした部分に生成AIを活かすことで、より簡単に作業が終わるようにしている。

画像生成AIは日進月歩。「リアルな絵を作る」「目的の絵を作る」技術も日々進化している。絵を作るというだけであるなら、アドビがFireflyで行っていることも、他のツールでできないわけではない。

だが、アドビはPhotoshopなどのツールを持っている。その中にFireflyを積極的に組み込むことで、「技術ではなくツールとしての価値」をアピールしている。

その観点で言えば、同社の戦略はAIだけを作っている企業に一歩先んじている。今後も「ツールにお金を払ってもらう」ための戦略でもある、ということだ。

編集部:Firefly Image 3 Foundation Model と新機能は、Web版Firefly およびデスクトップ版Photoshopのベータ版で、本日から利用可能になります。


《西田宗千佳》

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1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。

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