ギターのような形状ながら全く新しい楽器「インスタコード」(InstaChord)を成功させたInstaChord代表取締役ゆーいちさんが、手のひらサイズの新しいガジェット楽器「かんぷれ -KANTAN Play core-」を発表しました。
(▲画像:かんぷれ -KANTAN Play core-)
スイッチサイエンス、M5Stack Technologyなど日本と中国をまたぐ開発体制を活用したこの製品は、6月8日午前10時からKibidangoでクラウドファンディングがスタートしました(かんぷれプロジェクトページ)。
この新しい楽器には3つの側面があります。まず、使いやすい楽器であるということ。次に、DTMなど音楽スキルを持っている人にとって非常に有用なツールであるということ。最後の一つが、通常の楽器を弾くことが困難な人が演奏を楽しめるバリアフリーな楽器であるということです。
筆者はインスタコードをライブ演奏で使っており、手軽に演奏できてDTMにも活用できるということをよくわかっています。その拡張版である「かんぷれ」がその側面で非常に有用であることはすぐに理解できました。
(▲画像:InstaChordを演奏する筆者)
簡単にプレイ(演奏)できるという意味の製品名を持つ「かんぷれ」は、手のひらサイズ(ほぼゲームボーイサイズ)の、ディスプレイが付いた電卓のようなルックスです。小型ですがクリック感のあるボタンが縦横に並んでいます。
3×3に並んだキーには、左下からC、Dm、Em、F、G、Am、Bm、フラット、#の順番で並んでいます。さらに右側には~(メジャーとマイナー切り替え)、7、9、M7、dim、sus4といった記号ボタンがあります。これらを組み合わせることにより、ほとんどのコードをカバーすることが可能です。
できるだけ手数が少なくて演奏できるような工夫もされています。
例えばギターの場合は、(右利きの場合)、左手でコードフォームを押さえ、右手で上下に弦をストロークする奏法がよく使われますが、この上下を、ボタンを押して離すという操作だけで実現しています。このために、ボタンの操作感が重要になるため試行錯誤したそうです。筆者も試してみましたが、自然にギターの上下ストロークのような操作がボタンを1回押すだけでできていました。
楽器にはアルペジオ奏法、ブロック奏法などのさまざまな演奏のやり方がありますが、かんぷれの場合はそのカスタマイズも可能。先日アップルが発表したLogic ProのSession Playersのようなことが、単体で可能なのです。
さらに、MIDI出力もできるのでコードトラック入力にもすごく役に立つということがわかっています(Bluetooth MIDIにも対応)。
筆者はライブでiPadやiPhoneなどでコード弾き演奏をすることが多いのですが、かんぷれが入手できたら活用したいと思っています。
■バリアフリーであることの意味
そんなかんぷれですが、筆者にとってはとても強くこの製品のクラウドファンディングに成功してほしい理由があります。
それは、この製品がバリアフリーであるということ。
少ない手順で、指一本で、まるで本物の楽器のようにリアルな演奏ができる、しかも片手に乗るくらいのサイズでそれを実現しており、拡張することにより、さまざまなタイプのスイッチで演奏も可能。ということは、従来の楽器の演奏に困難を覚えていた方々にとっての福音となりうるのです。
かんぷれにはアクセシビリティアドバイザーとして、山下智子さんが加わっています。脳性まひの山下さんは以前からインスタコードについての改善提案をゆーいちさんにしており、その縁で、かんぷれプロジェクトに関わることになりました。
発表会にリモート参加した山下さんは「(通常の電子キーボードでは)白鍵はできても黒鍵や和音は弾けない」「(かんぷれでは)和音も指一本で弾くことができて嬉しかった」と話していました。
このことはよく実感できます。
20年以上前に他界した筆者の妹はピアノを演奏することが大好きでした。脳性まひで全盲でしたが音感が非常によく、好きな曲のメロディーを耳コピして指一本でピアノ演奏して歌っていました。
療養所での最後の日々で、他の障がい者の方々と一緒にLet It Beを一緒に演奏できたことはかけがえのない思い出です。
かんぷれがこういった方々の手に渡るようになれば、ベッドなどにちょこっと置いてあるかんぷれや、別売の拡張ボックスを経由したさまざまなスイッチによっていつでも気軽に演奏することが可能になります。弾き語りもできるのです。
それはどれだけの喜びでしょう。
かんぷれは、M5StackのCore2、Core3と組み合わせて使うようになっています。最初からCore3SEが組み込んであるものが3万3000円(税込み)、M5Stackなしのものが2万6000円です。
製品出荷予定は2025年4月末ですが、ものすごく早くクラウドファンディングの目標である5000万円達成ができれば、少し早まるかもしれません。
筆者はとりあえず、フルセットの方をバックしました。