1週間の気になる生成AI技術・研究をピックアップして解説する連載「生成AIウィークリー」から、特に興味深い技術や研究にスポットライトを当てる生成AIクローズアップ。
今回は、「私はロボットではありません」でお馴染みのGoogleが開発する「CAPTCHA」(コンピュータと人間を区別するための完全に自動化された公開チューリングテスト)を突破するAIシステムを提案した論文「Breaking reCAPTCHAv2」に注目します。
▲CAPTCHAを突破するAIシステム
CAPTCHAは、ウェブサイトのセキュリティを向上させるために広く使用されている技術です。この研究は、そのシステムの効果を詳細に検証し、AI技術を用いてどの程度突破できるかを明らかにしました。今回は、複数のパネルから指定された画像のみを選択する「reCAPTCHAv2」システムに焦点を当てています。
研究者たちは、画像認識モデル「YOLOv8」を使用して、reCAPTCHAv2の3つの異なるタイプのチャレンジに対応しました。これらのチャレンジには、複数の画像から特定のオブジェクトを選択する分類タスク、1つの画像内の特定のオブジェクトがある部分を選択するセグメンテーションタスク、そして動的に変化する画像を含むタスクが含まれています。
▲reCAPTCHAv2で使用されている3つの異なるタイプ例
開発したシステムは、驚くべきことに100%の精度でreCAPTCHAv2を解決することができました。これは、以前の研究で達成された68-71%という成功率を大きく上回る結果です。この高い成功率は、AI技術が急速に進歩していることを示すとともに、現在のreCAPTCHAv2システムの脆弱性を浮き彫りにしています。
研究チームは、CAPTCHAを解決する際のさまざまな要因の影響も調査しました。例えば、VPN(仮想プライベートネットワーク)の使用は、システムが同一のユーザーによる複数の試行を検出するのを防ぐのに役立ちました。また、人間のようなマウスの動きを模倣することで、ボットの検出を回避する効果が確認されました。
特に興味深い発見は、ブラウザの履歴とクッキーの影響です。これらのデータを含めることで、CAPTCHAを解決するために必要なチャレンジの数が大幅に減少しました。これは、CAPTCHAがユーザーの過去の行動データを重視していることを示唆しています。
さらに、研究者たちは人間とボットのCAPTCHA解決能力を比較しました。驚くべきことに、統計的に有意な差は見られませんでした。つまり、開発されたAIシステムは、人間と同程度の効率でCAPTCHAを解決できるのです。このことは、画像ベースのCAPTCHAが人間とボットを区別する効果的な方法ではなくなっている可能性を示唆しています。