世界初の三つ折りスマホHUAWEI Mate XT実機ハンズオン。薄さに驚き、課題は40万円超の価格と重さと… (石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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 世界初の「三つ折りスマホ」として、9月に発表されたファーウェイの「HUAWEI Mate XT」(以下、Mate XT)。40万円を超える高価格な端末ながら、販売開始直後は品薄だったこともあり、100万円を超える転売価格がつくなど、大きな話題を集めました。

このMate XTを実際に触る機会を得たので、写真とともにそのインプレッションをお届けします。

 筆者は普段、フォルダブルスマホの「Galaxy Z Fold6」を使っていますが、閉じた際の厚みはそれに近いと感じました。並べてみるとご覧のとおり。閉じると重なりが1段増えるぶん、閉じる際の条件は不利になるはずですが、見た目はほとんど変わらないことが分かります。

(▲画像:右がGalaxy Z Fold6。三つ折りながら、閉じても厚みに大きな差がない)

 これを実現できたのは、最薄部3.6mmという薄さのためです。開いてみると、厚みがないことが一目瞭然です。フォルダブルスマホは、どちらかと言うと中国勢が薄さを追求している印象でしたが、正直なところ、Galaxy Z Fold6ぐらいの厚みでも困るようなことはありませんでした。

(▲画像:最薄部3.6mmといううたい文句どおり、とにかく薄い)

 一方で、三つ折りにするとなると、閉じた際に厚みが出てくるため、薄さがより重要になってきます。Mate XTを見ると、それが実感できます。開いた時の厚みをとにかく削いでいくことで、閉じた時には一般的なスマホのような使い勝手を維持できるというわけです。

 三つ折りのおもしろいのは、ディスプレイサイズを3パターンに変更できるところ。閉じるとスマホのようになりますが、全展開するとタブレットと比べてもそん色ないサイズ感まで拡大します。

この2つに加え、片方だけ折りたたんだ状態だと、一般的なフォルダブルスマホのようなサイズ感で利用可能。家や職場で腰を据えて使うなら最大サイズ、電車の中などでは片面だけ折った中間サイズ、移動中はスマホサイズというように、1台3役で使い分けられるのは魅力的です。

(▲画像:サイズは3段階に変更可能)

 内蔵アプリも、そのサイズに合わせてきちんとユーザーインターフェイスを変えていくので、使い勝手も高いと言えるでしょう。

特に動画視聴は、一般的なフォルダブルスマホでは味わえない迫力があります。開いた時のサイズ比較は以下の通り。11インチiPad Pro(M4)よりはやや小さいものの、Galaxy Z Fold6よりはかなり大きいことが分かります。

(▲画像:左からGalaxy Z Fold6、Mate XT、iPad Pro。どちらかと言えば、サイズは11インチのiPad Proに近い)

 縦折り、横折りを問わず、半開きの状態で使えるのもフォルダブルスマホの魅力ですが、三つ折りになったMate XTでも同様のことは可能。さらに、1面だけを折り曲げた状態にすると、机の上で自立させることまでできます。

この状態でキーボードを接続すれば、さながらコンパクトPCのように活用でき、仕事もはかどりそう。これを折り曲げるだけでポケットに入れて持ち運べるのは、なかなか衝撃的です。

(▲画像:一般的なフォルダブルのように半開きにすることも可能)

(▲画像:メインカメラを使った自撮りもできる)

(▲画像:ディスプレイの1面だけを折り曲げるとスタンド代わりに)

(▲画像:机の上に置いてキーボードを使えば、文章入力も簡単だ)

 この部分は難点もあり、折り曲げられるポイントが2つあることで、利用形態が増えすぎてしまい、自分がやりたいことをするにはどの状態がベストなのかが少々分かりづらいようにも感じました。

二つ折りのフォルダブルスマホであれば、角度を気にするだけで済みますが、三つ折りの場合だと上記のように、1画面ぶんをスタンドにしたり、一般的なフォルダブルスマホのように半開きにしたりと、パターンが増えているからです。2カ所をちょっとずつ折り曲げれば、縦位置でも自立させて使うことまでできます。

(▲画像:ちょっとずつ折り曲げれば、縦置きで使えなくもない)

 とは言え、スマホサイズとタブレットサイズを行ったり来たりできるのは三つ折りのおかげ。カメラがファーウェイのハイエンドモデル相当の性能を持っているため、撮影までこなせてしまいます。

三つ折りと聞くとインパクトだけを重視した“変態端末”のように思う向きもありそうですが、使ってみると意外と実用的。価格と、スマホとしては重すぎる約300gの重量がこなれてくれば、案外普及するかも……と感じました。

(▲画像:メインカメラは可変絞りを備えるなど、撮影性能も高い。そのぶん、カメラの出っ張りも目立つ)

 非常に惜しいのは、ファーウェイがGoogleのサービスを搭載したAndroidスマホを開発できないこと。そのため、日本はもちろん、中国以外の国や地域に展開するのが難しい情勢です。

試用した実機も、当然ながらアプリはおろか、Google検索にも非対応でした。米国が制裁を解除する気配はまったくないため、このままだと中国以外で発売される可能性は極めて薄いと言えるでしょう。ついつい「もうええでしょ」という言葉が口をついて出てきそうになってしまいました。

《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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