【XPAN vs. L2HC】激レア環境だけど真のハイレゾが楽しめるワイヤレスイヤホン「Xiaomi Buds 5 Pro」「FreeBuds Pro 4」を比較(はやぽん)

ガジェット オーディオ
佐藤颯

生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

特集

シャオミから登場した最新ワイヤレスイヤホン「Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi」は、無線LAN技術を活用した高音質伝送が、マニアの間で話題になっています(2モデルもあり、名称に“Wi-Fi”のつくモデルです)。今回は、同様に高音質伝送に対応したファーウェイの「FreeBuds Pro 4」と、音を中心に比較していきたいと思います。

▲共に高音質伝送に対応したファーウェイのFreeBuds Pro 4(左)とXiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi

無線で真のハイレゾ再生

Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiは、世界初“XPANオーディオ”に対応するワイヤレスイヤホン。XPANとは「Qualcomm Expanded Personal Area Network Technology」の略称で、クアルコムが2023年に発表した伝送方式です。

この技術はWi-Fiの電波にBluetooth音声プロトコルを載せて伝送するというもの。従来のBluetoothでは難しかった大容量かつ低遅延で通信ができます。XPANに対応するXiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiでは、最大4.2Mbpsで伝送可能としています。これは、市場に出ている高音質をアピールするワイヤレスイヤホン(LDAC)の約4倍の情報量で、理論値では24bit/96kHzをほぼ無圧縮で伝送できることになります。

▲Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiはケースがクリアな特別デザイン

▲MWC 2025でXPANの伝送レートをリアルタイムで確認できるデモを体験。電波が飛び交う中、3.5Mbpsを超える高いレートを維持していた

オーディオハードウェアも強化され、独立したアンプシステムを備える3ドライバー構成を採用しています。低域は11mmのダイナミック、中高音域を平面ドライバーと6mm径のPTZ(ピエゾドライバー)が担当することで、ダイナミックな低域から繊細な高域まで再現します。

チューニングはHarman Golden Ear Teamによるマスターチューニングを採用。深い低音と、豊かな表現性を実現しています。

一方で、XPANオーディオはクアルコムの最新規格ということもあり、利用できる環境は非常に限られています。まずスマートフォン側にSnapdragon 8 Eliteプロセッサ、イヤホン側にSnapdragon S7+ Gen 1プロセッサを搭載している必要があります。

現時点ではXiaomi 15 Ultra、Xiaomi 15(アップデートで対応)のみで利用できる機能とされており、対応機種は極めて少ない状況です。Xiaomi Buds 5 Pro通常モデルもaptX Adaptive LE(2.1Mbps)に対応しているものの、こちらの対応機種もXiaomi 15シリーズに限られています。

▲XPANオーディオを体験できる組み合わせは現状Xiaomi 15 Ultraのみ

ファーウェイのFreeBuds Pro 4は、LDACに対応するワイヤレスイヤホン。日本向けには大きく公表されていないものの、最大2.3Mbpsで伝送できる独自規格のL2HC 4.0に対応しています。

同社は24bit/48kHzの音源でも劣化無しで伝送できるとしており、高音質という面ではワイヤレスイヤホンの新境地を示した商品のひとつです。

ハードウェアとしては低域を担当する11mm径のダイナミックドライバ、高域を担当する独自開発のマイクロ平面ドライバを採用。イヤホンのチューニングには中央音楽学院(中国の音楽芸術ジャンルの最高学府)の教授をはじめ、クラッシク演奏者の協力を仰ぎ、前作のFreeBuds Pro 3からさらなるチューニングを施し進化しました。

特に音の定位感(どこから鳴っているか)にフォーカスを当てており、L2HC 4.0の持つ大容量伝送を生かして「クラシック音楽も正確な定位感で楽しめる」としています。

一方でL2HC 4.0の対応機種もまた非常に少なく、基本的にファーウェイ製のスマートフォンで、かつHarmonyOS NEXTを搭載したMate 60シリーズ以降のハイエンド機種に限られます。

これらの機種は日本未発売なことに加え、多くはAndroid OSでもないため、体験すること自体が非常に難しい状況。HarmonyOS NEXTは言語に日本語がなく、日本人が日本で使うことすら想定されていません。

▲対応機種自体はXiaomiより多いが、日本では発売されているものはない

▲さらに多くの機種でHarmonyOS NEXT(5.0)へのアップデートが必須

最強のワイヤレスイヤホンはどっちだ

入手性には一旦、目をつむり、どちらが最強かを比べてみたいと思います。筆者はL2HC 4.0に対応したファーウェイ製のスマートフォンを保有しており、FreeBuds Pro 4を最高音質で利用できる環境があります。Xiaomi Buds 5 ProのXPANオーディオと比較してほしいという声が、かねてから寄せられていました。

今回のレビューにあたり、XPANオーディオは接続先のスマートフォンとしてXiaomi 15 Ultraを、ファーウェイのL2HC 4.0はPura70 Ultraを使用します。

筆者保有のHuawei Pura70 Ultraは総務省の技適未取得端末向けの特例制度を取得したうえで、個人が海外で開通し、日本国内に持ち込んだ端末に適用される電波法第4条第2項ならびに電波法第103条の6項に基づき電波を発した状態で試します。こうすることでモバイルデータ通信並びに、Wi-Fi、Bluetooth通信が合法的に利用できます。

▲両機種を対応スマートフォンに接続。シャオミは4.2M、ファーウェイは2.3Mの表記が現れる

Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fiは音の情報量が多いことはもちろん、音場が広く開放感のあるサウンドが印象的でした。聴いている音楽に「こんな音が入っていたんだ」と感じられるレベルの情報量であり、ワイヤレスイヤホンとは思えません。それをトリプルドライバ構成で鳴されると、もう有線イヤホン顔負けです。

音場も広く、まるでホールにいるような感覚で窮屈さを感じさせないのも素晴らしいリスニング体験でした。

それでは、FreeBuds Pro 4はどうでしょうか。結論から言うと、思った以上にいい勝負でした。チューニングの差により、好みは割れそうです。こちらは情報量を備えつつも、非常に濃密かつリアリティを感じるサウンドの印象。特に楽器がどこで鳴っているのかという定位感の表現に優れており、これがリアリティの正体と考えます。

音の傾向的にオーディオメーカーが得意とする分野で、方向性が近い商品としてテクニクスのEAH-AZ100を挙げることができます。特にクラシック音楽では抜群の定位感を体験でき、 ここはシャオミよりも好印象でした。やはり、プロの音楽家と共にチューニングを詰めたことが生きていると感じました。

ワイヤレスイヤホンの新境地に驚き

今回、両者の音を聴いてみて、優劣をつけるのは難しいと感じました。シャオミの抜けがよく、サウンドステージの広い開放的なサウンドか、ファーウェイの濃密でリアリティを感じるサウンドか。両者の目指したチューニングが大きく異なるので、聴感的な体験は比べられません。

▲両者ともにサウンドクオリティは高く、好みに委ねる部分が大きい

繰り返しになりますが、どちらの機種も最高音質で楽しむためには、対応機器をそろえることが必須です。XPAN、L2HC 4.0共に特定のスマートフォンに依存する高音質コーデックであり、相応のコストがかかることが難点です。

XPANについては今後、対応機種も増えていくと思われますが、プロセッサの最低要件がSnapdragon 8 Gen 3以降のプロセッサに依存する機能なので、しばらくは10万超のハイエンド機が中心になると思います。

基本的には、aptX Adaptive対応のXiaomi Buds 5 Pro、LDAC対応のFreeBuds Pro 4と考えたほうがよさそうです。イヤホンのために別途、スマホを買う方は多くないことでしょうから。

価格は、Xiaomi Buds 5 Pro Wi-Fi版が2万7980円(通常版は2万4980円)、Huawei FreeBuds Pro 4も2万7980円です。両者とも高音質ANCイヤホンとしては、お買い得となっています。



《佐藤颯》

※テクノエッジが運営する有料会員コミュニティ、テクノエッジ アルファに加入すると参加できるDiscord内、「スマホ沼」チャンネルにおいて、記事に関する追加情報や山根ハカセとの交流、スペシャル映像をお楽しみいただけます。ほか、生成AIや自作PCに関するコンテンツ、リアルイベントの優先招待などの特典がございます。ぜひ、ご検討ください。

Amazon売れ筋ランキング

佐藤颯

生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

特集

BECOME A MEMBER

『テクノエッジ アルファ』会員募集中

最新テック・ガジェット情報コミュニティ『テクノエッジ アルファ』を開設しました。会員専用Discrodサーバ参加権やイベント招待、会員限定コンテンツなど特典多数です。