鳴り物入りで登場したシャオミの「Xiaomi 12S Ultra」は、これまでの同社製スマートフォンと一味も二味も異なる製品だ。なんと言ってもあのライカとのコラボ、しかも本体の仕上げが完璧と言えるほどしっかりしている。
実は筆者、あらゆる人におすすめできる一歩上のスマートフォンとしてシャオミのコスパモデル「Redmi」シリーズを高く評価している。一方でシャオミの上位モデルは高性能であることを認めつつも、他社の上位モデルと比べると何かが追いついていないと感じてしまい、なかなか手を出すことができなかった。
しかしXiaomi 12S Ultraの発表会を見終えた直後に「まずは買ってみよう」と気持ちが大きく変化し、そして実際に購入してみると「これ1台ですべて済んでしまうのではないだろうか」と思うほど惚れ込んでしまったのだ。
筆者の写真の好みは、美しさよりもSNSで映える色合いの仕上げだ。Xiaomi 12S Ultraはライカとシャオミ協業の「Leica Vibrant Look」モードを搭載しており、このモードでAIをONにしておけばほぼすべての写真が映える仕上げになってくれる。
しかも1インチセンサーの威力で逆光にも強い。夜景はちょっと派手な仕上げになるものの、それはそれで悪くない。夜空の星や月もしっかりと写り込んでいる。つまり「適当に使って常にいい写真が撮れる」これがXiaomi 12S Ultraの大きな魅力だ。
一方で「Leica Authentic Look」モードに切り替えると、アナログの”写真っぽい”仕上がりになる。実は2つのモードをいろいろと撮り比べてみたが、被写体によっては両者の差が感じられないことも多かった。
だが苔の生えた岩や水面に写り込む建物を撮影したときなどはLeica Authentic Lookのほうが味わいのある写真となった。同じ風景でも時には異なる仕上げとなり、しかもどちらもいい感じに写るという、欲張りな結果が得られるのがXiaomi 12S Ultraのカメラなのだ。
1インチセンサーを搭載していることから他社の同等品との性能比較が気になるだろうが、筆者がXiaomi 12S Ultraで一番気に入っているのはカメラよりも本体の仕上げだ。
背面はカメラの革張り風仕上げであり、Xiaomiのロゴも控えめ。このシボ仕上げの背面はXiaomi 12S Ultraをケースなしで持っていても滑りにくく、肌に触れる感触も心地よい。さらには大きな円形ガラスのカメラユニット部分はXiaomi 12S Ultraがカメラフォンであることを大きくアピールしてくれる。実際に筆者の住む香港の街中で写真撮影を行っていたところ「それは何? スマホ? カメラ?」と声をかけられることが何度かあった。
これまでもファーウェイのMateシリーズなど円形台座のカメラを備えるスマートフォンはあったが、Xiaomi 12S Ultraはカメラ部分をこれでもかというくらい目立つデザインにしている。またゴールドの縁取りは製品写真で見るより控えめでプレミアム感も味わえる。10万円以上する高価な製品であり、”所有する喜び”を十二分に感じられるのだ。
ちなみに筆者は2015年にパナソニックが売り出した「LUMIX DMC-CM1」を購入している。LUMIX DMC-CM1は世界初の1インチセンサー搭載スマートフォン(当時は通信機能搭載デジタルカメラという売り方だったが)だ。ライカとのコラボ、そしてカメラ風の高級感ある外観であり、手にした瞬間に感動して震えてしまうほどだった。そのLUMIX DMC-CM1以来、Xiaomi 12S Ultraは久々に製品そのものに興奮できるスマートフォンなのである。
そしてXiaomi 12S Ultraを使い込んでいくと、数年後のシャオミが巨人となっている姿が目に見えてくる。ライカとのコラボレーションが中国内のみなのか、グローバル展開するものなのかは不明だが、これからシャオミのスマートフォンのカメラ性能は確実に向上していく。いずれRedmiクラスの製品でも美しい仕上げの写真が撮れるようになるはずだ。「シャオミのスマホはコスパがよくて写真もきれい」となれば、シャオミを買っておけば間違いない、という意識が世界中の人に広がっていくだろう。
事実、ファーウェイはライカとコラボしたことで急激に業績を上げていった。今は新製品が思うように出せない状況だが、ファーウェイに頑張ってほしいと考える人も多いだろう。
そう思えるのはファーウェイがこれまでスマートフォンのカメラ性能をけん引してきた存在だったからであり、そのはじまりがライカとの協業である。数年前なら「カメラ性能ならファーウェイ」と誰もが感じ、低価格な「Lite」モデルもファーウェイの製品であることから人気となった。そのファーウェイの歩んだ道を、今度はシャオミがなぞることになろうとしているのだ。
ファーウェイは高性能なモデルがグローバルで認知され、低価格モデルも売れたことで世界シェア2位を獲得した。一方、シャオミは低価格モデルが販売数をけん引しているが、上位モデルでは苦戦中だ。シャオミの「顔」となるモデルはこれまで見当たらず、フォルダブルモデルも中国国内のみの展開に留まっている。
だがXiaomi 12S Ultraと同等のカメラ性能を持ち、そして高い質感の製品を出していけば、世間、特に先進国市場でのシャオミに対するイメージが大きく変わっていくだろう。
しかもそこにライカブランドが加われば最強だ。景気動向に左右されにくい低価格モデルを多数展開しているシャオミのブランドイメージが高まれば、世界シェア1位になるまでそう時間はかからないはずだ。
シャオミの全技術力と生産ノウハウをつぎ込み、そこにライカ100年の歴史の写真エッセンスを加えたXiaomi 12S Ultra。シャオミが2023年以降に大躍進するきっかけのモデルになるかもしれない。