予想外にまともなメガネだったHUAWEI Eyewearはオンライン会議の救世主になり得るか(本田雅一)

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本田雅一

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ジャーナリスト/コラムニスト

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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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ファーウェイがありとあらゆるジャンルのテック製品に投資していることはもちろん知っていたけれど、そうは言っても”メガネ”に関しては、本当にごめんなさい。まったく期待していなかった。

しかし、ファーウェイが開発した「HUAWEI Eyewear」は、2022年前半に試したあらゆる製品の中で、もっとも驚かされた(期待値を大きく超えた)製品だった。


HUAWEI Eyewearは、いわゆるメガネ型ヘッドセット。テンプルの部分にスピーカー、マイク、バッテリーが収められ、Bluetoothのチップやアンテナが仕込まれている。

▲フロントフレームは着脱式

製品としての企画に特にヒネリがあるわけじゃない。メガネをスピーカーにしようという取り組みは、以前からBoseが積極的に取り組んでいるし、他にも似たような製品はあるなぁと思いながら、その発表を知らせるメールを眺めていた。そう思っていたところで「一度使ってみてください」と言われ、気まぐれにテストしてみると、想像以上に”まともなメガネ”だったのだ。

かけた瞬間から驚きを感じられる

普段からメガネをかけてる人は、その便利さと煩わしさの両方を熟知している。だからこだわり派ならたくさんのメガネを試し、新しいブランドを見かけると試してみたくなる。そんなわけで、メガネフレームのフィッティングに関しては口うるさく、また知識もそれなりに溜まっている人が多いはず。それゆえにフレームメーカーでもないデジタルデバイスの会社が出すアイウェアと言われても興味を持てない人は少なくないだろう。

そんなわけで期待値が低いままにHUAWEI Eyewearをかけると、その瞬間「あれ? こいつはいいかも?」と感じるほどかけ心地の良さがあった。

なにしろバランスがいい。

長めのテンプルは耳にかかる先の部分がやや重めで調整しやすく、大きめの鼻パッドにかかる重さが分散されるのだろう。こうしたデバイスでありがちな、”かけることそのもの”に対する物理的なストレスがほとんどない。実に”普通にちゃんとしたメガネフレーム”なのだ。

筆者が試したウェリントン型ハーフリムは3モデルの中で最も重い38.8グラムだが、かけた時の印象はもっと軽い。普段はLINDBERGやic! berlinなどの軽量チタンフレームを愛用している筆者でも、違和感を全く覚えなかった。

▲上から時計回りに、ウェリントン型フルリム、ウェリントン型ハーフリム、ボストン型フルリム

そして次に驚くのが音。

かけられたことを自動認識して電源がオンになると「プポッ」と、なかなか心地よい電子音が自然に聞こえてくる。電子音は電子音。音質など関係なさそうなものだが、甲高さがなくナチュラルな風合い。

あれ? これは音質も良さそうだ。と、ここでも低い期待値を裏切る予感を感じ取れた。

▲普段利用しているメガネと並べてみた

声が聴きやすい自然な音は意外に心地よい

HUAWEI Eyewearは通話やオンライン会議で利用できるほか、音楽を楽しむこともできる。低音と言えるような音はもちろん出ないのだが、それでもバランスよく声の帯域が出てくれるので、意外にも心地よく音を楽しめる印象だ。

そのコンパクトさから、シャンシャンとハイ上がりの聴き辛い音を想像するかもしれないが、低域への伸びがないだけで中音域以上はフラットに整えられている。高音質に音楽を楽しもうと思わなければ、邪魔になるような聴きずらさはないし、会話に使うだけならば十分に満足できる声の質感を出せる。

いやちょっと待って! 本田さん、別の記事では「オーディオ製品にとって音質以上に重要なことはない」って言ってなかったか?

全くその通りだが、この製品はちょっと意味合いが異なる。HUAWEI Eyewearの本質が何かと言うと、アイウェア、すなわちメガネをかけて何かをしている時に、その行為(作業かもしれないし読書かもしれない)を補助する役割なのだと思う。

読書しながら漂うように音楽を楽しみたい。長時間、パソコンで作業をしながらオンライン会議にも参加する。そんな時は長時間の読書でも疲れず、快適であることの方が優先される。そう思えるほど、装着感は優秀なメガネに近く、また耳を塞がずに音が聴けることに価値があるのではないだろうか。

風切り音キャンセル機能と音漏れ対策も

ところで、テンプル内の128平方ミリある振動板が震わせた空気を切り欠きから放出する仕組みと聞くと、ものすごい音漏れがあるのでは? と思うかもしれない。実際、最大音量にするとかなり高い音圧を得られるのだが、実はそれなりの対策が施されていた。

まず、振動板の作る音は耳の方向に出されると同時に上方向にも放出されるようになっている。これは耳方向に出された音が拡散していくのに対して、位相が少しズレた形で合成されるよう、振動板とポートの距離、方向などが調整されているようだ。つまり音漏れキャンセル的なことをメカニカルな設計で行っていることになる。

そんなに上手くいくの? と聞かれれば、もちろん完璧ではない。

しかしHUAWEI Eyewearには周囲の音の状況を自動判断して音量調整を行う機能がある。周りに人がいそうな場所では、通話やオンライン会議でBluetoothのプロファイルがヘッドセットに切り替わった時、音量を自動的に適切な量にまで下げることで会話内容が漏れないようになっているのだとか。AIを活用したこの機能と音漏れを減らした設計の合わせ技で、よほど目前に顔を近づけるなどをしない限り、通話内容を知られることはない。

またマルチマイクによって口元にビームフォーミングしているのだが、同時に風切り音を防ぐ防風設計もあって、風の強い屋外で歩いて通話していても不快な音が混じることはなかった。

この手の製品で「ここは懸念点かもしれないな」という部分に、ことごとく手当がしてある印象だ。

▲フェルト生地で作られたアイウェアケースが付属する

イヤホンでのオンライン会議にお疲れ気味の方に

メーカーとしては、なかなか良い音に仕上がっているから身につけるように音楽も楽しんでほしい、ということなのだと思う。実際のところ、手元にあるBose Frames Tempoよりもずっとスリムでかけ心地が良いにもかかわらず、音楽表現に関しては大きく変わらず、むしろ音場空間はHUAWEI Eyewearの方が自然だ。

では音楽用におすすめかと言えば、3万円を超える価格(公式サイトでの価格は税込3万2780円)ではちょっと”遊べない”という印象。遊べないというのは、興味本位で手をだす気にはなれないという意味だ。

それにレンズを入れるとするなら、ここにレンズ代が乗ってくる。ちなみに標準で装着されているのは、コーティングもされていないプラスチックのレンズで、あくまで仮のもの。度付きが不要という場合でも、ブルーライトカットなどの機能性レンズを自分で取り付けることになる。

とはいえ、これを毎日のオンライン会議を乗り切るための快適グッズとして捉えるならば、僕はアリだと思う。毎日、イヤホンやヘッドホンでオンライン会議に参加しているメガネユーザーなら、きっとこの良さを感じられるはず。音楽の連続再生で6時間、通話(会話)モードで4時間のバッテリー持続時間はこのサイズ感を考慮するならなかなかのものだ。

▲充電は付属の充電コンバータ(USB Type-C)で行う

ただし、手放しで褒められないのは、レンズ交換を前提にしているにもかかわらず、すべてのメガネ店が本機に対応してくれるとは限らないこと。筆者は行きつけのメガネ店でレンズを入れてもらったが、門前払いになるケースもあるようだ。朗報としては、メガネ専門店の「OWNDAYS」が本機とレンズのセット販売を行っており、さらにレンズ単体での交換にも柔軟に対応しているとのこと。全国チェーンなので、交換レンズで困ったらOWNDAYSの店舗を訪ねるといいだろう。

HUAWEI Eyewear


《本田雅一》
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