米Amazonは、全米で180以上のクリニックを運営するOne Medicalを39億ドル(約5370億円)で買収することで合意しました。One Medicalは対面方式でのヘルスケアの提供のほかに、デジタルまたはバーチャル技術を利用した遠隔医療サービスを提供しています。
One Medicalは目標に「質の高いプライマリケアを手頃に、かつアクセスしやすく、また楽しく」提供することを掲げる企業。アミール・ダン・ルービンCEOはそのポジションにとどまり、Amazonの顧客重視のヘルスケアへのアプローチを共有し、ウェルネスアプリや24時間365日のバーチャルケアなど、様々なデジタルサービスを提供するとしています。
Amazonは現在「Amazon Care」でオンライン診療から新型コロナウイルスやインフルエンザといったさまざまな症状に対する検査やワクチン接種といった治療や処方を在宅のまま受けられるサービスを展開、徐々に医療分野への進出を進めています。
Amazon Health Services担当SVPのニール・リンゼイ氏は「われわれは今後数年のうちに、へルスケア体験を劇的に改善するのを助ける企業のひとつになりたいと考えている」と述べ、「One Medicalの、人間を中心に考え、技術を駆使したヘルスケアへのアプローチとの融合は、より多くの人々が、必要な時に必要な方法でより良いケアを受けられるようにできると信じている」としました。
ただ、AmazonによるOne Medical買収に関しては良い話ばかりが聞こえているわけではありません。まず、今回の買収額のうち5億ドルほどは、One Medicalが抱える負債の返済に充てられるとされています。また、この医療ネットワーク企業は、新型コロナのパンデミックが拡がりワクチン不足が叫ばれたころ、199ドルを支払ってサービスの会員になればワクチンをすぐに接種できると謳って400人近い新規会員を獲得したと、2020年暮れの米議会による調査で報告されていました。この調査では一般の希望者よりも職員や家族さらにその友人などに優先的にワクチン接種の機会を提供したとも言われています。
なお、米国の政治問題を専門とするメディアThe Hillは、議会の報告に対し「ワクチンを使って人々に会員になるよう呼びかけたり、友人や家族に優先的に予防接種を提供したりしたという主張は虚偽だ」とするOne Medicalの広報担当者の主張も伝えています。
今回の買収を発表する両社のリリースでは、こうした一連の問題には触れられていません。One Medicalの「人間を中心に考え、技術を駆使したヘルスケア」が、非常に過酷な労働条件のもとで働くAmazonの物流センター従業員たちにもきちんと提供され、より広く一般にも役立てられるよう願いたいところです。
Source:Amazon
via:Ars Technica, Engadget