米マイクロソフトが開発していた「低価格のクラウド専用Xbox」は、当面のあいだ発売されないことが分かりました。
「クラウド専用Xbox」は数年前からうわさになっており、マイクロソフトも約2年前に存在を認めています。
有志によるデータマイニング、すなわちOSなどのコード解析による未公開情報の発掘から浮上した新型ハードウェア「Keystone」の存在も、MSは事実だと認めました。
続いてXbox部門責任者フィル・スペンサー氏も思わせぶりに試作機らしきデバイスをチラ見せし、いやが上にも期待は盛り上がっていました。
が、そのスペンサー氏がいったん本製品は棚上げし、発売するとしても数年後だと発言。少なくとも2022~2023年には登場しないことが確定してしまいました。
なぜ、クラウドXboxが発売延期となったのか? それは要するに「値段が高すぎるから」だと明かされました。
スペンサー氏はThe Vergeとのインタビューのなかで、ざっくりした真相を語っています。その理由の核心はハードウェアのコストにありました。
「実際に社内でハードウェアで作り上げると、望んでいたより高価だった」と振りかえっています。
そのため開発努力をスマートTV用のストリーミングアプリ開発に集中した、とのこと。
どれぐらいの価格を狙っていたかといえば、99~129ドルの間だったそうです。これは現行モデルXbox Series Sの299ドルをはるかに下回っていますが、本体コストのほかコントローラーも同梱したことで近づいてしまったと仄めかされています。
クラウドゲーミングでは『Fortnite』や『マイクロソフトフライトシミュレーター』などXboxのゲームそのものをスマホで遊ぶことができ、タッチ操作に最適化したタイトルも増えてはいますが、ゲーム機に近い体験にはやはり物理的なコントローラが必要です。
クラウドゲーミングサービスにコントローラーをセット販売する考えは、もうすぐ短い生涯を終えるGoogle Stadiaも行っていたこと。
しかし、当時の「Stadia Founder's Edition」はChromecast Ultraやコントローラー込みで129ドルだったことから、Keystoneはかなりリッチな仕様となっていたのかもしれません。
またスペンサー氏はKeystoneプロトタイプが「ユーザーインターフェースはXboxに近く、完全に機能する」とコメント。実際に家に持ち帰って満足のいく動作をしたとしつつ、自分のオフィスでチラ見せした試作機はチームが9ヶ月で作り上げたものだと語っています。
その一方で「我々はまだ関心を持っているし、適切なコストになる時期を見計らっている」と述べ、完全に発売中止したわけではないと仄めかしているようです。
MSは2023年度第1四半期(7~9月期)の決算説明会で、これまでXbox Cloud Gamingを利用したユーザーが2,000万人を突破したと発表していました。この数字は、Epic Gamesと提携して『Fortnite』無料プレイ提供(Xbox Game Passの加入必要なし)を始める前に発表された1000万人の倍となります。
不況がハイテク業界を直撃しているなか、MSはあえてコストもリスクも高い新型ハードウェアを投入するよりも、すでに普及している他社製のスマートフォンやスマートTVに(アプリの形で)相乗りした方が得策と判断したのかもしれません。
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