土砂の下のスマホを探す救難ドローン、有線式の長時間運用試験に成功。捜索役とケーブル持ちの二機一組

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関根慎一

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ソフトバンク株式会社と双葉電子工業株式会社は、最大5mの土砂やがれきに埋まったスマートフォンの位置を特定するドローンシステムの実証実験に成功したと発表しました。ソフトバンク、双葉電子工業、東京工業大学院 藤井輝也研究室による共同研究。

有線給電を用いることで、最大約200mの範囲を連続100時間以上にわたって捜索可能なドローンシステム。捜索は土砂やがれきの下に埋もれたスマホから送信される電波の受信電力と、GPSの信号を受信しているドローンの位置情報を同時に取得し、ドローンの受信電力が最大になる位置をスマホの現在位置として特定する仕組み。無線中継システムを用いることで、目視による現場での操作と遠隔地からの操作、自動/手動操縦をリアルタイムで切り替えられるようになっています。

現場で捜索支援を行うのは端末を探知する主ドローンと、給電ケーブルを持ち上げる補助ドローンの2機。給電ケーブルが障害物にひっかからないようにする専用のドローンを用意している点がユニークです。なおドローンは個別に操縦者を必要とします。

従来は無線運用だったことからドローンの移動に関しては高い自由度がありましたが、ドローンのバッテリから中継システムに電力を供給する方法を採っていたため、稼働時間が30分と短かったことが問題になっていました。ここから有線給電に切り替えるのは大きな決断ですが、捜索範囲を絞ってでも要救助者を迅速かつ確実に見つけることを優先したことは想像に難くありません。

実証実験は、土砂の山にスマホを埋め、本システムを用いてスマホの位置を特定するという内容。土砂の山と給電装置間の距離は200mとし、両地点の間には高さ約10mの木々や3m高の柵を設置。主ドローンは補助ドローンのケーブル制御によって土砂の山の上空に到達し、最大5mの土砂に埋もれたスマホの位置を数mの誤差で特定できたとのこと。これをもって、スマホが土砂やがれきの中に埋まってGPSが利用できない場合でも、本システムによって位置の特定が可能であることが検証できたとしています。

ソフトバンクが2020年8月に行ったドローン中継システムのデモ

災害現場における要救助者の捜索支援手法としてはこのほかにも、地上から瓦礫の下の要救助者を探知する電磁波式レーダーや、ドローン映像を地上にいる救助隊員のARグラスに映す複合的な表示システム、あらかじめ人々に「ビーコン」のような物を配布しておき、災害時に位置情報を収集して捜索に役立てるサービスなど、様々な方向からのアプローチが行われています。

今回3者が共同開発した捜索支援システムは「一般的にスマホにはユーザーがいるので、スマホを見つければその付近には人がいる」という前提に依った方向性の捜索手法といえます。

ただ、現在のシステムでは、ドローンによる位置特定のためにあらかじめ端末に専用のアプリをインストールしておく必要があるなどやや高めのハードルがあることに加え、この手法だけではスマホを持っていない要救助者の発見には対応しきれないほか、土砂の水分量が増加するほど電波の到達深度が浅くなるなど克服しがたい課題もあるので、実際にはほかの捜索支援手法と組み合わせて救助の成功率を上げていく運用が現実的でしょう。

今後は3者共同で本システムの実用化を目指すとともに、ドローンを活用した災害対策や社会課題の解決に向けた研究を進めていくとのことです。

《関根慎一》
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