Amazon参加のAmazon Web Services(AWS)は、米ラスベガスで開催中の年次イベント「AWS re:Invent 2022」で、現実の都市の規模で何百万ものオブジェクトが相互に連携する大規模な3Dシミュレーションのための演算をクラウド上で可能にする新サービス「AWS SimSpace Weaver」を発表しました。
AWS CEOのアダム・セリプスキー氏は、ロンドンやロサンゼルスなどの大都市における交通渋滞の改善や住宅計画の影響、自然災害時の対策などをシミュレーションで評価しようとすると、人間や車、鉄道、橋などの都市を構成する何百万ものオブジェクトが相互に影響することになると説明します。
こうした現実をコンピュータ上で仮想空間として構築し、そこでさまざまなオブジェクトを動かすことでシミュレーションできるツールとして、いわゆる「3Dエンジン」があります。
しかし、既存の3Dエンジンが備える演算機能は基本的に単一のコンピュータで実行するように作られているため、何百万ものオブジェクトが複雑に相互作用する都市規模のシミュレーションの実行は困難で、シミュレーションの対象を小さく制限するか、もしくはスケーラブルな演算を実現するための複雑なプログラムをユーザー自身が開発するか、どちらかの選択を迫られることになっていたとセリプスキー氏。
そこで発表されたのが、大規模なシミュレーションのための演算を可能にする「AWS SimSpace Weaver」です。
セリプスキー氏は、AWS SimSpace Weaverによって単一のハードウェアに制約されることなく、また演算のためのインフラを管理する必要もなく、大規模な3D空間のシミュレーションを実行することができると説明しました。
「3Dエンジンでシミュレーションの設計を行った後、そのコードをアップロードし、数クリックでジョブを設定します。するとSimSpace Weaverは自動的に空間シミュレーションの領域を複数のEC2インスタンスに分散し処理を行うのです」(セリプスキー氏)
これによって3Dエンジンで開発したアプリケーションを用いてリアルタイムに群衆の動きをシミュレーションする、といったことが可能になります。下記はYouTubeで公開された動画「AWS SimSpace Weaver and uCrowds city demo」から。
このほかにも都市のデジタルツインを用いて、疫病の拡大状況の観察、仮想都市内での自動運転のテスト、そしてゲームなどへの応用なども考えられるでしょう。
代表的な3DエンジンであるUnreal Engine 5とUnityにはプラグインが用意されるほか、AWS SimSpace Weaver C++ SDKも用意されるため、これを用いてシミュレーションのコードを開発することも可能になっています。
この記事は新野淳一氏が運営するメディア「Publickey」が2022年12月1日に掲載した『AWS、シムシティのように都市などの大規模3Dシミュレーション演算をクラウド上で可能にする「AWS SimSpace Weaver」発表。AWS re:Invent 2022』を、テクノエッジ編集部にて編集し、転載したものです。