端末メーカーの栄枯盛衰が見えたMWC、勢いがあるのはやはり中国勢(石野純也)

テクノロジー Science
石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

特集

2月27日から3月2日(現地時間)に渡り、MWC Barcelonaが開催されました。5G導入以降、どちらかというと通信技術やそのユースケースが中心になりつつあり、以前のようにスマホを中心とした端末はやや影が薄くなっているのが正直なところ。

かつては、XperiaとGalaxyの発表時間がかぶり、泣く泣く一方をあきらめたり、端末メーカーだけでダブルヘッダー、トリプルヘッダーが当たり前だったりと、会期前日からヘトヘトになったものですが、そのような状況ではなくなりつつあります。

▲スペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona。今年は、海外渡航が実質解禁された日本を含むアジア圏の来場者が一気に増え、コロナ禍前のような盛り上がりに

また、23年のMWCに関して言えば、コロナ禍前の19年まで出展していたソニーモバイル(現・ソニー)が出展を見送っており、Xperiaも発表されていません。ファーウェイも、昨年まで開催していた端末の発表会がなくなってしまいました。後者に関しては、米国の制裁が厳しく、海外向けに出せるスマホがない……というのが実情かもしれませんが、以前のような、MWCに合わせたPシリーズの事前予告もなくなってしまいました。なんとも寂しい限りです。

とはいえ、端末メーカーが壊滅状態だったというわけではありません。主要プレイヤーが入れ替わり、元気なところは相変わらず元気といった状況で、メーカーの栄枯盛衰の様子が垣間見えます。中でもMWCで元気だったのが、会期前日の26日(現地時間)に盛大な発表会を開催したXiaomi。同社が選んだ会場は、かつてサムスンやLGが発表会を行ったバルセロナ国際会議場(通称CCIB)です。

▲Xiaomiが発表会を行ったのは、バルセロナ国際会議場。かつてはサムスンやLGが使用した場所で、Xiaomiのポジションが上がっていることを印象づけた

同社はこのイベントで、カメラにライカブランドを冠した「Xiaomi 13」や「Xiaomi 13 Pro」を発表しています。2機種とも、すでに中国向けには発表を済ませている端末で、MWCのイベントはそのグローバル版をお披露目する場という位置づけです。

新規発表だったのは廉価版の「Xiaomi 13 Lite」。こちらは、Liteな割に499ユーロ(約7万2000円)からと価格は少々お高めな一方、セルフィー機能に優れたミッドレンジモデルという立ち位置はおもしろいと思いました。欧州、特にスペインではXiaomiのシェアが高く、発表会からもその勢いが伝わってきました。

▲フラットディスプレイを採用したXiaomi 13(左)と、1インチセンサーを搭載したXiaomi 13 Pro(右)。いずれも、カメラはライカが監修
▲上2機種は中国版が発表済みだったのに対し、新規モデルとして発表されたのが廉価版のXiaomi 13 Lite。インカメラがデュアルで、背景をボカしたセルフィーが撮りやすい

このXiaomiを筆頭に、勢いがあったのはやはり中国メーカー。サムスンがGalaxy Sシリーズの発表を直前に済ませてしまうようになった19年以降、その傾向がより顕著になっている印象があります。MWCに先立ち、OPPOは縦折り型のフォルダブルスマホ「OPPO N2 Flip」のグローバル版を発表。会場では、欧州での発売日に合わせてイベントを開催し、改めてその特徴を解説しています。同モデルは、縦折りの宿命か、どことなく雰囲気がGalaxy Z Flipに近い印象ですが、サブディスプレイが3.26インチと大型で、閉じたままでの操作性に優れています。

▲OPPOは、サブディスプレイに特徴があるOPPO N2 Flipを披露。こちらも、中国版は12月に発表済みだった

XiaomiやOPPOは日本でもおなじみになりつつあるメーカーですが、それ以外にも、MWC会場で発表会を開催したメーカーは少なくありません。日本未上陸のメーカーで盛り上がっていたのが、ファーウェイから独立したHONOR。かつて、ファーウェイから同ブランドの端末が発売されていましたが、米国からの制裁を機に切り離しを行い、今では独自の進化を遂げています。

MWCで発表されたのは、「HONOR Magic5」シリーズ。最上位モデルのHONOR Magic5 Proは、クアルコムの「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載したモデルで、トリプル5000万画素カメラやデジタルズームを掛け合わせた100倍ズームに対応しています。また、中国市場に投入していた「HONOR Magic Vs」のグローバル版もMWCに合わせて披露しています。

▲3つのカメラがいずれも5000万画素で、そのデザインも特徴的なHONOR Magic5 Pro

ちなみに、Xiaomi、OPPO、HONORとも、中国版を先行投入したあと、改めてグローバル版を発表するという流れになっていて、このスタイルが最近のトレンド。中国市場が巨大かつ特殊ということの表れですが、答え合わせが終わっているプレゼンを聞くのは、なんとも不思議なもの。予定稿を仕込み放題なので、プレス側からすると楽チンではありますが(笑)、少々盛り上がりに欠けてしまう感があることは否めません。

ほかにも、OPPOのサブブランドとして発足後に独立したRealmeが、240Wの急速充電に対応した「realme GT3」を発表したり、アフリカ市場でシェアの高いTecnoが格安のフォルダブルスマホ「Phantom V Fold」を発表したりと、スペイン・バルセロナを舞台に中国メーカー同士が激しくつばぜり合いをしていたのが印象的です。また、レノボ傘下のモトローラも、ローラブルスマホの試作機を公開し、注目を集めていました。

▲モトローラは、ディスプレイを巻き取って伸縮させられるコンセプトモデルの実機を初披露

別の意味で話題になっていたUnihertzの「LUNA」も、MWCが初めてのお披露目。かつてのMWCには中国の山寨機(さんさいき)と呼ばれるようないわゆるパチモノ端末が出展されていたこともありましたが、最近はなりを潜めていました。それだけに、LUNAを一目見たときには、どこか懐かしさすら感じてしまいました。オリジナルと比べて光がド派手なところも、山寨機感を醸し出しています。

▲何となく既視感があるUnihertzのLUNA。背面の光はオリジナル(?)より派手

主にアジア圏の海外渡航が実質的に解禁され、22年よりも盛り上がっていたMWC。こと端末に関しては以前より中国メーカーの祭典のような趣が強まった印象も受けました。ただ、ファーウェイが半ば脱落したあと、その顔触れが、徐々に変わっていることもうかがえます。

その一方で、新機軸の打ち出しが足りなかったのも事実。カメラの進化がひと段落し、フォルダブルも徐々に当たり前になりつつあるなか、メーカー各社の端末から次の一手が見えて来なかったのは気になるところです。


《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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