マイクロソフトは14日(米現地時間)、クラウドゲーミングサービスのBoosteroid社と契約を締結し、XboxゲームとCall of Duty(CoD)シリーズを含むアクティビジョン・ブリザードを今後10年にわたり提供し続けることを発表しました。
こうした契約をマイクロソフトが結ぶのは、今回で3件目です。先月下旬、任天堂のゲームハードとNVIDIAのクラウドゲーミングサービス「GeForce Now」に対して、やはりXboxとアクティビジョンのタイトルを今後10年にわたって供給するとの声明を出していました。
一連のマイクロソフトによる動きは、ゲームパブリッシャー大手アクティビジョンを買収する計画を進める上で、世界各国や地域の規制当局から承認を得るためと見られています。その中でも超人気IPのCoDシリーズはゲームプラットフォームやクラウドゲーミングサービス市場の構造まで揺るがしかねず、マイクロソフトが市場独占のため利用するとの疑いもあり。それを払拭すべく、同社はライバル企業にCoDライセンス契約の提供を次々と申し出ることで「独占するつもりはない」と証明しようとしているしだいです。
今回のBoosteroidは、ウクライナに拠点を置く独立系のクラウドゲーミングプラットフォームです。日本では馴染みがないものの、ここ数年で急速にシェアを拡大しており、欧州や米国、その他の地域でもユーザー人口を増やしています。マイクロソフトの公式発表によれば、契約者数は約400万人とのことです。
もっともマイクロソフトは、対応タイトルとしてCoDを何度も強調しているものの、具体的にCoDシリーズのどのタイトルか、それ以外はどんなゲームが登場するかには言及していません。
また、本契約によって「マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの買収が完了した」後に「アクティビジョン・ブリザードのPCタイトルをBoosteroidの顧客にストリーミング配信すること」が可能になると述べており、アクティビジョン買収を進める一環という意図は隠すつもりはないようです(もちろん、買収が成立しなければ、傘下ではないアクティビジョン・ブリザードから提供する約束はできませんが)。
さらに声明では、Boosteroidがハルキウ (ハリコフ)に持つオフィス2つがロシアのミサイル攻撃で被害を受けながら、過去13ヶ月におよぶ戦火のなか MacやChromebook、Androidセットトップボックス等にサービスの対象を広げる革新と成長を続けてきたと称賛。
あわせて、BoosteroidのCEOからの「当社の開発チームはウクライナに拠点を置いており、マイクロソフトのウクライナに対する継続的なコミットメントに感謝しています」や、ウクライナの副首相兼デジタル変革担当大臣の「マイクロソフトがBoosteroidと提携したことは歓迎すべきニュースであり、同社がウクライナに対して継続的に支援していることのさらなる証拠です」とのコメントが紹介されています。
そしてマイクロソフトの副会長 兼 プレジデント Brad Smith氏は今回の契約が「ロシアの不法侵攻以来、当社がウクライナに提供してきた4億3千万ドルの技術および資金援助」の延長上にあると説明。
さらに任天堂およびNVIDIAに加えてBoosteroidとも合意に至ったことによって、「CoDが従来よりも遙かに多くの機器で利用可能になる」ことが規制当局に対しても明確に示されたと結んでいます。
マイクロソフトがウクライナのゲーム開発コミュニティを助け、ウクライナの経済復興に取り組もうとしているのは事実でしょう。その一方で、今回の合意がアクティビジョン買収に疑いの目を向け続ける英米の規制当局にどれほどの影響を与えるのかも気になるところです。
追記:さらに翌15日には、クラウドゲームサービスプロバイダ 株式会社ユビタスとも10年間のパートナーシップを発表しています。