マイクロソフトがゲームパブリッシャー大手アクティビジョン・ブリザードの買収計画を発表してから1年以上が経ちました。
いまだに実現していないのは、世界各国の規制当局から「独占禁止法に違反するおそれがない」ことを認めてもらう必要があるものの、主に英米政府から反対されているためです。
その1つである英規制当局の競争市場庁(CMA)が、主要な論点の1つだった「超人気IP「Call of Duty」をソニーのPlayStationで遊べないようにする」(シリーズ新作を出さない)疑いはもはや晴れたとの見解を示しました。
先月、CMAはマイクロソフトのアクティビジョン買収は家庭用ゲーム機市場での競争を阻害するという暫定的な結論を表明。「アクティビジョンのゲームを自社のゲーム機専用にする(あるいは、実質的に劣悪な条件でPlayStationにも提供する)ことが商業的にも有益であることを示す証拠がある」とされていました。
この判断は、マイクロソフトがCall of DutyをPlayStationに提供し続けるとの約束が疑わしいと主張してきたソニーにとって勝利になるかとも思われました。ゲームハードの売れ行きを左右しかねない重要IPを、ライバルの手に渡さない目標は達成目前にも見えたわけです。
が、24日の発表でCMAは「相当量の新しい証拠を受け取った」とコメント。この「証拠」とは、マイクロソフトがCMAの財務モデル(採算モデル)に欠陥があると主張し、追加で提出した資料を指しています。
その追加証拠を検討した結果、マイクロソフトがPlayStation向けにCall of Dutytの供給を止めるコストは、その利益を上回るため「この合併は家庭用ゲーム機サービスでの競争を大きく阻害することにはらないと暫定的に結論づけた」と述べています。
今回の決定打となったのは、「あり得るすべてのシナリオにおいて、当事者にとって重大な純金融損失」とされています。つまりマイクロソフトがCall of DutyをXbox独占にすれば商業的に損をすることになり、逆に「PlayStationでゲームを提供し続けるインセンティブを持つ」ことが示されたというわけです。
マイクロソフトがCall of DutyのXbox独占化によりどれだけ損をするのかは、文書中では伏せ字とされています。もっとも「実際のCoDゲーマーによる購買行動につき深い洞察を提供する」新たなデータとあり、CMAを納得させるだけの細かな数値が提供されたようです。
とはいえ、まだマイクロソフトにとって関門は残されています。CMAは「クラウドゲーミング市場において懸念をもたらす」との暫定的な見解を崩しておらず、4月末まで調査を続けると述べています。
家庭用ゲーム機市場との違いは、すでにマイクロソフトが世界のクラウドゲームサービスの60~70%を占めていること。さらにXboxや主要なPC用OS(Windows)、AzureとXbox Cloud Gamingといったクラウドゲームインフラを持っている強みが挙げられています。
これに対してマイクロソフトは「この合併(買収)がなければ、アクティビジョンのゲームはクラウドゲームサービスに提供されなかった」と反論。そもそも同社のタイトルが「クラウドゲーム業者にとって重要なインプットになった証拠はない」つまりクラウドゲームでのCall of Dutyの影響力は未知数で考慮に入れられては困ると示唆しているようです。
さらにマイクロソフトは、広くライセンス供与することで「Call of Dutyやその他のアクティビジョンのタイトルが、クラウドゲーミングサービスで広く利用できるようになる」と主張。
やはり、最近矢継ぎ早にくり出されたクラウドゲーミング各社との契約はCMA対策だった模様ですが、少なくとも現時点では効き目は薄いようです。マイクロソフトの本当の戦いは、これからかもしれません。
¥990
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)