今年秋に発売とみられるiPhone 15(仮)シリーズの全モデルが、従来のLightningポートに替えてUSB-Cポートを採用することはほぼ確実視されています。
また、アップルがUSB-Cにもライセンス認証制度「Made for iPhone」(MFi)を持ち込み、MFiを取得していないUSB-Cケーブルや充電器に機能制限を設けることも、複数の識者らが主張していることです。
これらは現時点ではアップルがそう発表したわけでも、事実と認めたわけでもなく、単なる噂話に過ぎません。
しかし、早くも欧州議会のある議員がこれを本当だと仮定し、アップルがEU規則を 回避しようとした疑いがあるとして非難しています。
その人物は、アレックス・アギウス・サリバ議員。2024年秋までにEU域内で販売されるスマートフォンやアクセサリーの充電端子にUSB-Cの採用を義務づける「共通充電機器法」を粘り強く推進した立役者に他なりません。
サリバ氏はFacebook で噂話に言及し、これが本当なら「法律に直接違反する」と主張。そして実際に欧州委員会との緊急会議を開催し、アップルにも担当者を出席するよう要請しました。
その緊急会議でサリバ氏が発言した下りを、IMCO(域内市場・消費者保護委員会)はTwitter上でシェアしています。
サリバ氏いわく「充電スピードに制限を加えることで自社製充電器の販売を有利にし、われわれが課したルールをバイパスしようとしているかどうかの認否をアップルは拒否しました」「この噂が本当なら、アップルが過去10年以上にわたり共通充電機器法に反対してきたのは、彼らが主張する技術革新(の阻害になる)ゆえではなく、すべて利益のためだったことが証明されます」「このような企業は、消費者のことも環境のことも考えていないのです」。
実際アップルは、すべての充電端子をUSB-Cに統一する規則に反対していた当時「技術革新を妨げ、電子廃棄物の山を作り、消費者を困らせる」と主張していました 。
結局この会議にアップル関係者は参加せず(招待を拒否)、サリバ氏は遺憾を表明。その上で欧州委員会はアップルのUSB-C計画について同社に書簡を送る予定であり「アップルのような大企業が、われわれ消費者の権利を犠牲にして、自社のやりたいことをやり続けることはできません」と付け加えています。
しかし、仮に噂話が本当だったとしても、EUの共通充電機器法に違反するかどうかは不明です。一般的にMFi認証はアクセサリー類がiPhoneで正しく動作することを保証するものであり、いわばライセンス料と引き換えに安全性を約束するしくみです。まさに事故による「電子廃棄物の山」をなくす狙いもあるMFiを、真っ向から否定するのは難しいとも思われます。
また、各社のケーブルや充電アダプタの端子形状が同じでもデータ転送速度や充電スピードが異なっている現実がすでにあり、それはUSB-C自体の規格が想定していることです。
まだ発売されてもいないiPhone 15シリーズ、しかも自社と無関係なアナリストやリーカーらが唱えているUSB-C採用説に基づく召喚状に、アップルが応じる動機は薄いと思われます。とはいえ、有力議員をいつまでも無視するわけにもいかないはずで、今後の対応を注目したいところです。
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