コード決済サービスの楽天ペイなどを運営する楽天ペイメントは、7月12日に事業説明会を開催。同社の戦略や課題を解説するとともに、翌13日からスタートしている新たなキャンペーンの狙いを解説しました。
このキャンペーンでは、楽天ペイアプリの楽天ポイントカードを提示すると、ポイント還元率が最大で3倍になるほか、ポイント提示と決済を条件にした抽選も行われます。お友達紹介キャンペーンも強化されています。
楽天ペイメントは、楽天ペイの事業説明会を開催。同サービスの現状や、お得なポイント還元キャンペーンを発表した
こうしたキャンペーンの実施に至った背景には、楽天ペイの知名度の低さという課題があったようです。
オープン戦略を取る楽天ペイは、紐づけられるクレジットカードの種類を問わないため、楽天カード以外でも利用が可能。
この点は、自社クレカに限定しようとして、「改悪」という声が相次いだ結果、対応が延期になったPayPayとは一線を画し、ユーザーからも好評です。
実際、筆者もauじぶん銀行のスマホデビッドを紐づけ、デビットカード的に銀行からお金が引き落とされるようにしています。
ただ、MMD研究所が4月に行った調査では、認知度の順位で3位に甘んじています。発表会では名前が伏せられていましたが、おそらく1位はPayPay。2位はドコモのd払いでしょうか。
この2サービスはネットだけでなく、テレビでも大々的にCMを打っているほか、ソフトバンクショップやドコモショップでの勧誘も積極的。1位のサービスとは、8.1%もの差が開いています。
認知度が低いことは、ユーザー数や決済回数、決済額にも影響を与えます。サービスの運営として見たときには、むしろそちらが低い方が深刻でしょう。
発表会では特に触れられていませんでしたが、同じMDD研究所が1月に行った調査では、「現在利用しているスマホ決済サービス」の項目でPayPayが41.2%と圧勝。楽天ペイは2位ですが、その割合は19.4%で、認知度以上に差をつけられている現状があります。
また、決済回数も、現状ではPayPayがダントツの年47億回。PayPayが7月10日に発表したデータによると、そのシェアは67%にも達しています。
各種データを俯瞰していくと、楽天ペイが負けているというより、PayPayが一人勝ち状態になっている印象もありますが、少なくとも、その前提である認知度を上げないことには勝ち筋が見えないとは言えるでしょう。
一方で、楽天ペイには、先に挙げたように好きなクレジットカードを紐づけられるメリットだけでなく、共通ポイントとして評価の高い、楽天ポイントが貯まる強みもあります。楽天ペイメント 小林重信社長の言葉を借りれば、「圧倒的なポイント経済圏」があるというわけです。
この経済圏の強みを生かし、楽天ペイはSuicaへのチャージも可能にしており、6月には待望のiOSに対応しています。
このような状況の中、「キーとなる1つ目がクレジットカード、もう1つが楽天ポイント、楽天ポイントカード」(執行役員 マーケティング本部長 諸伏勇人氏)です。
楽天カードの規模感を生かした取り組みとしては、上限500ポイントの20%還元キャンペーンを実施中。初めて、もしくは久々に利用するユーザーは全員、その他のユーザーには抽選でポイントを付与しています。こちらのキャンペーンは、6月30日から8月1日まで実施中です。
もう1つが、楽天ポイントをフックにしたキャンペーンで、冒頭で挙げたように、楽天ペイアプリで楽天ポイントカードを表示し、ポイントを貯めた際の還元率が3倍にアップします。元々、2倍のキャンペーンを実施していましたが、7月12日から、この倍率が上がった格好。こちらも、規模感の大きな楽天ポイントユーザーを、楽天ペイに振り向かせるための施策と言えるでしょう。
これらとは別に、招待キャンペーンも13日から強化。招待されたユーザーが税込みで3500円以上の決済をした場合、招待した側、された側の双方に700ポイントが付与されます。
招待は10人まで可能なため、トータルで受け取れるポイントは7000円ぶんにもなります。ポイントが貯まるお得感が評価され、楽天ペイのダウンロード数は23年5月に前年同期比80%増を記録したといいます。
6月ないしは7月にキャンペーンを強化したことで、楽天ペイメントでは「それ以上の成長を目指したい」(諸伏氏)としています。
ただ、こうしたポイント還元だけでなく、コード決済との相性がいいモバイル事業との密な連携も、不可欠なように思えます。
実際、PayPayにしろ、d払いにしろ、ソフトバンクショップなりドコモショップなりで初期設定のサポートをしてくれるほか、回線を契約しているユーザーにはクーポンやポイントでの優遇があります。
先に挙げた認知度の高さも、モバイルを軸にしながらユーザーに利用を呼びかけている点も大きく効いているはずです。
楽天モバイルの回線契約でもポイント還元率はアップするものの、対象は楽天市場。ワンショットのキャンペーンは実施しているものの、恒常的な楽天ペイの還元率には影響がなく、楽天モバイルユーザーが積極的に楽天ペイを利用するメリットが見出しづらい状況です。
楽天ペイ側も、楽天モバイル連携は強化しているようで「4月には、楽天モバイルのショップで初期設定のサポートを始めた」(小林氏)といいます。
一方で、クーポンやポイント還元での連動はまだまだ弱いのも事実。他社と比べるとモバイルの契約者数が1ケタ少ないだけに、シナジーの大きさを測りかねているのかもしれませんが、双方にメリットがありそうなだけに、今後の連携には期待したいところです。