延期約3年、ついに登場したRakuten Link デスクトップ版を試す (石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

特集

楽天モバイルが、「Rakuten Link」のデスクトップ版を8月2日、ついにリリースしました。WindowsとMacの両プラットフォームが対応します。

楽天モバイルユーザーは無料で利用でき、PCから 090 / 080 / 070の電話番号を使った電話の発着信や、SMSの送受信を行えるようになります。スマホをかたわらに置き、PCで作業することの多いユーザーには非常に便利なアプリと言えるでしょう。

ついに登場したRakuten Linkのデスクトップ版

そもそもRakuten Linkとは、RCS(Rich Communication Service)という規格を採用したコミュニケーションアプリのこと。RCSは、ほか3キャリアが「+メッセージ」という名称でサービスを展開しています。

ただし、この+メッセージとRakuten Linkは相互接続をしておらず、互換性はありません。RCSはSMS/MMSを発展させたサービスで、よりリッチなメッセージが扱えるようになります。その一環として、音声通話にも対応可能。Rakuten Linkでは、その両方が実装されています。

Rakuten Linkは、本格サービス開始前の無料サポータープログラムの際に導入された。RCSを使い、さまざまなサービスをこの上で実現している

LINEなどのサードパーティアプリとは異なり、モバイル網のコアネットワークを経由することから、電話番号を直接使えるのがRCSの利点。Rakuten Linkも、Rakuten Link同士だけでなく、一般の携帯電話や固定電話と通話ができます。

とは言え、ユーザーの利用価値が高いのは、やはり通話料の部分。Rakuten Linkを介して発信するだけで、音声定額オプションに入らずとも、料金は無料になります。

0円廃止などで“値上げ”と叩かれることもあった楽天モバイルですが、この部分は、サービスインから一貫しています。一般的な大手キャリアでは、音声通話定額オプションをつけると2000円の料金がかかるため、安さを売りにする楽天モバイルの1つの武器になっています。

3GB以下なら1078円で音声通話まで使い放題になるのは、楽天モバイルだけ。この点まで含めれば、MVNOよりも安価です。

通話料が無料なのは、新規参入当初のまま。6月に導入されたRakuten最強プランでも、音声通話無料は継続している

そのRakuten LinkをPCで使うためのデスクトップ版ですが、導入までは、紆余曲折ありました。同サービスが最初に発表されたのは20年9月。約3年前までさかのぼります。

当時、楽天モバイルは5G対応の「UN-LIMIT V」を発表していましたが、その際に披露されたのがRakuten Linkのデスクトップ版でした。この発表会では、約1カ月後の10月に提供を開始するとしていました。

20年9月の発表会で披露されたスライド。1カ月のはずが、3年近くかかってしまった格好だ

一方で、待てど暮らせど、Rakuten Linkのデスクトップ版は公開されません。そのままお蔵入りかと思いきや、楽天モバイルは諦めていなかったようで、開発は続けられます。

1GB以下0円廃止で物議をかもした22年5月の発表会でも、改めてRakuten Linkデスクトップ版に言及があり、22年内に提供する予定が明かされました。

ただ、年末を迎えても登場する気配はなく、23年5月に開催された「Rakuten最強プラン」の発表会で、再び23年8月というスケジュールが告知されました。

22年5月の発表会でも、デスクトップ版に言及している。当時は22年内に導入する予定だった

発表から3年目ともなると、三度目の正直なのか、二度あることは三度あるなのかの見極めが難しかったのですが、今回は無事にリリースされることになったようです。

8月2日から開催されている楽天グループのイベント「Rakuten Optimism」で、同社会長兼社長の三木谷浩史氏が、1つ目の発表としてRakuten Linkデスクトップ版をお披露目しました。

3年弱延期したあとに出たアプリが依然としてベータ版という位置づけなのが少々気になるところではありますが、これによって、WindowsやMacでも音声通話が発信できるようになった点は評価したいところです。

23年5月の発表内容。三度目の正直となり、ついにリリースされた
Rakuten Optimismの基調講演でデスクトップ版を発表した三木谷氏

アプリ自体は、このページでダウンロード可能。筆者も仕事で使うWindows 11のPCにインストールしてみましたが、特段、設定に詰まるようなところはありませんでした。規約に同意したあと、スマホ側のRakuten LinkアプリでQRコードリーダーを表示し、読み取るだけで設定が完了します。

インストール後は、画面に表示されたQRコードをスマホ側のRakuten Linkで読み取るだけで設定が完了する

アプリには、これまでの発着信履歴やメッセージのやり取りがそのまま表示されます。とりあえず、自分のドコモ回線の電話番号を入れ、PCから発信してみましたが、きちんと電話番号も通知されました。

その履歴から折り返してみたところ、PC側で着信。そのまま電話をすることができました。また、電話帳もスマホ側のRakuten Linkアプリと同期しているようで、登録のし直しなどをする必要はありません。

アプリには、これまでの発着信履歴やメッセージがそのまま表示された。クラウド側から読み込んでいるようだ

SMSも送信できました。ただ少々不可解なのが、PC側のアプリに「PCと楽天モバイル端末が同じWi-Fiネットワークに接続されていることを確認してください」というアラートが出てしまうところ。

同じWi-Fiに接続し、かつ、SMSも送信できているのですが、この注意書きが消えません。また、削除しようとしたメッセージもすぐには消えませんでした。挙動に関しては、まだ不安定なところもありベータ版といった印象です。

PCを使って、そのまま電話を発信することができた。着信側の端末には、きちんと楽天モバイルの電話番号が表示された

Windows版は×ボタンを押してもアプリ自体は終了せず、バックグラウンドで起動し続けます。そのため、明確にPCでの通話をしたくない場合は、常駐アプリのアイコンを右クリックして「Exit」をクリックする必要があります。その状態であれば、スマホでのみ着信するようになります。

上記のような仕様のため、PCとスマホが同一のWi-Fiネットワークにつながっていない場合、PC版のRakuten Linkは利用ができません。

PCとスマホを同じネットワークにつなぐとは限らないため、少々残念ですが、実はこの仕様自体は20年に発表された時から変わっていません。電話番号を使って発着信可能なだけに、SIMカードなし発信にならないよう、何かと制約があるのかもしれません。

利用時には、PCとスマホを同一のWi-Fiネットワークに接続しておく必要がある

やや挙動が怪しい部分や、同一ネットワークへの接続がマストという制約はあるものの、デスクトップ版自体は便利。投入まで3年かかってしまいましたが、他社にはない電話やSMSのサービスとして評価できます。

iPhoneとMacをそろえれば近いことはできますが、プラットフォームを選ばないのはうれしいポイント。正式版の投入にも期待したいところです。


《system》
石野純也

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