VRお仕事アプリの immersed が、空間コンピューティング向けのバイザー型ディスプレイ『Visor』を発表しました。
軽量のバイザー(ゴーグル)型に片眼4K解像度のOLEDディスプレイを搭載し、細かな文字も読める高精細の仮想ディスプレイを、何枚も空間に浮かべて作業するための製品です。
immersed社が2018年から提供中のVRアプリ immersed は、VR空間にPCの画面をミラーリングして最大5枚の仮想マルチディスプレイ環境を作り、集中して作業するためのソフトウェアでした。
immersed初のハードウェア製品となる Visor は、アプリとして提供してきた「PC作業のための仮想マルチディスプレイ環境」に特化して、他社製のVRヘッドセットやメガネ型ディスプレイよりも優れた快適性、視野角、高精細などを提供します。
現時点で予告済みの仕様は、
4KマイクロOLEDディスプレイ x2
視野角100度
「スマートフォンより25%軽い」軽量設計、一日中装着できる快適性、手のひらサイズ
6DoFトラッキング(頭の向きだけでなく前後左右上下も認識)
高解像度カラーパススルー(周辺環境を確認できるARと、完全に没入して集中するVR両対応)
無線・有線両対応
immersedアプリ内蔵。サードパーティーが参加するアプリストア等は非搭載
自社アプリの immersed を理想的な環境で動かすことに特化した仕様です。
アプリストアを用意しないことについては、市場投入までの時間を短くするためと説明しつつ、後日 immersed 以外のアプリをサイドロードして動かすためのSDKを提供する可能性もあるとしています。
immersedアプリはQuest 2などのデバイス向けに数年前から配信中。VRヘッドセットで仮想マルチディスプレイ環境や、遠隔コラボもできる仮想ワークスペースを実現するための定番アプリとなっています。
しかし一般的なVRヘッドセットは広い視野角を実現するためディスプレイを引き伸ばした状態で表示しており、PPD (角度一度あたりのピクセル数)は低く粗い表示で、細かい文字は現実のディスプレイのほうがよほど良く見えます。
一方、最近増えてきた自称「ARグラス」勢、あるいはサングラス型のディスプレイは片眼フルHD程度のマイクロOLEDディスプレイを40度から50度程度の比較的狭い視野角に表示することで、画素が詰まって高精細になり細かな文字も読みやすいものの、表示領域は目の前に浮かんだディスプレイ1枚分だけ。
視野角の狭い「ARグラス」とPCあるいは独自アプリで空間に複数枚のディスプレイが浮かぶ環境を実現するソフトもありますが、同時に見えている範囲は広くならないため、頭を動かして視界に入れる必要があります。
高精細かつ広視野角といえば、Appleが発表した「空間コンピュータ」Vision Proは両目で2300万ピクセル、「片眼につき4K TV以上」の画素数。
視野角の数字は公表していないものの、一般的なVRヘッドセットよりやや狭い程度とされており、Appleも空間に複数のアプリやMacのディスプレイを開いて作業する使い方をアピールしています。
ただし Vision Pro は単体でアプリを動かすため、Mac向けのM2チップと専用のR1チップを採用したり、着用者の表情が外に伝わるようヘッドセットの外側に立体視ディスプレイ、アイトラッキングやハンドトラッキングのため大量のセンサを内外に搭載するなど強烈な仕様を備えており、日本円にして約50万円近い製品。
一般コンシューマーも購入できるようになるものの、今後の「空間コンピューティング」アプリ開発のための開発者向けや、名前のようにプロ向けを想定しています。
immersedが発表したVisorは基本的にPCまたはMacと接続が必須、自社のimmersedアプリのみ対応など仕様を限定することで、Vision Proよりも入手しやすく、軽く長時間装着でき、仮想ワークスペースとして従来以上の環境を提供することを狙います。
Visor のハードウェアを製造を担当するのは、今のところ「Tech Giant」(巨大テック企業)とのみ表現されているパートナー。immersedがいきなり独自に1からハードウェアを作ったわけではなく、外部の大企業と組んで専用デバイスを共同開発した座組です。
Visor の発売は2024年内、価格は今後発表。現在は公式サイト Visor.com でウェイトリストへの登録を受け付けており、予約が可能になった時点でメールが届きます。