三菱電機は2023年8月21日、ルームエアコン「霧ヶ峰」の最新モデル「FZシリーズ(次世代プレミアムモデル)」6機種、「FDシリーズ(次世代暖房強化プレミアムモデル)」5機種、「ZDシリーズ(暖房強化プレミアムモデル)」7機種を発表しました。
非接触センサーによって室内にいる人の「感情」を推定し、それに合わせて空気を整える「エモコテック」を搭載した点が特色の製品です。
エモコテックは2023年2月に発売した「Zシリーズ(プレミアムモデル)」12機種に初搭載しており、今回の新モデルを加えて全30機種に機能を拡充しました。
8月22日に取引先を対象に開催されたプライベート展示会ではメディア向けツアーも開催。同社が2023年2月にスタートした高齢者見守りサービス「MeAMOR(ミアモール)」なども紹介しました。ここでは注目の製品やサービスの機能について解説していきます。
24GHzの「準ミリ波」で脈拍を測定し、独自アルゴリズムで人の感情を推定
エモコテックは、室温や人の温冷感(暑いと感じているか、寒いと感じているか)などを検知して空調を整える赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.(ミライ)+」と、非接触で人の脈を計測し、独自のアルゴリズムによって人の感情を推定するバイタルセンサー「エモコアイ」を組み合わせた独自の空調技術のことです。
脈を測るのに適した周波数24GHz(波長12.5mm)の「準ミリ波」を使用し、ドップラー効果を応用して脈を計測。独自の感情推定アルゴリズムによって、脈拍が早いと「緊張している」、ゆっくりだと「落ち着いている」と判断するほか、脈拍のゆらぎを見ることで活動レベルを判断します。
まず、ベースとしてムーブアイmirA.I.+センサーが外気温の変化や室温、輻射温度から建物性能を学習します。「断熱性や密閉性が低くて室温が変化しやすい」といったことを学習することで、室温の変化を先読みして運転の強さを自動で調節。
さらに、室内にいる人の表面温度をセンシングして温冷感(暑いと感じているか寒いと感じているか)を判断し、2つのプロペラファンからの風を上下左右に吹き分けるようにしています。
最新のエモコテック搭載モデルはさらにエモコアイが加わり、室内にいる人の温冷感に加えて感情を推定します。
通常の自動モードである「おまかせA.I.自動」モードで運転する場合は、脈拍のゆらぎから快・不快の感情を推定し、「ちょうどいい温冷感なのに不快に感じている」と推定した場合は「風よけ運転」によって風を当てないようにするなど、より快適になるような運転を試みる仕組みです。
さらに興味深いのが「フレッシュモード」。これは在宅ワークや自宅学習などしている人が集中できるようにサポートするというモードです。
こちらでは脈拍のゆらぎから脳の活動量の変化を解析し、ウトウトし始めた、集中力が落ちたといった状況を把握すると、風あて運転によって覚醒しやすい空気環境を作るというもの。同社の試験環境では、暖房時約12.5%、冷房時約19.5%の人で効果を確認できたとのことです。
担当者によると、エモコアイのセンシングは毎秒間隔で行っているとのこと。
「おまかせA.I.自動モードはくつろぎ状態を見るため、過去数分間の脈拍のゆらぎから自律神経の状態を判断しています。フレッシュモードは中枢神経系の脳の活動状態なので、1~2分間程度の状態を見て判断しています。ボーッとし始めたからすぐに動くというのではなく、一定時間が経過したときにお客様の集中度か落ちていると判断すると気流をコントロールします」(担当者)
エモコアイでセンシングした情報は、スマホ向けアプリ「MyMU」で確認することもできます。エモコアイでセンシングした心の状態を「エモーションマップ」として表示できるほか、在宅ワーク時や自宅学習時の集中度の変化をグラフ化する「ワークメンタル」機能も備えています。
「『ワーク測定開始』を選んでログを開始すると、家にいるお子さんが集中して学習しているかどうかを見ることができます」(担当者)
そのほか、無料の「霧ヶ峰REMOTE」アプリ(Android/iOS対応)では、ムーブアイ mirA.I.+で取得したサーモグラフィ映像を確認できる「サーモでみまもり」機能も備えています。
カメラ映像のような鮮明さではないものの、家の中で人やペットがどのように過ごしているのかを大まかに表示できるため、プライバシーの問題をクリアしつつゆるやかに見守れるのが興味深いところです。
そのほか、新FZシリーズでは住宅性能(断熱性、気密性、広さなどを総合的に判断)を学習することで立ち上げ時の暖めすぎ、冷やしすぎを防ぐ「エコスタート」機能を搭載し、暖房約7%、冷房約8%の省エネを実現したとのこと。
また、従来モデルでは暖房時に室外機に霜が付いていない状況でも90分に1回の霜取り運転を行っていたのですが、最新モデルではムダな霜取り運転を抑制する制御「快適ロング暖房」機能を搭載することで、最大10時間の連続暖房運転が可能になったとのことです。
2023年2月から高齢者見守りサービス「MeAMOR(ミアモール)」の提供も開始
2023年2月には、新FZシリーズなども含む三菱電機のエアコン(2023年2月以降発売の対象機種)、冷蔵庫(2021年以降発売の対象機種)、給湯器(2018年以降発売の対象機種)を使って高齢者の見守りができる「MeAMOR(ミアモール)」を開始しました。先ほど紹介したMyMUアプリから、アプリ内課金(月額1080円)で利用できます。
MeAMORは対象の家電をいつ使ったかを確認することで緩い見守りができるというもの。エアコンがあれば現在の室温や室温の推移なども確認できるだけでなく、赤外線センサー(ムーブアイシリーズ)が室内にいる人の活動状況を検知してお知らせしてくれます。
エアコンのWi-Fi対応はかなり前から実現しているのですが、2023年2月以降発売機種に限られているのは、最新機種が「エアコン停止中でも見守れる」(担当者)からだそう。
「2023年モデルから停止中でもムーブアイが動く仕様になっています。エアコン停止中にも見守る必要があるため、2023年のモデルから対応しています」(担当者)とのことです。
室温や在宅状況などをチェックするだけなら先に紹介した霧ヶ峰REMOTEアプリでもできますが、より詳細な見守りがしたければMeAMORを導入する選択肢もありそうです。
こうした見守りサービスは、ダイキン工業も2020年からルームエアコン連動型見守りシステム「Daikin Support Life(ダイキンサポートライフ)」を開始しています。専用の「見守り機能付き無線LAN接続アダプター」(オープン価格、実勢価格6万7280円)が必要になるものの、月額料金は無料です。
日本は超高齢社会に突き進んでいる状況なので、今後さらに多くのメーカーがこういったサービスを導入していくことを期待したいです。