Adobe Fireflyは、アドビが誇る画像生成AI技術です。まずPhotoshopのベータ版に導入されましたが、先ごろ、Photoshopの正式版でも使えるようになり、「Adobe Firefly web版」も提供開始されました。
筆者はこの技術をいち早く使うため、Adobe Creative Cloudにお布施を始めました。Photoshopベータ版での生成塗りつぶし・生成拡張を体験するためです。
この技術を使って1枚の写真を救出することに成功したので、報告したいと思います。
救いたかった写真はこちらです。
1981年ごろに撮影された妻の学生時代の写真。表情は素晴らしいのに、顔の上半分が欠けてしまっているのです。これだけのいい笑顔の写真はそれほど多く残っていません。ぜひ、これの完全版を見てみたい。
見えていない部分をAIで拡張する技術を提供しているのはアドビだけではありませんが、Photoshopをはじめ、画像処理の研究に費やしてきた歴史、サンプル数は圧倒的に有利です。これまでできなかったこともできるのではないかと期待していました。
しかし、Photoshopベータ版での生成塗りつぶしは、なぜか規制に引っかかってしまい、顔の拡張がなかなかうまくいきません。運よく生成できた顔も、西洋人のそれで、当時の妻とはかけ離れていました。髪型も当時の別の写真とは違い、「これは別の人」感がありました。
学習されている画像がまだ少ないのかと思い、しばらく使うのをやめていました。しかし、ベータ版だけでなく正式版での提供も開始したというの試してみたら、うまくいったのです。以下は、製品版での手順です。
製品版でFirefly生成AIを試してみた
目的の写真は上の部分が切れているので、まずキャンバスを上に拡張します。その上で、描き足したいところを領域展開。そこで生成塗りつぶしをします。
▲キャンバスを上方向に拡大します
ここはコンテキストに応じてやってくれるので、プロンプトはなしで。すると、妻の顔の上半分が描かれました。え、こんなに簡単に?
ベータ版で試したときのように、外国人女性の顔にならずに、自然に、妻の当時の顔として違和感のないものになっています。おでこが見えていないのも、当時の別の写真と比べて違和感ありません。
ただ、瞳の部分が円形でなく、歪んでいるので、そこは直したい。このまま愛用のiPhoneアプリReminiに持っていって高精細化すると、瞳の形だけが歪んだままになり、不自然さが増してしまいます。そこで、いったんReminiで高精細化したうえで、再度Photoshopに取り込み、部分修正を行いました。瞳の周囲を楕円領域指定し、生成塗りつぶしをします。その前に、鼻の下のゴミをこのやり方で除去しました。
最初は薄いグレイの瞳になってしまいました。形は良いのですが。
▲生成AIが描き足した瞳の色がグレイになっている
そこで、同じように領域指定し、「black pupil」とプロンプトで指定してみると、何回かのトライで自然な瞳になりました。なお、生成には複数のバリエーションが提案されるので、その中から選ぶことができます。プロンプトの右にある「1/3」は3つあるバリエーションの最初の1つということです。
そして出来上がった写真がこちら。完璧な笑顔の妻がそこにいます。
生成された部分との境界が少し不自然だったので、いったんラスタライズした画像を読み込み、その境界領域を生成塗りつぶししたら、ちょっと見ではわからなくなりました。古い写真ということもあり、黒い部分は赤ちゃけていますが、そこは覆い焼きなどで変えられるはず。
と、自分でやる前に、親切な方がレタッチをしてくださったので、これでもう満足です。ありがとうございます。これがPhotoshopの力か!
ありがとう、アドビ。ありがとうジョン・ウォーノックさん、チャールズ・ゲシキさん。あなた方が始めてその同僚のみなさんが作り上げた技術は、大事な1枚の写真を甦らせ、本来持っていたはずの表情を取り戻してくれました。心からの感謝を差し上げたいです。
部分的に欠けているけど、残りを見たい。そんな大事な写真をお持ちの方は多いのではないでしょうか。そんな人は、Photoshopの生成塗りつぶしを試してみてください。また大切なあの人に逢えるかもしれません。