インテルCore Ultra / Meteor Lakeは12月登場。初のNPU搭載・Arc GPU統合・歴代最高効率など「過去40年最大の転換」

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Ittousai

Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

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サンノゼで開催中のイベント Intel Innovation 2023基調講演より。インテルのゲルシンガーCEOが、最新のクライアントPC向けプロセッサ『Core Ultra』を発表しました。

Core Ultra は開発名 Meteor Lake として知られてきたプロセッサ。インテルが「過去40年間で最大のアーキテクチャ転換」と呼ぶ大規模な再設計や新技術の導入により、歴代最高の電力効率(省電力)や単体GPU級グラフィックなど高い性能を備え、Wi-Fi 7ほか最新の規格に対応します。

特徴はインテル初のNPU (AIエンジン)統合・「3Dパフォーマンスハイブリッド」設計による歴代最高の電力効率 / 省電力・Intel Arc統合によるXeSSやレイトレーシングなど単体GPU級のグラフィック性能・CPUコアに新マイクロアーキテクチャと最新製造プロセス Intel 4を採用した高性能・高効率

規格としてはWi-Fi 6EおよびWi-Fi 7、AV1コーデックや8K HDR、HDMI 2.1やDP 2.1ネイティブ対応、Thunderbolt 4、PCIe Gen5などに対応します。

Core Ultraプロセッサは12月14日に正式リリース予定。モデル構成等はまだ明らかになっていません。インテルが「AI PC」と呼ぶCore Ultra搭載PCも、各社から登場します。

4つの「タイル」で再設計・仕切り直し

もっとも大きな再設計のひとつは、チップを機能ごとにプロセスの異なる4つの「タイル」(チップレット)として製造し、PC向けプロセッサとしては初の3D積層パッケージング技術Foveros 3Dで広帯域・高速に統合したこと。そしてタイルごとの機能や分担を仕切り直したこと。

タイルの種類はCPUで高性能な演算を分担する「Compute」、Arcを採用した「グラフィックス」、Thunderbolt 4など入出力を担う「I/O」、そしてNPUやメモリコントローラを含み省電力の要となる「SoC」

最新プロセス技術の Intel 4で製造されたのはこのうちComputeタイル部分。機能ごとに最適な製造プロセスで作られたチップレットをFoveros 3Dでパッケージングすることで、柔軟な構成やコストパフォーマンスを実現します。

このタイル設計と、各タイルに割り振る機能の仕切り直しのひとつは、従来のCPUコア群にあたる「Compute」タイルだけでなく、「SoC」タイル内にも低消費電力の独立区画「Low Power Island」と専用のEコアを持つ「3Dパフォーマンスハイブリッド」アーキテクチャ。

処理の重さに応じて、性能優先で消費電力の多いPコアか、効率優先で消費電力の低いEコアのどちらかを使うのは従来のCPUと同じ仕組みですが、一般的なPC作業時間の多くを占める低負荷の状態ではSoCタイル内のEコアを使い、従来の「CPU」部分を呼ばないことで超低消費電力を実現します。

従来のプロセッサでは、CPUが「セントラル」プロセッシングユニットの名のとおり中心となり、必要に応じてGPUなど専門のプロセッサに定型的な処理を投げる仕組みでした。

しかしCore Ultraではある意味、「CPU」(Computeタイル)もGPUのようにハイパフォーマンス演算担当の専用部隊になり、かわりに低消費電力のSoCタイルが中心となって、必要な時にだけComputeタイルを呼び出す仕組みです。

ネット動画のストリーミング視聴といったシナリオでは、モダンなプロセッサならば動画デコードのような定型処理は電力コストの高いCPUを使わず、専用のメディアエンジンで処理できますが、アプリやOSの汎用処理が割り込めばやはり頻繁にCPUを呼ぶ必要がありました。

Core Ultra / Meteor Lake の「3Dパフォーマンスハイブリッド」アーキテクチャは、例えれば人員の多い「本社」(Computeタイル)の外に小さな「出張所」(Low Power Island E-Core)を設けることで、定形外の処理が発生した場合もよほど複雑でない限り現場で対応させ、本社の計算部門を投入する必要をなくしたようなもの。

Meteor Lakeの設計全体に及ぶこうした「仕切り直し」の例は、
・動画のデコードや画像処理といったメディア処理ブロック(IP)を「グラフィックス」タイルではなく低消費電力のSoCタイルに持たせる
(軽い処理なら外付けGPUをオフにして統合GPUで処理するのと似た仕組みをCore Ultra自体が持つ)
・それぞれのタイルやIPが独立してメモリ・キャッシュアクセスできる(よそのタイルを起こして経由する必要がない)
・それぞれのタイル、IPを個別にオンオフ可能にする

さらにチップ全体の電力消費を管理するパワーマネジメントについても、従来のように単一のパワーマネジメントコントローラ(PMC)で処理するのではなく、各タイルごとにPMCを持たせ、SoCタイル内のP-UNITがそれぞれを統括しシステムソフトウェアとやりとりするなど、根本的な再設計を施しています。

NPUの使い道

プロセッサにAIエンジン(NPU)を組み込むのは特に画期的な発想ではなく、AppleのiPhone向けSoCであるAシリーズをはじめ、低消費電力と高速応答が重視されるスマートフォンでは標準的に採用されています。

インテルのパット・ゲルシンガーCEOによるInnovation 2023基調講演では、

・LLMを使ったパーソナルAIのRewind.ai で、通常はGPT-4と通信するところを、オフライン状態のLlama2でローカル処理して質問に回答。Rewind.ai はユーザーが見たもの(画面に表示したコンテンツ)・聞いたものをすべて学習して、個人の外部記憶として機能することをうたうソフトウェア。プライバシーの観点からローカル動作は意義がある

・Acerが発売予定のCore Ultra採用Acer Swift「AI PC」ノートで、Stable Diffusionを使った壁紙画像生成と、生成した静止画から視差効果で奥行きを持たせ、カメラと連動して立体的に表示するデモ

・ゲルシンガーの補聴器とPCの連動デモ。ビデオ会議を始めたことで自動的に周囲の騒音をカットするフォーカスモードへ。フォーカスモードの間もPCが周囲の音響を分析しており、ドアがノックされた等を通知する。

反応して振り向くと周囲の音が聞こえるアンビエントモードに、用を済ませて戻ると再びフォーカスモードに。離席中の発言をAIが要約してテキスト表示。

ローカルにもNPUを持たせました、はスマホと比較するとやっとか感がありますが、インテルはクライアント向けプロセッサからエッジ、クラウドまで、個々のシリコンからソフトウェア、開発者向けサービスまで全力でAI推しシフトを示しており、PC向けプロセッサのNPUはその一環として役割を果たします。

Arcを統合してグラフィック性能/電力効率2倍、レイトレーシングやXeSSに単体で対応

4つの「タイル」のひとつとして、インテルのゲーミング向けGPUと同じ Arc を搭載したことも特徴です。

タイル・IP(機能ブロック)ごとにオンオフできる仕組みで省電力を維持しつつ、従来の統合型グラフィック Iris Xと比較して2倍の性能 / 電力と、ディスクリート版のArcと同じDirectX 12 UltraやXeSS、レイトレーシングなど先進的なグラフィック機能をサポートします。

実際のコア数やグラフィック性能はCore Ultraシリーズの製品によって構成を選択できます。

「Core ウルトラってそもそも何だよ?i7なのi9なの??」については、こちらのブランド刷新解説をどうぞ。

実際の商品構成としては、i7にあたるCoreウルトラセブンもウルトラナインもラインナップされるはずです。


《Ittousai》
Ittousai

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