Ubisoftが1月15日(日本は18日)に発売する、新作ゲーム『プリンス・オブ・ペルシャ 失われた王冠』のなかで、一部NPC(Non Player Character)のセリフが、テキスト読み上げソフトによる仮の音声のままリリース版に含まれてしまっていることがわかりました。
ゲーム情報サイトIGNは、問題のNPCは木の精霊として登場するKaluxというキャラクターで、他のセリフのあるキャラクターはすべて声をあてた声優がクレジットされているのに対して、Kaluxのみ声優の名前が見あたらないとしています。このキャラクターのセリフは数えるほどしかなく、製作側がうっかり見落としてしまった可能性があるとのことです。
このゲームの音声を担当した制作スタジオSide UKは、「才能あるプロの声優との協力によるキャスティング、制作管理、音声監督、音声録音、ポストプロダクションを提供している」ものの「Ubisoftがテキスト読み上げソフトを使用していることや他にどんな音声制作スタジオと協力しているのかは知らなかった」と述べました。
Ubisoftも、問題の音声は自社でプレースホルダーとして入れたものだと認め「このキャラクターの8行しかない音声の英語版は適切に実装されていませんでしたが、今後のパッチで更新、置き換えられる予定」だとしました。
なお、このゲームは、発売当日に最初のパッチが配信される予定です。しかしKaluxの声優による音声への置き換えはそれには間に合わず、1月下旬またはその翌月上旬に予定されるパッチでの修正になるとのことです。
『プリンス オブ ペルシャ 失われた王冠』の音声会話は全部で1万2000以上あり、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ペルシャ語で音声が制作されています(日本語を含むその他の言語は字幕表示で対応)。
今回の事例は、ゲーム内キャラクターの音声を声優でなくAI音声やテキスト読み上げプログラムで制作しても、もうゲーム開発者自身が気づかないほどリアルになっているため、声優の仕事が減らされるかもしれないといった方向性の話題ではありません。
すでにAI音声でゲーム内のセリフをあてている例としては、CD Projekt Redの『Cyberpunk 2077』があります。このゲームでは、DLCですでに亡くなっているヴィクター役の声優ミウゴスト・レチェクの声を、AIによる音声クローンを使って収録しています。CDPRは音声クローンをの使用についてレチェクの遺族に了承を得ており、目立った批判はなかったようです。
一方、昨年のオープンベータから好評を集めているFPSゲーム『The Finals』では、ゲームのセリフにAI合成音声を使用し、さらにそれが「質においても十分すぎるほど」だと開発者が発言したことが、声優や他の開発者たちからの批判を呼び込むきっかけになっていました。しかしそれでも『The Finals』を開発するEmbark StudiosはAIツールを活用することで「作業をより速く、より良く、少ない能力でより多くのことができる」とし、積極的に取り入れる姿勢を打ち出しています。
ゲーム内の会話音声に関する最新の技術としては、Nvidiaが昨年発表した、リアルタイムにセリフを合成し、プレイヤーとの音声会話を実現する技術Avatar Cloud Engine(ACE)があります。CES 2024では、Ubisoftがこの技術を使う最初のゲーム開発企業のひとつとして発表されています。