人間が作ったものと聞き分けが困難なレベルの高品質楽曲が生成できると評判の生成AI作曲サービス「Suno」。
これまで数回にわたって、最新バージョンであるV3 Alphaについて記事にしてきましたが、ついに近々Alphaが取れて、正式バージョンになるようです(22日に正式公開されました)。
SunoのX公式アカウントは、3月20日の投稿で「V3 is coming in 3…」、21日には「V3 is coming in 3, 2…」と書いているので、おそらくあと2日で。つまり、23日には利用可能になりそうです(カウントダウンは1を経由せず、日本時間の22日早朝に正式公開されました)。
すでにV3 Alphaでたっぷり遊んでいる自分としては、一般公開時に皆さんがスタートダッシュできるように、改めて使い方をまとめておこうと思います。実は、記事掲載後も細かい改良がされていて、以前レポートしたものからだいぶ変わっているんですよね。
Sunoを使う2つの方法 その1:Microsoft Copilotはモバイルでも使える
Sunoは、「こんな曲にして」とテキストで指定すると、その希望に沿った曲を作ってくれるサービスです。演奏だけでなく、ボーカル入りの楽曲も生成できます。
自社のサービス(app.suno.ai)だけでなく、Microsoft Copilotのプラグインとしても提供されており、プラグインをオンにしておけば、Copilotのプロンプトから直接、曲を生成できます。
数十秒で歌詞を生成し、曲が完成します。出来上がった曲はダウンロードしたり、プレイヤーページをXなどのSNSで共有することもできます。
執筆時点では、Copilot版Sunoは1つ前のV2。音質、作曲能力、長さなど、あえてこちらを使うメリットはないと思われますが、Copilotとのチャットのやり取りで作曲できるメリットには大きいものがあります。
例えば、「練馬区の今の天気についての曲を作って」といった問いかけに、現在の天気情報を反映した歌詞で応えてくれますし、その内容が気に食わなかったら、「風がとても強くて吹き飛ばされそうだったので、そのことも歌詞に入れて、曲を作り直して」と追加して、望みの曲を作らせることができます。
出来上がった曲はダウンロードが可能で、Web上の再生ページはX、FacebookなどのSNSに共有することができます。
12月のCopilot版Sunoローンチ時にはモバイルには対応していませんでしたが、現在はiPhone版CopilotアプリでもSunoプラグインが設定可能になっています。iPhone版Copilotアプリなら、音声で作曲内容をインタラクティブに指示して成果を聴けます。
▲iPhone版Copilotアプリにはプラグイン設定メニューができて、Sunoもオンにできる
▲iPhone版CopilotでSunoの作曲ができた
これで、デスクトップでも、モバイルでも、1日3曲までなら対話しながら作曲ができるというわけです。自分の今の気持ちをそのまま歌にしてもらえる楽しさはけっこう強烈な体験で、将来的にはSpotifyやApple Musicのライバルとなりうるものだと感じました。1日3曲の制限がもどかしい。
Suno V3が正式版になったら、Copilot版もV3になるか。制限事項はどう変わるのか、興味深いところ。Copilot版でSunoのフル機能が使えるのであれば、追加課金が必要であっても利用してしまいそうです。
3月22日追記:Suno V3が正式公開されましたが、Copilot版はV2のままのようです。
Sunoを使う2つの方法 その2:Suno V3はインストにも対応し、長い曲を作りやすくなった
Suno V3(執筆時点ではAlpha版)は、大きな特徴として、インストゥルメンタル曲を指定できるようになったこと。従来も可能ではあったのですが、トグルスイッチでInstrumentalにセットしておけば、明示的にインスト曲になります。
もう1つは曲長の問題。これまで1分20秒くらいが一度に作れる長さの限界だったのが、最長で2分まで伸びたこと。このことにより、短めの曲ならば、最後まで完結させることが可能になりました。
まずは、作例をお聞きください。
まずは、作例をお聞きください。最初の2曲は「クラシック」だけ。 次の2曲は、「1980年代の疾走感のある日本のフュージョン。ドライビングに最適なやつ」と指定したものです。
こんな単純な指定で、これだけの品質のインスト曲ができてきます。いずれも最大2分間の長さ。短い尺の動画であれば、十分にBGMに使えるものです。
気に入った曲は、さらに1分ずつ伸ばすこともできます。
気に入った楽曲の右側にある「…」をクリックすると出てくるメニューから、「Continue From This Song」を選びます。すると、画面左側に「Continue from 02:00」というフィールドが表示されます。02:00というのは、ここから続けたいというポイントで、デフォルトは元曲の最後の部分なので02:00。そこは任意に変更できます。
これでContinueボタンを押すと、続きを生成してくれるのですが、そこからは今回使った簡易モードではなくCustomモードに変更を強制されます。つまり、Custom Mode、Instrumentalを設定し、Style of Music、Titleにもそれぞれ入力する必要があります。今回は、元曲のものをそのまま入れることにしましょう。Titleは適当なものでいいです。
これでContinueを押せるようになったので、続き(Part 2)を生成します。元曲と同じように、1回の指示で2曲が生成されます。
続きは最大で1分。今回は1分のものと、53秒のものができました。このうち、53秒のバージョンを採用することにします。
楽曲の右側にある「…」をクリックすると出てくるメニューから、今度は「Get Whole Song」というコマンドを選択。すると、2分53秒の曲ができました。元曲と、Part 2が合体し、1つの曲となったのです。
聞き直してみると、つなぎめの盛り上がるところが1音多くて不自然なので、続きのポイントを01:57に変更してもう一度生成します。
すると、今回は盛り上がらずに静かに終わっていくパターンとなりました。最終版は2分29秒です。試行錯誤の様子を動画にまとめましたので、使わなかったバージョンもお聞きいただけます。
Continueのポイントを調整すると、それぞれのPartで曲調を大きく変更することも可能です。イントロはボーカルが入らないようにしたい場合には、冒頭はInstrumental設定にし、イントロ向きのパートが終わるポイントでContinue From This Songを指定して、そこからInstrumentalを外して歌詞を入れ、Style of Musicも指定し直すといったことも可能です。このやり方をうまく使ったワークフローの例がこちらにあるので、参考にどうぞ。
Sunoで作った曲を音楽配信に流せるか?
この連載でもレポートしたように、架空のプログレバンドによる架空のコンセプトアルバムを捏造したのですが、この出来が思いの外良くて、妻の歌声と自分のボーカルでカバーを3曲作ってしまったくらい気に入っています。
この原曲をもっと良い音質で、どこででも聴きたいと思い、友人のレーベル運営者に相談したところ、リリースに動いてくれることになりました。
架空のプログレバンドThe Midnight Odysseyによるオリジナルコンセプトアルバム「The Odyssey of Echoes」が、各種音楽配信で聴けるようになる予定です。
詳細は別途記事にする予定なのでお楽しみに。
ところで、先日こんな出来事がありました。
この話を目にして、こんなことをSuno V3 Alphaでやってみました。
「生成AIによって描かれたイラストに対し、既存の絵師たちによる憎悪が高まっている現状を憂いた歌詞を感動的に書いてください」とClaude 3に指示してできた歌詞を、Suno V3 Alphaに作曲させたものです。最初のイメージは歌詞からDALL-Eで生成し、アニメーションはこのイメージからスタートするKaiberのFlipboardで。
これまでは有償ユーザーのみが使えていたV3が、多くの人に使えるようになったら、どういうことが起きるのか、楽しみです。