1974年に打ち上げられたものの軌道上での配備に失敗し、1990年代に地上のレーダーによる監視からも姿を消して行方不明になっていた米国の人工衛星が、今週25年ぶりにその姿を現しました。
Infra-Red Calibration Balloon(赤外線較正気球、IRCB)と呼ばれるこの人工衛星は、米空軍の宇宙試験プログラムの一部としてKH-9ヘキサゴン衛星とともに1974年4月10日に打ち上げられ、軌道上で配備される予定でした。
しかし、軌道上でバルーンを膨張させ、リモートセンシング機器の校正ターゲットとして機能するはずだったIRCBは、高度約800kmの軌道への配備途中で制御を失い、結局そのままスペースデブリと化しました。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天体物理学者ジョナサン・マクダウェル氏は今週、IRCBが観測データに姿を現したのを発見し、米国宇宙軍の第18宇宙防衛中隊の軌道オブジェクト追跡データを調べたところ、この衛星は1990年代にレーダーから姿を消し、25年の時を経て発見されたことがわかりました。
米国宇宙軍は、軌道を監視するレーダーと光学センサーを駆使して、軌道上にある2万個以上のオブジェクトを追跡しています。しかしこれらオブジェクトの大半はもはや地上に自分の身元を伝えるようなデータを送信していません。
そのため、検出されたオブジェクトは、軌道を特定し、これまでに打ち上げられた衛星が使っていた軌道と照合することで、何かを把握しています。
宇宙で行方不明になるオブジェクトのほとんどは、大抵は役目を終えた衛星やロケットブースター、もしくはそれがバラバラになった破片であることが多いとされます。
国防総省の世界的な宇宙監視ネットワークは現在、軌道上にある2万7000以上の物体を追跡しています。そして、その大半は使用済みのロケットだったりすでに使われていない衛星、または現役の衛星だとのことです。
近年、地球周回軌道は何千もの小型衛星によるコンステレーションや、それを打ち上げるロケットで、以前よりも混雑を増しています。
2021年にはロシアが「Kosmos 1408」と呼ばれるソ連時代の偵察衛星を、対衛星兵器実験として弾道ミサイルで破壊、大量の破片を軌道上にばらまいた事例もありました。ロシアは昨年も、Kosmos 2499が軌道上で分解し数十のデブリが発生する問題を起こしています。
マクダウェル氏は、こうした大量のオブジェクトについて「1つや2つを見失ったとしても、たいしたリスクにはならない」としつつも「それでも、仕事は可能な限り完璧にこなしたいものです」と述べました。