作曲AIはプログレッシブロックの夢を見るか? Udioが長く一貫性のある曲を作れるようになった理由(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

作曲AIサービスのUdioが5月1日、新機能を搭載したとX上で発表しました。長く、一貫性のある曲を作れるようになると謳っています。

具体的には、context-windowを従来の30秒から2分にまで引き上げることで、Aメロ(Verse)やサビ(Chorus)といった曲の構造をより一貫性のあるものにするというもの。

これだけだと、従来は1回に作れる曲の長さが30秒だったのが2分までになってSunoと同等になる……と思ってしまいますが、そうではありません。

自分もこれを誤解していて、何度やっても33秒のままで、何か方法があるのかと思案していたところ、こんなアドバイスをいただきました。

これまでは30秒の参照範囲から30秒の曲を作っていたのが、その4倍である2分分を参照して、そこから30秒分の生成が可能だということ。つまり、その2分にAメロやサビが含まれていれば、曲をどんどん拡張していっても、サビやAメロが全く別のコード進行やメロディーになることなく、モチーフがちゃんと繰り返されるということになります。

つまり、長い曲を作っても、破綻することが少なくなるということです。

さらに、これまでは最長でも4分30秒までが長さの限界でしたが、それが最長15分にまで拡張されました。

30秒ずつ伸ばしながら長い曲を作っていると、自分が今どの作業をやっているのか迷ってしまうことがあります。それを解消するために、ツリー構造での表示も可能になりました。

ということは……。

プログレが作れる!

往年のプログレッシブロックのように、レコードの片面(20分以上)が1曲で占有されるというのは無理にしても、長くて展開があって、さらにモチーフがちゃんと残っている曲が作れるはずです。

ということでやってみました。完成版はこちら。曲名は「Cosmic Resonance」。

プロンプトは、

progressive rock, 1970s progressive rock, distinct bass guitar, hammond organ, minimoog, mellotron, male vocalist, chorus, epic, album rock,Male vocalist

としました。すると、

Symphonic prog, Progressive, Melodic, Art rock, Lush, Album rock, Surreal, Progressive pop, Mysterious, Bittersweet, Epic,

といったキーワードをUdioが補ってくれました。

これで最初の30秒を作ると、Yesの根幹をなすクリス・スクワイヤーみたいなソリッドでメロディアスなベース、リック・ウェイクマンばりにポルタメントを効かせたMinimoogのフレーズ、ボーカルが入ってくると、その声はジョン・アンダーソンっぽいクワイヤボイス。ドラムはビル・ブルフォードやアラン・ホワイトのように変拍子を叩きまくっているし、ギターソロはクリーンでありながらメロディアスで随所に速弾きも披露しています。

これは贔屓目(耳)でしょうか。プログレッシブ・ロックの代表的なバンドであるYesを思わせるサウンドに仕上がっているようです。ボーカルの声質はジョン・アンダーソンに近いけど歌い方がちょっと違ったり、ギターはスティーブ・ハウというよりは、アルバム「90125」で加入したトレヴァー・ラビンっぽい感じだったりと、細部はいろいろ異なっていますが、Yesのメンバーが入った派生バンドのどれか、と言われればそう思ってしまうくらいの出来です(プログレではPink FloydとELPの方が好きな個人の感想です)。

もちろんこれは一発でポンと出てきたわけではなく、試行錯誤しながら作っていったわけですが、リズムパターンやハーモニーを変えながら変奏していくスタイルはまさにプログレの黄金パターン。

長さは6分30秒。曲を長くするために、Extendで伸ばすときにAuto-generatedではなく、Instrumentalを何度か選択。そのおかげで長く展開のあるギターソロが生まれました。

それでもその後にボーカルありにしても、ちゃんとサビのメロディーラインはそのまま残っているのはcontext-windowが2分に伸びたおかげだと思います。

ただ、この長さのせいなのか、Udioでのリリックビデオの生成は何度トライしてもできませんでした。ビデオ生成はサービス開始時からずっと問題が起き続けています。ここへの計算リソース割り当ては少ないのでしょう。

そこで、Memeplexでタイトルや情景をプロンプトにして画像をいくつか生成して背景にしています。

Yesのアルバムカバーを担当していたロジャー・ディーンやヒプノシスほどではありませんが、これも気に入っています。

さて、曲としては完成しましたが、さらなる楽しみもあります。作成した楽曲からジョン・アンダーソンに似ているボーカルを分離して、それをVocoflexに読み込むのです。

そうすると、リアルタイムで偽ジョン・アンダーソンになりきれるかもしれません。これはこれで問題が起きそうな予感もしますが、トリビュートバンドはこうしたことが一般的になるのかもしれません。

以前、山崎潤一郎さんと、Yesの代表曲である「Roundabout」でジョン・アンダーソンのパートををやったことがあるのですが、この声質ならもっとジョン・アンダーソンに寄せられるかもと思ったりしてます。もう一度オケをもらって歌おうかな、と。

このUdio新機能を使ってプログレ曲をその場で作ってみるライブ放送を、5月8日の正午に行います。よかったらどうぞ。


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《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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