AI研究家の清水亮さんが面白いことをやっています。「Lispっぽい記法で書けるけど他の言語に慣れた人にも使える言語」の処理系だそうです。
新しい処理系「EasyLisp」をClaudeを使って開発してみたということで、そうか、そういう方向性もあるのかと感心しました。
自然言語で同じようなことができるか、Claudeを使ってやってみようと思い立ちました。
Claude 3.5 Sonnetに次の問いを投げかけました。
現在の日本語をベースにして、表記文字はアルファベットのみを使った新しい言語の仕様を考えて。非ネイティブが使いやすく、覚えやすく、日本語話者も再学習が容易なものとする
回答は次のとおり。
新しい日本語ベースの言語の仕様を考案しました。この言語をJaphalbet(ジャファルベット)と呼ぶことにします。以下に主な特徴を示します:
文字体系:
アルファベットのみを使用
長音は母音を重ねて表現 (例: aa, ee, oo)
撥音は「n」で表現
促音は子音を重ねて表現
文法:
基本的な語順はSVO(主語-動詞-目的語)に変更
助詞は省略し、語順で文法関係を表現
時制は動詞の後に付加語を追加 (例: -ta for過去, -ru for現在/未来)
発音:
日本語の発音規則を基本とするが、「つ」は「tu」、「ふ」は「fu」と表記
語彙:
日本語の語彙を基本とするが、複雑な漢語は簡略化
外来語はそのまま使用可能
例文を示しましょう:
日本語:私は新しい言語を学んでいます。 Japhalbet:watashi gakunsuru atarashii gengo
日本語:明日東京に行きます。 Japhalbet:watashi ikuru tookyo ashita
これらの特徴により、非ネイティブにとって学びやすく、日本語話者にとっても習得しやすい言語システムになっています。さらに詳しい仕様や例を知りたい場合は、お知らせください。
(▲Claude 3.5 Sonnetに新しい日本語の仕様を考えさせた)
ネーミングセンスは別にして、悪くないのではないでしょうか。ローマ字のみの日本語運動に近いものですが、違いはどこにあるのでしょうか。これもClaudeに聞いてみました。
ローマ字運動とJaphalbetの比較分析
1. 歴史的背景
ローマ字運動
明治時代から始まり、特に1880年代から1950年代にかけて盛んになった。
田中館愛橘や前島密などの知識人が推進した。
国際化や識字率向上を目的としていた。
Japhalbet
現代的なアプローチとして考案された仮想の表記システム。
グローバル化と言語学習の簡易化を目的としている。
2. 表記システム
ローマ字運動
主に訓令式、ヘボン式、日本式の3つの方式が提案された。
日本語の音韻をできるだけ忠実に表現することを目指した。
Japhalbet
英語話者にも読みやすいように設計されている。
一部の音(例:つ→tu、ふ→fu)は英語的な発音に寄せている。
3. 文法構造
ローマ字運動
基本的に日本語の文法構造をそのまま維持。
助詞や活用もそのまま残す。
Japhalbet
SOV(主語-目的語-動詞)からSVO(主語-動詞-目的語)への語順変更。
助詞の簡略化や省略。
動詞活用の簡素化。
4. 目的と対象
ローマ字運動
主に日本人向けで、国内での使用を想定。
漢字廃止や識字率向上が主な目的。
Japhalbet
非日本語話者も対象に含む。
日本語学習の障壁を下げることが主な目的。
5. 文化的側面
ローマ字運動
日本の近代化と西洋化の一環として推進された。
伝統的な日本文化との対立を生んだ。
Japhalbet
日本語の基本的な音韻体系を保持しつつ、国際的な理解を促進。
文化的なニュアンスの一部は失われる可能性がある。
6. 実現可能性と普及
ローマ字運動
一部の分野(例:コンピュータ入力)で採用されたが、全面的な置き換えには至らなかった。
教育現場では補助的な役割として定着。
Japhalbet
仮想的なシステムであり、実際の普及は想定されていない。
言語学習や異文化コミュニケーションのツールとしての可能性がある。
結論
ローマ字運動とJaphalbetは、どちらも日本語の表記をラテン文字化する試みという点で共通していますが、その目的、アプローチ、そして想定される使用範囲に大きな違いがあります。ローマ字運動が日本の近代化と識字率向上を主眼としていたのに対し、Japhalbetは国際的な日本語学習とコミュニケーションの促進を目指しています。
また、ローマ字運動が日本語の文法構造をほぼそのまま維持したのに対し、Japhalbetはより大胆な文法の簡略化を提案しています。これは、Japhalbetが非日本語話者にとっての理解のしやすさを重視しているためです。
結果として、ローマ字運動は日本社会に一定の影響を与え、特に技術分野での応用を見出しましたが、Japhalbetは現時点では理論的な提案に留まっています。しかし、Japhalbetのアプローチは、グローバル化が進む現代において、言語学習や異文化コミュニケーションの新たな可能性を示唆しているといえるでしょう。
比較してみると、Japhalbetはなかなかいいものである可能性が出てきました。
外国人話者向けのより詳細な入門文書はこちらです。
Japhalbet: A Comprehensive Guide
1. Introduction
Japhalbet is a novel writing system designed to represent the Japanese language using only the Latin alphabet. It aims to make Japanese more accessible to non-native speakers while retaining the essence of the language. This guide will walk you through the fundamentals of Japhalbet, its grammar, and usage.
2. Basic Alphabet and Pronunciation
Japhalbet uses the standard 26 letters of the Latin alphabet. The pronunciation generally follows English conventions, with a few exceptions:
'j' is pronounced like 'y' in "yes"
'y' is used as a vowel, pronounced like 'i' in "bit"
'tu' represents the つ sound
'fu' represents the ふ sound
3. Vowels and Consonants
3.1 Vowels
a - as in "father"
e - as in "bet"
i - as in "meet"
o - as in "go"
u - as in "tune"
3.2 Consonants
Consonants are generally pronounced as in English, with the exceptions noted in section 2.
4. Syllable Structure
Japhalbet syllables typically follow a (C)V structure, where C is a consonant and V is a vowel. For example:
ka, ki, ku, ke, ko
sa, shi, su, se, so
ta, chi, tu, te, to
5. Grammar
5.1 Word Order
Japhalbet uses SVO (Subject-Verb-Object) word order, unlike Japanese SOV structure. For example:
Japanese: 私はりんごを食べます。(Watashi wa ringo wo tabemasu.) Japhalbet: watashi taberu ringo
5.2 Particles
Particles in Japhalbet are simplified and often omitted when the meaning is clear from context:
'wa' (は) becomes 'wa' or is omitted
'ga' (が) becomes 'ga' or is omitted
'wo' (を) is usually omitted
'ni' (に) becomes 'ni'
'de' (で) becomes 'de'
5.3 Verb Conjugation
Verbs in Japhalbet are simplified:
Present/Future tense: Base form (e.g., taberu)
Past tense: Add '-ta' to the base form (e.g., taberu-ta)
Negative: Add '-nai' to the base form (e.g., taberu-nai)
Past negative: Add '-nakatta' to the base form (e.g., taberu-nakatta)
5.4 Adjectives
Adjectives in Japhalbet come before the noun they modify:
akai ringo (red apple)
I-adjectives and na-adjectives are treated the same in Japhalbet.
5.5 Politeness Levels
Japhalbet primarily uses the plain form, but can indicate politeness by adding '-desu' to sentences:
Plain: watashi taberu ringo
Polite: watashi taberu ringo desu
5.6 Questions
Questions are formed by adding 'ka' at the end of a sentence:
watashi taberu ringo ka? (Do I eat an apple?)
6. Special Features
6.1 Long Vowels
Long vowels are represented by doubling the vowel:
okaasan (mother)
tooi (far)
6.2 Doubled Consonants
Doubled consonants (っ in Japanese) are represented by repeating the consonant:
kitte (stamp)
gakkou (school)
6.3 Counters
Counters are attached directly to numbers:
san-nin (three people)
go-hon (five long objects)
7. Example Sentences
watashi wa jon desu. (I am John.)
kinou watashi tabeta sushi. (I ate sushi yesterday.)
kanojo wa atarashii kuruma wo katta. (She bought a new car.)
anata wa nihongo wo hanaseru ka? (Can you speak Japanese?)
watashi wa ashita tokyo ni ikuru. (I will go to Tokyo tomorrow.)
8. Conclusion
Japhalbet offers a simplified way to write and learn Japanese using the Latin alphabet. While it doesn't capture all the nuances of the Japanese language, it provides a practical method for beginners to start communicating in Japanese-inspired language quickly. As with any language learning, practice and immersion are key to mastering Japhalbet.
どうせなら、Jalphabetのロゴも作ってもらいましょう。Midjourney向けのプロンプトを考えてもらって最終的に選んだのがこちら。かっこいいです。
(▲Midjourneyで作成したJaphalbetのロゴ)
最後に、Jalphabetで記述した桃太郎の物語を対訳でお届けしましょう。
桃太郎の物語 - 日本語とJaphalbet対訳
Momotaro no Monogatari - Nihongo to Japhalbet Taiyaku
日本語版 (Japanese Version)
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきました。おばあさんは喜んでその桃を拾い上げ、家に持ち帰りました。
おじいさんとおばあさんが桃を切ろうとすると、中から元気な男の赤ちゃんが飛び出してきました。二人は驚きましたが、とても喜んで、その子を「桃太郎」と名付けました。
桃太郎は すくすくと育ち、強い若者になりました。ある日、桃太郎は鬼ヶ島の鬼たちが村々を荒らしていることを聞き、鬼退治に行くことを決意しました。
おばあさんは桃太郎のために、日本一のきびだんごを作ってくれました。桃太郎はそのきびだんごを持って出発しました。
道中、桃太郎は犬、猿、キジに出会いました。きびだんごを分け与えると、三匹は桃太郎の家来になりました。
一行は鬼ヶ島に着き、鬼たちと戦いました。桃太郎と仲間たちは勇敢に戦い、ついに鬼たちを倒しました。
鬼たちは降参し、村々から盗んだ宝物を返すことを約束しました。桃太郎は宝物を持ち帰り、めでたく村に帰還しました。
おしまい。
Japhalbet版 (Japhalbet Version)
mukashi mukashi, aru tokoro ni ojiisan to obaasan ga sunde imashita. ojiisan wa yama e shibakari ni, obaasan wa kawa e sentaku ni ikimashita.
obaasan ga kawa de sentaku wo shite iru to, ookii momo ga nagarete kimashita. obaasan wa yorokonde sono momo wo hiroiage, ie ni mochi kaerimashita.
ojiisan to obaasan ga momo wo kirou to suru to, naka kara genki na otoko no akachan ga tobi dashite kimashita. futari wa odorokimashita ga, totemo yorokonde, sono ko wo "momotaro" to nazukemashita.
momotaro wa sukusuku to sodachi, tuyoi wakamono ni narimashita. aru hi, momotaro wa onigashima no onitachi ga muramura wo arashite iru koto wo kiki, oni taiji ni iku koto wo ketsui shimashita.
obaasan wa momotaro no tame ni, nihon ichi no kibidango wo tukutte kuremashita. momotaro wa sono kibidango wo motte shuppatsu shimashita.
tochuu, momotaro wa inu, saru, kiji ni deaimashita. kibidango wo wakeateru to, sanbiki wa momotaro no kerai ni narimashita.
ikkou wa onigashima ni tuki, onitachi to tatakaimashita. momotaro to nakama tachi wa yuukan ni tatakai, tuini onitachi wo taoshimashita.
onitachi wa kosan shi, muramura kara nusunda takaramono wo kaesu koto wo yakusoku shimashita. momotaro wa takaramono wo mochi kaeri, medetaku mura ni kikan shimashita.
oshimai.
これは設定した文法に準拠していないため、書き直してもらいました。新しいバージョンはこちらです。
Japhalbet版 (Japhalbet Version)
mukashi mukashi, ojiisan to obaasan sunda aru tokoro. ojiisan ikita yama shibakari tame, obaasan ikita kawa sentaku tame.
obaasan shita sentaku kawa de, ookii momo nagareta. obaasan yorokonda to hiroiageta sono momo, obaasan mochikaerita ie.
ojiisan to obaasan yooto kitta momo, genki otoko akachan tobidashita naka kara. futari odoroita ga, futari yorokonda totemo, futari nazuketa sono ko "momotaro".
momotaro sodatta sukusuku, momotaro natta tuyoi wakamono. aru hi, momotaro kiita onitachi onigashima arashita muramura, momotaro ketsui shita iku oni taiji.
obaasan tukutta nihon ichi kibidango tame momotaro. momotaro motta sono kibidango to shuppatsu shita.
michi naka, momotaro deatta inu, saru, kiji. momotaro wakeataeta kibidango, sanbiki natta momotaro no kerai.
ikoo tuita onigashima, ikoo tatakatta onitachi. momotaro to nakama tatakatta yuukan, momotaro to nakama taoshita oni tuini.
onitachi kosan shita, onitachi yakusoku shita kaesu takaramono nusunda muramura kara. momotaro mochikaerita takaramono, momotaro kikan shita mura medetaku.
oshimai.
さらにわかりやすくするために、ひらがな表記にしてみました。
ひらがな版 (Hiragana Version)
むかしむかし、おじいさんとおばあさんすんだあるところ。おじいさんいきたやましばかりため、おばあさんいきたかわせんたくため。
おばあさんしたせんたくかわで、おおきいももながれた。おばあさんよろこんだとひろいあげたそのもも、おばあさんもちかえりたいえ。
おじいさんとおばあさんようときったもも、げんきおとこあかちゃんとびだしたなかから。ふたりおどろいたが、ふたりよろこんだとても、ふたりなづけたそのこ「ももたろう」。
ももたろうそだったすくすく、ももたろうなったつよいわかもの。あるひ、ももたろうきいたおにたちおにがしまあらしたむらむら、ももたろうけついしたいくおにたいじ。
おばあさんつくったにほんいちきびだんごためももたろう。ももたろうもったそのきびだんごとしゅっぱつした。
みちなか、ももたろうであったいぬ、さる、きじ。ももたろうわけあたえたきびだんご、さんびきなったももたろうのけらい。
いこうついたおにがしま、いこうたたかったおにたち。ももたろうとなかまたたかったゆうかん、ももたろうとなかまたおしたおについに。
おにたちこうさんした、おにたちやくそくしたかえすたからものぬすんだむらむらから。ももたろうもちかえりたたからもの、ももたろうきかんしたむらめでたく。
おしまい。
表記規則や語順・時制の仕様などはかなり現実的ではないかと思います。エルフ語やクリンゴン語などの人工言語はAIが実用的ではなかった時代から作っている人がいたわけですが、AIを使うことで自然言語分野でもより創造的な試みができそうです。