アップルは、9日(現地時間)にiPhone 16シリーズを発表しました。4機種まとめて、AppleのAIプラットフォーム Apple Intelligenceに対応したことが大きな特徴です。
Apple Intelligenceを日本で利用できるようになるのは25年まで待つ必要があります。一方で、AI対応のために処理能力を底上げした結果、今年は無印iPhoneが例年以上に完成度が高かった印象を受けました。
▲ iPhone 16(左)とiPhone 16 Plus(右)
▲ iPhone 16 Pro(左)とiPhone 16 Pro Max(右)
ここ数年のトレンドとして、無印とProでは、カメラ機能やディスプレイに差分があるだけでなく、チップセットの世代差で処理能力に違いがありました。また、iPhone 15シリーズでは新たに搭載されたアクションボタンが無印にはありませんでした。
これに対し、今年のiPhone 16は「A18」で、iPhone 16 Proに搭載される「A18 Pro」と名称こそ違いますが、Pro要素はディスプレイやUSB-Cのコントローラーに集約されているため、処理能力は無印 iPhone 15もProもほぼほぼ同じ。
だからこそ、シリーズ4モデルでApple Intelligenceも動作するという理屈です。
▲ プロセッサーのA18 Proは、Proモデルに必要なデバイスのコントローラーを追加しているイメージ。処理能力に関しては、無印もほぼ同じだ
新たに採用された「カメラコントロール」ボタンも4機種の共通項目。昨年のアクションボタンのように、無印とProの差別化要素にはなりませんでした。
これも、Apple Intelligenceで画像分析を行うためのボタンになるためでしょう(今後のアップデートで対応予定です)。
4機種まとめてApple Intelligenceに対応するため、共通要素が多くなってきたと言えるかもしれません。
▲ これまで空白地帯だったサイドキーの下に、カメラコントロールが追加された
無印モデルとProモデルの違いは基本的にカメラとディスプレイ、あとはUSB-Cの転送速度程度になっているため、これらが不要であれば無印モデルを選びやすくなっています。
すりガラスのようなさらっとした背面や、iPhone 15よりも色の彩度が上がってポップな印象になったことなども、無印の美点。
ハンズオンで短時間触っただけなので、今後、考えを改める可能性はあるものの、ここ数年はPro一択だった筆者ですが、今年はかなり無印にも引かれました。
▲ 個人的に魅力を感じたのが、ウルトラマリン、ティール、ピンクの3色。先代より色が強くなったが、上質な印象も維持している
その新要素であるカメラコントロールですが、アップルが得意とするハプティックフィードバックによる触覚の再現で実装しており、メカニカルにボタンが沈み込むいわゆるボタンではありません。
ただし、圧力を検知し、フィードバックの返し方を変えることで半押しにも対応。また、静電容量式のセンサーで左右のスワイプ操作も行えます。
▲ ボタンのようで実はセンサーなカメラコントール
▲ 左スワイプでズームアウト、右スワイプでズームインが可能
▲ 機能の切り替えにも対応している。フォトグラフスタイルなどを呼び出すことも可能だ
▲ ズームの代わりにカメラ切り替えを設定したところ
カメラコントロールの“ボタン再現度”は非常に高く、ハンズオン会場では改めてこれが機械式のボタンでないことを確認してしまったほど。
こうした点には、ホームボタンなどで培ってきたノウハウをいかんなく投入しています。ボタンというより感圧センサーに近い部品ですが、ほぼほぼ物理ボタン感覚で扱えるというわけです。
実際に使ってみると、やはりiPhoneを横位置にして写真を撮る際には、カメラコントールがあった方が手のポジションも自然に決まって、持ったときに手の中で安定します。
親指を大きく動かさなくてもよくなるため、ブレも少なくなりそう。ズーム操作も楽々でき、むしろなんで今までなかったんだと思えてきます。
ただし、半押しでのフォーカスロックはアップデートでの対応になるとのことで、現時点では完全なデジカメ風操作はできませんでした。
普段からデジカメを使っているため、半押しでフォーカスを合わせたあと、シャッターを押し込む動作に慣れていることもあり、この部分には違和感を覚えたのも事実。
先に挙げたApple Intelligence対応もそうですが、発売時点で完成形になっているわけではありません。
▲ 目の前のレストランを検索してそのまま予約をしたり、名前をAIに聞いたりといったことが可能になる。いわばAIの“目”を起動するためのボタンになる見込みだ
また、半押しのダブルクリックで、左右フリックでコントロールできる項目を変更できますが、実際にやってみると、これには少々苦戦しました。
普段やったことがない操作なので仕方がないところですが、左右にフリックして出てくるメニューをタッチした方が、簡単にコントロールする機能を切り替えられてしまいました。ボタンを軽く2回押すというのは初めての操作体験なので、ここには慣れが必要になりそうです。
便利になった反面、アクションボタンに次いで対角上にカメラコントロールがつき、側面の凹凸が増えてしまったことは否めません。デザインのスッキリ感は、徐々に失われているようです。
一方で、米国版の場合は左側面にSIMカードスロットがないため、そのぶんだけ側面はスッキリしています。細かい部分ですが、これはSIMカードスロットを搭載する国内版との違いと言えます。
▲ 昨年のアクションボタンに続き、また側面にボタンが増えた格好になる。ただし米国版は写真のようにSIMスロットがないぶん、シンプルにまとまっている
逆に考えると、完全eSIM化すれば、側面のボタン配置の自由度が高まることになります。今後、ボタンが増えていく傾向にあるとすれば、どこかのタイミングで日本版が完全eSIM化しても不思議ではありません。
国内でeSIMクイック転送の環境も整備されたため、iPad Proと同様、iPhone 16シリーズも完全eSIM化の方向に舵を切るかと予想していましたが、これに関しては見送られていました。この点については、今後に注目と言えそうです。