グラミー受賞の超大物プロデューサーがAI作曲サービスSuno活用を宣言。ティンバランドによるAIツール支持は反AIに動く音楽業界を揺らすか(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

主要音楽レーベルがAI作曲サービスのSunoとUdioを提訴したのが6月24日。それから4カ月が過ぎたタイミングで、Sunoがクリエイティブな方向からの反撃を仕掛けました。超大物プロデューサーが活用しているという事例です。


Sunoは、timbaland.suno.comに特設ページを作り、グラミー賞受賞歴のある超大物音楽プロデューサー、ティンバランド(Timbaland)の新曲「Love Again」と連動したプロモーションを10月23日にスタートしました。

YouTubeに公開されたビデオでは、ティンバランドがSunoのCovers機能を活用して、Sunoに取り込んだオリジナル新曲「Love Again」の音楽スタイルを自らのプロンプトで次々に変えてリミックスしていく様子を披露しています。

アレハンドロとの共作である「TIMBALAND x ALEJANDRO - LOVE AGAIN」に「modern, house-inspired, danceable electornic」といったプロンプトを入力。出来上がった音楽を聴いて笑っている様子が見えます。

 

Geminiがまとめた、このビデオ内での重要発言は次のとおり:

  • 彼は常に音楽に導かれており、多様な音楽性を持ち、ヒップホップだけでなく、あらゆるジャンルの音楽に携わってきた。

  • 彼はイノベーションを愛しており、Suno は30年間の音楽活動で培ってきたものをさらに進化させるツールだと考えている。

  • Suno は、音楽をこれまで聞いたことのないようなものに変えるツールであり、彼にとっての「スリラー」になる可能性を秘めている。

  • 彼は、Suno のカバー機能を使用して「Love Again」をリミックスし、さまざまなバージョンを作成した。

  • Suno は彼にとって Ableton(Live)以来のエキサイティングなツールであり、新しい音楽制作の方法を切り開くものだと感じている。

  • Suno を使用することで、スタジオに戻ることなく、AI を活用して音楽制作を進めることができる。

  • 彼は、Suno で作成したリミックスをさらに発展させ、Afrojack や Martin Garrix、Diplo などのプロデューサーに協力を仰ぐ可能性も示唆している。

  • Suno は彼に子供の頃のような純粋な創造性を取り戻させ、19歳の頃のように音楽に夢中になれると感じている。

  • 彼にとって Suno は、この段階の音楽キャリアにおけるミューズとなっている。

「全体的に、ティンバランドは Suno に非常に感銘を受けており、このツールが音楽制作に革命を起こす可能性があると信じていることが伺えます。彼は Suno を使って自身の音楽を新たな次元へと引き上げ、創造性をさらに開花させようとしています」とGeminiはまとめています。

Sunoサイト上で聴ける新曲は、まだストリーミングオーディオプラットフォームでは未公開。ボーカルやバッキングを分離したSunoのステム音源も公開する予定で、それらを使ったリミックスコンテストも実施。10万ドルの賞金が与えられます。

ティンバランドは9月4日のXへのポストで、Sunoで2021年の未完成楽曲を完成させていく様子を投稿しています。

なお、ティンバランドが所属するInterscope Recordsは、RIAAや主要音楽レーベルがSunoとUdioに対して起こした訴訟に名前は挙がっていませんが、ティンバランド自身はビヨンセ、ジャスティン・ティンバーレイク、リアーナなど、訴訟の原告となっているソニー・ミュージックなどメジャーレーベルのアーティストの音楽を手掛けています。

Sunoはこの「ミューズ」シリーズを続けていくようなので、今後もアーティストサイドによるエンドースメントが発表されそうです。SunoがAbleton Live以来の革新的なツールとしてミュージシャンに受け入れられるようになれば、訴訟の行方も変わっていくかもしれません。

追記:ティンバランドの「Love Again」のリミックスコンテストがスタートしました。

公開するのはStemとなっていましたが、実際にはボーカルとそれ以外に分かれたものではなく、Verse 1、Chorus 2といった曲のパートを切り出したものでした。これらの好きなトラックを選び、CoverやExtendで自分なりのプロンプトで改変していくわけです。

筆者は、Chors 2という36秒のStemを選び、スローバラードにしてみました

元曲がいいだけあって、なかなかいいリミックスが出来上がったと思います。

作った曲はPublicで公開モードにすると、自動的にコンテストの対象となります。締切は11月8日(太平洋時間)いっぱい。

賞金100万ドルの内訳は次のようになっています。上位2名は2万5000ドルと1万5000ドルで、2作品はティンバランドにより公式リミックスとしてリリースされます。Instagram ReelとTikTokで最もビューを稼いだものもそれぞれ3000ドルがゲットできます。

《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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