いずれ起きるかなと思っていた、米音楽業界団体からAI作曲サービスへの訴訟がついに来ました。
RIAA(全米レコード協会)が発表したもので、原告はSony Music Entertainment、UMG Recordings、Warner Recordsというレコード会社の大手3社を含む多数の音楽出版会社。
訴えられたのはSunoとUdioの2社。アーティスト名や楽曲名をプロンプトに入れ放題なSonautoなどは対象となっていません。
Sunoへの訴状をGoogle NotebookLMにまとめてもらうとこんな感じです。
この訴訟は、UMGレコーディングス、キャピタルレコーディングス、ソニーミュージックエンタテインメント、アトランティックレコーディングコーポレーション、およびその他の原告として挙げられているレコード会社によって提起されました。
原告は、Sunoとその生成AIサービスが原告の著作権で保護された音声録音の違法コピー、複製、使用を行ったと主張しています。
訴状では、SunoのAIモデルのトレーニングプロセスには、膨大な量の著作権で保護された音声録音を無断でコピーして取り込むことが含まれており、その結果、原告の作品の権利と潜在的な市場が侵害されたと主張しています。
原告は、Sunoがフェアユースの主張を否定し、差し止めによる救済、損害賠償、弁護士費用を求めています。
さて、ここではAIによる既存楽曲学習の是非については問わず、RIAAが学習に使われたという楽曲を特定した手法について学んでいきたいと思います。
SunoもUdioも、既存アーティストの名前や楽曲、歌詞といったものが入っていると生成をリジェクトします。知名度の低いアーティストや曲、日本語などの英語圏以外の場合には穴が結構あるようですが、自分が試した範囲ではかなり鉄壁な守りだったように思います。
RIAAがSunoとUdioに関して提示した「証拠」は次の楽曲。マライア・キャリー、ジャクソン5、テンプテーションズ、ジェリー・リー・ルイスなど有名アーティストのヒット曲です。
マライアのクリスマス曲やテンプテーションズ「マイ・ガール」が簡単にプロンプトで出せるとはなかなか思わないでしょう。
これらの曲の大半はSunoやUdioからはすでに削除されているのですが、残っているものがありました。
ジェリー・リー・ルイスの「Great Balls of Fire」。日本では「火の玉ロック」として知られています。筆者はミッシェル・ポルナレフのカバーが大好物です。
(▲公開されたままのSuno版「火の玉ロック」)
既存楽曲が学習されている証拠を見つけるためのプロンプトハックは以前からX上で流れていたのですが、それと同じ手法のようです。
これらのプロンプトを参考に、今日のAIライブハウスで、どういう音楽ができるのかを検証してみました。
このプロンプトを改変して作ったのが次の曲です。同じSun Studioでレコーディングしていたエルビス・プレスリーの名前に入れ替えてみました。
プレスリーだとリジェクトされますが、ElvisならOKでした。まあElvisだったらコステロもいますしね。
RIAAが公開したプロンプトハックは、
"M a r i a h C a r e y"のように、通常ではリジェクトされるアーティスト名の可読性を難しくし、しかしサービスには通るように工夫する
Mariah Carryのようにスペルを変えてサービスに通るようにする
Remarkable Vocal Rangeのように、本人をある程度特定できるような特徴を入れる
アーティスト名だけでなく、Sun Studioのように、そのアーティストが使ったレコーディングスタジオを入れることで絞り込む
といった、わりとオーソドックスな手法です。いったい何回試行錯誤したんだろう。その回数を知りたいです。その工夫があればどれだけの名曲が生み出せるか……。
クリスマスソングの歌詞をSunoに作らせて、ほぼ同じプロンプトを使ったところ、なかなか良いクリスマスソングができてしまいました。
これが聴かれることでマライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」の再生数が減少することはないと思うのですが。