かつて黒歴史として封印していた曲がカセットテープに残っていたのをAI作曲サービスUdioによって完成させたというお話です。
ジョン・レノンがホームレコーディングした曲を、AIによるジョンのボーカル分離によりビートルズとして完成させた「Now And Then」。AIは、未完成だった楽曲を聴けるレベルまで持っていくことを可能にする技術となりました。
そして、AI作曲サービスは、既存のオーディオデータから楽曲を作り出す技術を提供し始めました。
特にUdioの新機能であるAudio uploadsは、完成された曲ではなくて、曲の断片でもよくて、その続きをかなりいい感じで作ってくれます。しかも後方だけでなく、前方にも拡張できるのです。
これを使えば、自作曲の断片をもとに完成曲ができるのではないか。
「でもオリジナルとか作ってないしなあ」そう考えていた筆者は思い出しました。かつて黒歴史として封印していた曲がカセットテープに残っていたことを。
半世紀近く前、まだDTMという言葉が誕生するより前の時代に、シンセサイザーをコントロールするためにはローランドのMC-8、MC-4といったコンピュータを内蔵したデジタルシーケンサーが存在していました。
非常に高価なこれらのシーケンサーは、YMOなどに使われていましたが、同じような機能をもっと安く手に入れる方法がありました。当時の8bitパソコン(マイコンと呼んでいた)を接続してシンセサイザーをコントロールし、さらにドラム、ベース、ピアノ音源を内蔵したAmdek CMU-800という製品がそれです。
(▲CMU-800をMIDI改造したもの)
筆者はこのCMU-800を、42年前に購入。シャープのMZ-80K2Eという8bit機を接続してシーケンサーとして使っていました。その頃に録音していたカセットテープ音源を数年前に発掘し、デジタル化していました。
(▲MZ-80K2E)
そのトラックの先頭に入っていたのが問題の「黒歴史オリジナル曲」。
このコード進行とかリズムとか、当時の新譜であったとある曲にインスパイアされたのですが(思い出すと頭をかかえる)、その後のメロディーや構成がまったくできないまま放置していたのです。いや、放置というより40年忘れておりました。
Udioはどんなオーディオクリップでもそこから続きを作ってくれるので、この曲の断片もなんとか完成させてくれるのでは、とやってみたというのが今回の趣旨です。
結果、1980年代初期ブラックコンテンポラリーとかAORとかな感じの曲になりました。最初の10秒が42年前の黒歴史オリジナル。そこからフェードインしてくるのがUdioによる「完成版」です。コード進行やシンセが入っているところは少し残っていますが、歌詞もメロディーも、Udioが勝手に考えたものです。
やり方はこうです。UdioのAudio uploads(画面右上のアップロードボタン)に、黒歴史オーディオクリップをアップロードし、適当なプロンプトを入れます。
区切りの良いところを領域指定して、そこからExtendします。しかしふわっとした感じの曲しか生まれず、意図したサウンドは出ません。
リズムがはっきりしないからではないかと判断し、Logic Pro 11でリズムをつけることに。スマートテンポ機能でBPMを判別し、それを元にトラック全体のBMPを自動調整。それからSession PlayersのDrumsによって適当なリズムパターンを入れます。
こうして出来上がったオーディオクリップを再びUdioに読み込ませると、今度はうまい感じに生成できました。
パーカッションで始まる部分は、オリジナルオーディオを置き換えるよう前方向に伸ばしたら良いイントロになりました。さらにもう一度伸ばして、アウトロをつけて完了です。
これで、42年前のモヤモヤした感じがうまく燃焼した(してもらった)、いや、供養してもらった感じがします。
みなさんも黒歴史として残っていたオーディオや歌や詩の断片などをUdio(いずれSunoも)に食わせて、完成させてはいかがでしょうか。