「Meta Quest Pro」実機を初体験。Adobe MAX 2022会場で見えた次世代ARの姿(西田宗千佳)

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西田宗千佳

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フリーライター/ジャーナリスト

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1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。

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10月18日(米国太平洋時間、日本は19日)から、Adobeの年次イベント「Adobe MAX 2022」が開催されている。3年ぶりのリアル+オンライン開催となったが、現在筆者は現地で取材中だ。

▲Adobe MAXは米・ロサンゼルスコンベンションセンターで開催中

現地でさまざまな企業展示が行われる「コミュニティパビリオン」の中にはMetaも出展しており、先日発表したばかりの「Meta Quest Pro」の体験ブースも用意していた。

Meta Quest Proは22万6800円から。薄型・高性能化、視線・表情トラッキング対応の高級VRヘッドセット


Meta Quest Proのこと、担当バイスプレジデントにもうちょっと詳しく聞いてみた(西田宗千佳)

▲Metaを含む多数の企業がブースを展開するコミュニティパビリオン」

▲この中にMetaもQuest Pro体験ブースを構えていた

▲ブースに置かれていた「Meta Quest Pro」。おそらくは実働実機ではなくモックアップ

今回Adobeは、同社の3Dツール群「Substance 3D」の中でも、3D モデリングツールにあたる「Adobe Substance 3D Modeler」の正式版を発表している。

Substance 3D ModelerはWindows上で動作するアプリケーションだが、Meta Quest 2などのVRヘッドセットをPCにつなぐことで、連携して「VRの中でモデリングができる」機能がある。

▲Adobe MAX基調講演で正式版が発表された「Adobe Substance 3D Modeler」

▲Substance 3D ModelerはWindows上で動作するが、Quest 2やQuest Proと接続し、「VR内でのモデリング」も可能

今回Metaは、Adobe Substance 3D Modelerを含む4つのアプリを用意し、Adobe MAX来場者がMeta Quest Proを体験できるようにしていた。

▲今回準備されていた4つのアプリケーション。でも1度に体験できるのは1つだけ

というわけで筆者も早速行列に並び、Adobe Substance 3D ModelerをMeta Quest Proで使ってみつつ、Quest Proの特徴であるカラー・シースルーARもちょっとだけ体験してきた。

快適な付け心地、メガネにも優しく開放的

まず実機外観からチェックだ。

スペックは別記事をご参照いただきたいが、Quest 2とは違い、重量が後ろにも配分され、かなりバランスがいい構造に変わっている。

▲Meta Quest Proを前から。額の前、ヘッドレスト部分が大きくなっている

額の部分のパッドが大きくなり、ここでHMDを押さえるような感じになっていて、目から下は結構レンズまでの「空間」がある。そのため、メガネをつけたままでもサッとつけられたし、Quest 2と違って「前が妙に重い」感じでもなくなっている。目から下についてもけっこうな隙間があって、下が普通に見える。

▲ちょっと後ろ側から。目にあたる部分の横のパッドが大きく、わりとしっかり「目の前の空間に空きがある」のがわかる

すなわち「閉鎖的」でないので光が入ってきて、没入感が削がれるのでは……という気がするかもしれない。確かにそうなのだ。だが、顔にあたる部分がかなり少なくなっているので、非常に負担が少なくて「つけやすい」という、プラスの印象の方が大きい。

この辺はおそらく、没入重視のVRゲーム向けか、道具としてちょこちょことつけ外しを繰り返す前提か、という違いかと思う。

体験して感じた装着の快適さ

では実際に体験しての感想をお伝えしていこう。

体験時間は十数分と短いので、各部の写真やスクリーンショットがあるわけではないが、その点はご容赦を。

前述のように、Quest Pro自体は「非常につけやすい」と感じた。Quest 2やHoloLensよりはPlayStation VRやPICO 4に近い、というと、わかる人はわかるかもしれない。

▲実際につけて操作中はこんな感じ。Quest 2に比べると「前が重そう」な印象はない

その上で、顔にあたる部分が小さく、さらには空気が下に逃げていくので、「暑い」ということもない。

コントローラーはQuest 2向けよりかなり小さくなっていて、手に持った感じも「短い棒」のような印象。とはいえ、トリガーやボタンなどの配置は基本的にQuest 2向けに近いので、違和感は覚えない。

反応が非常にキビキビしていて「精度が高い」ように思えたが、その辺、本当に大きく違いがあるのか、結論は保留としておきたい。

前述のように4つのデモが用意されていたのだが、体験できるのはそのうち1つのみ。ここはAdobeのイベントである、ということもあるので、「Adobe Substance 3D Modeler」を体験してみた。

▲「Adobe Substance 3D Modeler」を筆者も体験

前述のようにAdobe Substance 3D Modelerは、PCで動かしてQuest Proをケーブル接続して表示する形式なので、表示されているものの量や質でQuest Proの性能を測ることはできない。

ただ、Adobe Substance 3D Modelerでモデリングしてみて思ったのは、Quest Proの表示が「スペック以上に解像感がある」ことだ。画素密度が高く、文字の鮮明さがかなり良好。発色も良い。Quest 2とQuest Proは、表示デバイスの解像度こそ同じなのだが、やはり光学系の設計がかなり異なるので、目に光が入った時の見やすさの方向性も違っていると考えるべきだろう。

ちなみに、Adobe Substance 3D Modelerは、Oculus(現Meta)が開発していたモデリングツール「Medium」を元に作られている。それが巡り巡ってAdobeに売られ、今回Meta Questと連携するのは、ちょっと不思議な感覚がある。

「視界が全部ARになる」新鮮な驚き

PCに接続してのデモなので、当然、Quest Proの持っている本来の機能はほとんど体験できていない。

ただ、途中でデモが止まったり、安全に操作できる「セーフエリア」から自分が外れた時などもあり、そこで、Quest Proの「カラーシースルーAR」の感じも体感できた。

参考のために「Meta Connect 2022」でのデモ映像を提示しておく。イメージはまさにこんな感じだ。思った以上に自然で、周囲が普通に見える。

▲Meta Connect 2022で開発が示唆された会議ツールのイメージ映像。「周囲とCGが重なる」様子は、当たらずとも遠からず

立体感もあったが、映像に歪みなどが全くないかというと、そうでもなかったように思う。(短時間の体験なので判然としないが)ある距離のある範囲については、不自然な部分もあった。また、さすがに現実に比べると解像度は低い。

一方で、下を見ると隙間から真下が見えるわけだが、そこと「カラーシースルーAR」の部分のつながりが、そんなに不自然ではなかったのが面白い。

HMDを使ったAR体験は、これまで多くのものが「半透明のディスプレイを使い、実景にCGを重ねる」形がほとんどだった。HoloLensやMagic Leap、Nrealもそうだ。

これらの形式の場合、最大の課題は「ディスプレイとしての視野が狭く、自分が見ている風景の一部だけがARになる」ということだった。要は「ARの世界を覗き見る」感じの不自然さがあったわけだ。

だがQuest ProのカラーシースルーARは「視野全体がARになる」のに近い。Quest 2に近い広い視野が映像になり、さらにそこがすべて実景+ARになるから、ずっと自然に「実景の中にCGが重なる」感じになる。

その価値がアプリなどでどれだけ出るのかは、ちゃんと長く実機を使ってみなければわからない部分だ。

というわけで、その辺はまた、実機が手に入ってから検証していくこととして、「偶然の初体験」については、この辺でご勘弁を。


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《西田宗千佳》
西田宗千佳

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