楽天モバイルの0円廃止でMVNOが活性化。無料ユーザーはどこへ乗り換えたのか(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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調査会社のMM総研は、15日に「国内MVNO市場調査」を発表しました。ここでは、22年9月末時点におけるMVNOのシェアが明かされています。

同社が定義する「独自サービス型SIM」の市場規模は、9月末時点で1284万8000契約に達し、全契約者に占めるシェアは6.3%になりました。21年は市場規模の縮小に見舞われていたMVNOですが、一転して成長を記録しています。

▲MM総研が発表した独自サービス型SIMの市場規模。22年には、再び増加傾向に転じていることがわかる

その大きな要因は、同社の調査でも挙げられているとおり、楽天モバイルの「UN-LIMIT VII」です。

周知のとおり、楽天モバイルは7月に導入したUN-LIMIT VIIで、UN-LIMIT VIの売りであった1GB以下0円を廃止。三木谷浩史会長の「ぶっちゃけ困る」という煽り……もとい発言も相まって、0円ユーザーが一気に離脱しました。流出は発表直後から始まり、楽天モバイルの契約者数は純減を記録しています。

▲新料金プランの導入が引き金になり、5月以降、楽天モバイルからの流出が加速した。画像は8月の決算説明会

料金プランの移行措置があり、8月末までは1GB以下0円が事実上維持されていたため、UN-LIMIT VII開始後も、ズルズルとユーザーの流出は続いていました。9月、10月は移行措置がポイントバックに代わり、11月からは、全ユーザーが最低1078円を支払う形になっています。

11月に開催された決算説明会では、発表前と同程度の純増基調に転じたとのコメントも出ており、流出はひと段落した格好です。

▲楽天モバイルは、移行措置の終了で11月から純増に転じているとしている

その受け皿になったのが、低料金を売りにするMVNOです。実際、4月から9月までの伸びは、MM総研の調査を見ても大きくなっていることがわかります。

21年10月から22年3月までの純増数が19万9000だったのに対し、楽天モバイルの0円廃止後と期間が重なる22年4月から9月までの純増数は25万4000と、伸び率が加速しています。特にその恩恵が大きかったと見られるのが、上位のMVNOです。

例えば、トップシェアのIIJmioは伸びが大きくなっています。22年3月末のシェアは18.8%でしたが、22年9月末には20.2%まで拡大。二番手に付けているNTTレゾナントのOCN モバイル ONEも、14.1%から14.5%へとシェアを伸ばしています。

一方で、mineoを運営するオプテージはシェア9.5%と横ばい。MVNO全体のパイが拡大しているため、横ばいでもユーザーは増えている格好ですが、上位のMVNOほど影響が大きいことがわかります。

▲MM総研が発表したMVNOの事業者別シェア。IIJmioが、特にシェアを大きく拡大している

事実、IIJの勝栄二郎社長は11月7日開催の決算説明会で、「一番大きい要素は楽天モバイルの0円プラン終了」と語っています。

IIJではマーケティング施策として端末ラインナップを強化しつつ、割引も積極的に提供。21年4月に導入したギガプランのお得さも相まって、楽天モバイルから流出するユーザーの受け皿になっています。

▲楽天モバイルの新料金が最大の要因と語ったIIJの勝社長

ギガプランは、最安の2GBプランが850円。楽天モバイルのUN-LIMIT VIIを最安で維持したとしても1078円かかるため、毎月228円浮く計算です。

しかもネットワークはドコモかauから選択可能。楽天モバイルも人口カバー率は98%を超えてはいるものの、限りなく100%に近い2社と比べると、まだまだ穴も多く残されています。より安く、つながるキャリアを求めた結果、多くのユーザーが行きついたと見ていいでしょう。

シェア2位につけているOCN モバイル ONEも、21年10月にドコモのエコノミーMVNOになり、取り扱い店舗を一気に拡大しました。

エコノミーMVNO入りにあたって、500MBで550円の料金プランを開始したこともユーザー数の増加に寄与しているようです。

mineoは速度を抑えてデータ容量を無制限にした「マイそく」が好評。楽天モバイルからの流出だけでなく、MVNO側の工夫があってこそのユーザー増ということは付け加えておきます。

▲OCN モバイル ONEは、ドコモのエコノミーMVNO入りと同時に500MBで550円の新料金を追加。女優の石原さとみを起用したテレビCMも大々的に展開している

MM総研の発表したデータでは、楽天モバイルからの流出数が100万超と推計されていました。これに対し、MVNO側の増加数は先に挙げたとおり、25万強で数字が合いません。

ユーザー側にはMNPだけでなく純解約という選択肢があるうえに、MVNO以外を契約することも可能だからです。中でもpovo2.0やLINEMOといった低価格のオンライン専用プランは、楽天モバイルを解約するユーザーの受け皿になりました。

▲マルチブランドID数が拡大しているKDDI。牽引役はUQ mobileだが、povoも楽天モバイルの受け皿になり、150万契約を突破したという

特にpovo2.0は、トッピングをつけなければ料金は一切かかりません。1GB以下0円を売りにしていた楽天モバイルの受け皿としては、うってつけと言えるでしょう。KDDIは、一時、申し込み数が2.5倍に急増したと話していましたが、その影響は大きかったことがうかがえます。

KDDIの高橋誠社長は、11月2日の決算説明会でpovo1.0と2.0を合わせて150万契約を超えたとしながら、「楽天モバイルのユーザーがpovoに来られるケースが多い」と語っていました。

棚ぼた的に草刈り場ができ、獲得合戦が激化したMVNOとオンライン専用プランですが、その草は、すでに刈り取られつくしてしまいました。先に述べたように、10月末で楽天モバイルの移行措置が終わったからです。

流動性が下がればユーザーの獲得数が落ち着いてしまうことも考えられます。22年並みの成長を維持するためには、次の一手を繰り出す必要がありそうです。


《石野純也》
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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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