eSIM転送機能はAndroidにも広がるか。Galaxy S23シリーズで対応を確認(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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米カリフォルニア州サンフランシスコで、サムスン電子が「Galaxy S23/S23+」と「Galaxy S23 Ultra」を発表しました。

前者はマイナーチェンジ感がただよう一方で、後者はNoteの系譜にあたる端末としてカメラ機能を大幅に強化。2億画素センサーを搭載するなど、なかなかにパンチ力の強い端末となりました。現地で取材していた筆者もカメラを試してみましたが、その暗所での描写力には驚かされました。

▲サンフランシスコで発表されたGalaxy S23シリーズ。左からS23、S23+、S23 Ultra

それはさておき、実機を触っていたところ、プレスリリースなどで完全スルーされていた機能も発見しました。eSIMおじさん必見の「eSIM転送」機能がそれです。

これはeSIMを旧端末から新端末に移行するための仕組み。iPhone 14シリーズの発売に伴い、iOS 16に「eSIMクイック転送」が導入されましたが、一言でまとめるとそれに近い機能です。

▲「eSIMを追加」を選択すると、「他のデバイスからSIMを転送」という項目が見つかった

設定は、SIMカードの項目に用意されていました。eSIMにまつわる機能は2つあり、1つが現在利用中のSIMカードをeSIM化する機能。もう1つが、過去に使っていた別の端末からeSIMのプロファイルを転送してくる機能です。

いずれも、Android 13にアップデートした現行のGalaxyにはなかった機能のため、Galaxy S23シリーズに採用されている「One UI 5.1」(現行バージョンは5.0)に実装されていた可能性があります。

▲展示機にはT-MobileのSIMカードが差してあったが、これをeSIM化できる機能があった

途中まで試してみたところ、「T-Mobile」というキャリア名が現れました。おそらくこれは、T-Mobileがこの機能に対応しているということ。設定は国ごとに用意されており、ドイツやスウェーデンを選択できました。

残念ながら日本という項目はありませんでしたが、Galaxyの場合、日本版はキャリアカスタムが入るのが一般的。型番的にも別の製品として展開されるため、発売までに対応が期待できるかもしれません。

▲他のデバイスから転送という項目を選ぶと、T-Mobileが表示された
▲米国以外ではドイツやスウェーデンを選択できた。ドイツはドイツテレコム、スウェーデンはTeliaが選択可能

ちなみに、eSIM転送といっても、端末から端末にダイレクトにeSIMのプロファイルを移せるわけではありません。同様にSIMカードのeSIM化も、情報をSIMカードから吸い出し、eSIMに書き込むわけではないと思われます。

なぜならeSIMプロファイルのインストールには、端末内に埋め込まれているチップのID(EID)などの情報が必要だからです。EIDの異なる端末に同じプロファイルを書き込めてしまうのは、コピーし放題と同義。セキュリティ的には許容されません。

Galaxy S23シリーズも、上記のように移行可能なキャリアが限定されています。これは、すでに機能を搭載しているiPhoneも同じ。eSIMクイック転送が利用可能なキャリアは、日本だと現状、KDDI(au、UQ mobile、povo)と楽天モバイルに限定されています。キャリア側が端末の仕様に合わせてシステムを作り込むことで、初めて実現できる機能というわけです。

▲iPhoneのeSIMクイック転送。Bluetooth接続やiCloudでの同期を求められるが、実際に直接eSIMプロファイルを転送しているわけではなく、あくまでセキュリティのための接続になる

つまり端末から端末への直接の転送ではなく、UI上であたかも転送しているかのように見せつつ、新しい端末にeSIMプロファイルをインストールしていると言った方が正確です。

本来であればキャリアの管理ページにアクセスして、eSIMの発行や再発行のプロセスを踏まなければならないところを、端末側のUI上で簡易的に実現していると言えるでしょう。

そんなわけでいよいよAndroidにも広がりそうなeSIM転送ですが、Galaxyシリーズだけの対応にとどまってしまうと、利便性は限定的になります。

ただ海外では、Android 13のベータ版に同様の機能が実装されていたとの報告もあり、Galaxy以外のスマートフォンにも広がっていく可能性は高いと言えるでしょう。先行的に製品版の端末に実装したのがGalaxyだったと見るのが正しいのかもしれません。

▲海外では、Android 13のベータ版から、eSIM転送機能が発見されたとの報告が上がっている

eSIMは店舗に行かずに発行ができ、時間や場所の制約がなく契約が可能なため、ahamoやpovo、LINEMOといったオンライン専用プラン/ブランドや、楽天モバイルのような新興キャリアとの相性は抜群です。事実、こうしたキャリアは、既存ブランドよりも積極的にeSIMを推進しているように見えます。

一方で、機種変更時の手続きが比較的煩雑なのがネックになっていました。my ●●● といったキャリアの管理ページから手続きすることはできますが、キャリアごとに手順が異なっているうえに、セキュリティを担保するために認証方法が複雑になっていることもあります。

回線認証が必要にも関わらず、先に機種変前の端末からeSIMプロファイルを消去してしまい、詰んでしまったという話も“eSIMあるある”です。

▲キャリアごとのmy ●●● から再発行手続きが必要。画像の楽天モバイルは比較的簡単でユーザビリティが高い点は評価できるが、キャリアごとに手順や認証方法がバラバラで手間がかかる

端末側の操作だけで、簡単にeSIMの発行や移行ができるようになれば、より広い層にeSIMが普及する可能性も見えてきます。ただし、対応キャリアが限られている点は、今後の課題と言えるでしょう。

iOSのeSIMクイック転送に関しても、ドコモやソフトバンクはサブブランドも含めて未対応。端末メーカーとキャリアの連携が必要になるため、iPhoneの正式販売ができていないMVNOもこの機能を利用できません。

また、プラットフォーム間の移行をどうサポートするかも、現時点では未解決です。iPhoneとAndroidの間でeSIMを簡単に移せないとなると、囲い込みの道具にもなりかねません。

こうした課題はありつつも、eSIMの発行や移行が以前より簡単になるのは事実。Galaxy S23シリーズが日本で発売されたあかつきには、複数キャリアが対応することを期待しています。


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《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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