1GB以下0円の「UN-LIMIT VI」廃止で契約者が大量流出していた楽天モバイルですが、22年12月に、ようやく純増へ転じたようです。楽天グループが2月14日に開催した決算説明会で、その詳細が明らかになりました。契約回線数は11月の444万6000回線を底に、12月は448万5000回線に回復。直近の23年1月には、451万8000回線に増えています。急成長しているように見えるグラフはさておき、月間でおおむね3万から4万回線ほどプラスになっているようです。
このペースをもう少し加速できるようであれば、年内にはピーク時の約500万回線を取り戻せるかもしれません。戻るといっても、22年5月までの500万回線とは“質”が異なります。上記の資料で楽天モバイルが強調しているように、この回線数はいわゆる「課金ユーザー」だからです。0円ユーザーが大量に混じっていた22年とは異なり、現時点では100%が最低1078円の料金を払うユーザー。楽天モバイルにとっては、収益源とも言うことができます。
楽天モバイルによると、23年1月の課金ユーザーは前年同期比で294%増になっているとのこと。逆算すると、22年1月時点では、約114万7000回線ほどしか同社にお金を払っているユーザーがいなかった事実が浮かび上がります。楽天グループの決算補足資料を見ると、MNOの回線数は22年1月で450万。無料キャンペーンの対象者や1GB以下0円になっていたユーザーが、3/4ほどいたことになります。
この数字を見ると、さすがに1GB以下0円のUN-LIMIT VIを廃止したのもやむなしと言えるのではないでしょうか。UN-LIMIT VII導入時に、こうした経営状況をもっと丁寧に説明していれば、ユーザーからの反発は少なくなっていたかもしれません。楽天グループの三木谷浩史社長が「0円で使われてもぶっちゃけ困る」と発言した背景も、もっとすっきり納得できたかもしれません。
ようやく純増基調に入った楽天モバイルですが、月3~4万の純増では、いつまで経っても目標とするNO.1にはなれません。ここからはその勢い加速させる必要があると言えるでしょう。
その一環として、楽天モバイルは決算発表の翌日にあたる2月15日から紹介キャンペーンを開始。既存のユーザーが家族や友人に楽天モバイルを紹介し、契約が成立すると7000ポイントの楽天ポイントがプレゼントされます。紹介された側にも3000ポイント入るのが、新規契約のインセンティブです。1人最大7万ポイントまでもらうことができます。
また、三木谷氏は1月に開始した法人サービスにも期待をのぞかせています。「楽天は、(モバイル以外の事業で)40万を上回る法人とビジネスをしている」(同)こともあり、見込み顧客が多いのが特徴。「初年度は最低でも100万回線ぐらいの契約を行いたい」(同)と、回線数の大幅な上乗せをもくろんでいるようです。
これらに加えて、オンラインの強みを生かしていくための施策も導入するようです。三木谷氏によると、現状、楽天モバイルの新規契約者は70%程度がオンラインからとのこと。今後も、「どちらかと言えば、オンラインを重視していく」(同)方針で、より簡易的に契約できる仕組みも後日発表するそうです。どのような施策なのかは不明ですが、eSIMを活用し、「ワンクリックで加入からアクティベーションまでができる」(同)のが特徴だと言います。
オンライン重視の流れは、ショップの“仮想化”とも評することができるかもしれません。楽天モバイルはネットワークを完全仮想化技術で構築していますが、その範囲をより広げていくと見ることもできるでしょう。先に挙げたマーケティングキャンペーンも、テレビCMなどからオンラインへと軸足を移していく流れの1つで、無理やりこじつければ(対面ではないという意味において)仮想化と言えなくもありません。楽天グループの祖業がショッピングモールの仮想化であるイーコマースであることを踏まえると、これらの取り組みはある意味自然に見えます。
現時点で7割がオンライン経由というのも十分大きな数字ですが、その割合をさらに増やしていくとなれば、他キャリアのように、あちこちに店舗を構えておく必要性がさらに薄くなります。黒字化に向け、コスト削減も急務なことから、リアルな店舗の数は減っていく可能性があります。
三木谷氏も店舗については「是々非々で考えていく」と述べ、「黒字のところは残すし、赤字のところはクローズする」と語っています。他社は、別ラインでオンライン専用のサービスを展開していますが、実質的に楽天モバイルも、こうしたブランドと同列になりつつあると言えそうです。一連の取り組みを通じて、現状、月3、4万の純増数がどこまで増えるのかに注目しておきたいところです。