楽天モバイルの国際ローミングが2GBまで無料で快適だった件。ただし注意点も(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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毎年2月から3月にかけて開催される、“モバイルの祭典”ともいえるMWC Barcelonaがスタートしました。同イベントはコロナ禍での中止を経て、2021年は時期をずらして規模も大幅に縮小。22年は3年ぶりの復活を遂げた一方で、渡航制限の厳しかった主にアジアからの来場者はまばらでした。今年は、ドコモや楽天シンフォニーなど、日本からの出展も多く、かつてのMWCの勢いが戻ってきた格好です。

▲MWCを取材するため、バルセロナに。写真は北極上空。ロシア上空を飛べないため、北か南に大回りする航路を取っている

筆者も、昨年に続いて現地で参加するため、はるばるバルセロナまで来ています。

今回、iPhoneで使ったのが楽天モバイルのローミングサービス。乗り継ぎで、スイスを経由したからです。バルセロナで使うSIMカードやeSIMは事前に調達していたのですが、いずれもスペインもしくはEU限定で、EU非加盟国のスイスでは利用ができませんでした。とは言え、乗り継ぎのためだけにローミング料を払うのは……そんなときに、楽天モバイルでローミングすればいいことを思い出しました。

▲国際ローミングで便利なのが楽天モバイル。スイス、スペインの両国で活躍している

楽天モバイルは、フランス大手キャリアのOrangeと提携し、サービス開始当初からローミングサービスを提供しています。SIMカード内に2つの識別番号(IMSI)を持つことで、海外ではOrangeとしてふるまう仕組みです。現地キャリアと直接接続している他キャリアとは異なりますが、国際ローミングにまで手を回しづらい新興キャリアらしい取り組みと言えるでしょう。

▲楽天モバイルの国際ローミングの仕組み。ここでの協定事業者とは、フランスのOrangeを指す。なお、一部の国ではすでに独自のローミングに切り替えているという。画像は総務省の有識者会議に同社が提出した資料

それ以上に評価したいのは、料金体系です。2GBまでとデータ容量には比較的厳しい制約がありますが、料金は無料。2GBの範囲であれば、データ通信のお金は一切かからず、日本にいるときと同じように使うことができます。楽天モバイルで無料と聞くと、UN-LIMIT VI廃止のトラウマが頭をよぎり不安な気持ちになりますが、今のところ、この料金体系自体は本格参入以来、変わっていません。国際ローミングは「ぶっちゃけ無料で使われても困る」わけではないようです。

▲無料の国際ローミング、私の好きな言葉です

ただ、注意したいのは2GBを超えたとき。この場合、高速通信ができなくなり、解除するには1GBあたり500円の料金が必要になります。日本にいるときと同じような感覚で5GBなり10GBなりを使ってしまうと、料金は数千円に。20GBで1万円というのは、ややお高いローミング料と言えます。競合では、ドコモのahamoが20GBまで国際ローミングが無料のため、ここにはぜひとも追随してほしいところ。料金の安さを強く訴求しているキャリアなだけに、今後の対応には期待しています。

▲2GBを超えて使おうと思うと、1GBあたり500円のデータチャージが必要になる

また、無料といっても、データ容量は国内分と合算になる点にも注意が必要。UN-LIMIT VIIは段階制を取っているため、うまい具合に使わないと、結局料金が上がってしまうおそれもあります。特に、毎月3GB以下に抑えて料金を1078円に節約しているユーザーは、特に気をつけた方がいいでしょう。国内で1GBを超えていた場合、国際ローミングで2GBぶんの通信をすると、合計で3GBを超え、料金が次のステップに上がって2178円になってしまいます。これだと、無料なのか1100円余分に払っているのか、よく分からないことに。ローミングぶんが別建てではないのはトラップと言えるかもしれません。

逆に、元々、バリバリ楽天モバイルを使っている人にとっては、本当に無料と言えます。20GBを超えて無制限になっていれば、海外で2GB使おうが何をしようが、これ以上、料金は上がらないからです。ただ、ヘビーユーザーの場合、国際ローミングが2GBで足りるのかという話もあり、上記のような料金の問題に直面します。なかなかお金を払ってくれないユーザーばかりが増えて苦しんだ楽天モバイルですが、その反面、国際ローミングはきちんと計算された設計になっているようにも思えます。

▲国内での通信とデータ利用量が合算される

料金面もさることながら、通信品質も非常に良好です。バルセロナでは、アンテナピクトに「5G」の2文字を目にする機会も多く、実際、データの読み込みがサクサクです。試しに、5G接続になっていたホテルや、闘牛場跡地をショッピングモールにした「ラス・アレナス」にあるレストランでスピードテストしてみたところ、前者は400Mbpsに迫る勢い。後者も300Mbps弱の速度が出ていました。ホテルやレストランでこれだけの速度が出れば、もはやWi-Fiは必要ありません。2GBまでですが。

▲ホテルも観光地も爆速。これにはちょっと驚いた

ただ、楽天モバイルのサイトを見ると、スペインでは4Gまでしかローミングサービスを提供していないようです。なぜ5Gに接続できるのかは謎に包まれていますが、昨年8月に渡米した際にも同様のことがありました。米国は、現在5Gローミングを提供済みですが、当時はまだ未対応の状態。しかしながら、アンテナピクトは5Gになっており、十分な速度が出ていました。

▲スペインでは、5Gローミング非対応というのが公式見解

NSA(ノンスタンドアローン)の5Gは、アンカーバンドと呼ばれる4Gに接続したあと、5Gの電波を後から追加します。このアンカーバンド接続時に、周囲に5Gがない場合でも、アンテナピクトは一瞬だけ5Gになり、通信が始まると4Gに戻ります。5Gエリアの狭い場所ではありがちな挙動で、日本でもアンテナピクトの表記が一瞬で変わる挙動を見たことがある人は多いでしょう。

楽天モバイルの広報によると、スペインでは5Gローミングは未提供のため、このアンカーバンドだけをつかんだだけの状態ではないかとのことでした。一方で、4Gのキャリアアグリゲーションだけで上記のような速度がバンバン出るのはなかなか考えづらいのが正直なところ。iPhoneのフィールドテストモードを見ても、5Gのn78をつかんでいることが分かりました。これ、本当にサービスインしてないのでしょうか……?

▲フィールドテストモードでは、しっかりn78の5Gをつかんでいた

米国で5Gをつかんだときも同様の説明を受けましたが、イマイチ釈然としません。パートナーがいつの間にか5Gローミングに対応し、情報が下りてきていないのか、本当は5Gの電波をつかんでいなのかは定かではありませんが、いずれにしても、十分なスピードが出ているのは事実です。これで無料なら言うことなし。正直なところ、4Gの帯域幅が20MHz幅しかなく、5Gのエリアも狭い国内での通信よりも快適でした。

2GB制限があるのは難点ですが、楽天モバイルは海外渡航の多い人にオススメできるキャリアの1つと言えます。


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《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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